狂乱の宴会
更新遅くなってすいません。
前回のあらすじとしてはスタンピードを抑えたシュンたちは街の人たちに感謝される。ついでに街の女装漢に目をつけられたシュンは己の貞操の危機を感じていた。
シュンが化け物に抱きつかれ虚しい叫びが響いたあと、ガストンが場をまとめて、今は本当の感謝の気持ちとわずかな謝罪も込められて最高級旅館でもてなされていた。
仲居の人たちは美人だし、接客はもう俺たちが街を救ったということでめっちゃ丁寧にされてとても幸せである。
そう、部屋の外から聞こえる声さえなければ。
あの化け物の一番の旅館どうこうの話は本当であったらしい。
この旅館に案内されて再び出会った時は失神するかと思ったが、どうにか仲居さんたちが取り押さえてくれてこの部屋へと案内され今に至る。
今も外から化け物たちの抗議の声が聞こえてくるが仲居さんの他、どうやら街の人たちもやめておくように言ってくれているらしい。
俺もクリスもシオリも外の声には少しビクビクしつつも部屋でゆっくりさせてもらっている。
部屋は基本は日本の旅館と変わらないと思う。
そんなに旅行に行くわけではなかったので旅館をあまり知らないがこんな感じであった。
異世界で日本と同じレベルの旅館というのはさすが最高級の旅館と言えるのかも知れない。
そんなことを考えていると扉が開けられて、仲居さんが入ってきた。
「お食事の用意が出来ましたのでついてきてもらってよろしいでしょうか?」
「…?」
「申し訳ございません。街の人たちがお礼を言いたいと言われてましてこちらで宴会場を設けさせていただきました」
なるほど、そういうことか。てっきりご飯もこの部屋で食べると思っていたので首を傾げてしまったがそういうことなら移動することにしよう。
「わかりました」
案内のために前を歩く仲居さんの後ろをついていく。
「そういえば先ほどまでいたはずの漢の人たちがいなくなりましたね。本当にあの方たちはなんだったのでしょう?」
「そうでござるな、何かはわからないでござるが出来ればもう関わりたくはないでござるな」
クリスのおとこの言い方には笑ってしまうが二人の言っている通り出来ればもう会いたくはない人たちではある。
だが何故だろう、今のこの平和な空気のようなものは嵐の前の静けさで宴会場はとても危険な場所に思えて仕方がない。
仲居さんが話を聞いているはずなのに無表情のまま黙々と歩いているのも不安になる要素である。
そうこう考えているうちに宴の部屋へと着いてしまい、仲居さんが丁寧に扉を引き開ける。
目の前に広がる光景は軽く想像を超えてくるものであった。筋肉ムキムキの大男と女装をした漢がウオオオオオと叫びながら何故か腕相撲をやっていた。
周りもそれを観戦し、盛り上がりまくっている。
ざっと五十を超える人数が集まり既に出来上がっていた。
アレーオカシイナ、オレタチガシュヤクッテキイタノニナーと、目の前の光景に一瞬現実逃避するが中からの歓声に目を覚まし、即座に扉を閉めた。
仲居さんは無表情、隣のクリスとシオリも無表情。
すると、ドタタタタッと扉の向こうから足音が聞こえてきた。
そして、バァンと扉が開けられて、疑問の顔を浮かべたガストンが立っていた。
「おいおい、なんで扉を閉めたんだ?待っていたんだぞ?」
「筋肉ムキムキの大男と女装をした漢が腕相撲して盛り上がっていることを待つとは言わねえよ。光景が怖すぎて扉閉めちまったわ」
「ハハハ、すまなかったな。あいつらがお前たちをもてなしたがっていたが、お前たちあいつらのこと怖がってたからな引っ込んでるように言ったんだが聞かなくてな、ああなっちまったんだよ。ちなみに俺が勝ったからあいつらは大人しくしているだろう」
「そうだったのか、それはすまなかったな」
「よし、じゃあ宴会だ。入ってくれ、盛り上げていくぞ」
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ガストンに促され、乾杯の音頭を取らされて、全員を見渡せるところに来たのだが、人の量がマジで多い。こんな大勢に注目されるとか一番やりたくないことだった。ってことでさっさと終わらせるとしよう。
「えー、なんでこんなに集まってるのか分からないけど、とりあえず乾杯!」
我ながら何言ってるんだと言う音頭に苦笑いしながら、お前は何言ってるんだって感じでこちらを見てくる街の人たちから逃れるように舞台から降りていく。
舞台の下では何やら笑っているクリスとシオリ、それにユオもいた。
3人は笑いながらお疲れと言ってくれる。
「なんで笑っているんだ?」
質問をしてみるが、3人は笑うだけで答えてくれない。
さらに首を傾げていると、
「シュンさんらしい音頭だって言ってただけですよ」
クリスが仕方ないといった感じで答えてくれた。
「あんなん適当に言っただけだぞ?」
「ふふ、それがらしいってことです」
「そうでござる」
そう言われて、さらに首を傾げると今度は笑いが起こった。
そんな感じで宴が始まった。
宴は盛大に開かれて、まだ太陽が出ている頃から始まったのに既に日も変わるかという時間になっていた。
会場は地獄絵図のようになっていた。
街の人たちは酔っ払って各地で激しい飲み比べが行われている。
一番酷いのはガストンたちであれは視界に入れるのも嫌な程である。
開始早々からガストンは漢、名前をアンジェリカというらしい。冗談はよして欲しいと名前を聞いたときは吹き出してしまった。その後は思い出したくない。と飲み比べを始め、漢集団は皆泥酔し、眠りに誘われていった。
女性集団は早々にこの地獄から退散し、クリスたちも連れて行かれている。
そして俺も俺でこんな宴会は前世でしたこともなかったし、みんなのテンションにあてられたのと慣れない酒を飲みすぎたのとで普段よりテンションが高くなっている自覚はある。
今は一休みと考え、部屋の外の庭で一人黄昏ている。
すると、突如後ろから仲居さんをが現れて声を掛けてきた。
「大丈夫ですか?もしよろしければ露天風呂に入られてはどうですか?この街でも有数のお湯だと思っていますよ」
「なるほど、みんな俺いなくても気づきそうにないですし入らせてもらいます」
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露天風呂には誰もいなくて、日本を思い出させる光景に心落ち着かせながらゆっくりまったりと疲れを取っていた。
露天風呂は素晴らしく、岩で囲まれた場所にお湯が張ってあって、周りが木々で囲まれており、風で揺れる木々のさざめきが心をより落ち着かせてくれる。
どうやら、自分が思っている以上に魔物たちとの戦闘に疲労を感じていたらしく、日本にいるような感覚になっていたのも合わさって、眠ってしまった。
目が覚めたのはほんと偶然だった。
微かに脱衣所から物音がしたから、誰か来たのかと思い、自分がどれだけ寝ていたのかもわからないしさっさと出るようにしようと立ち上がったところで、脱衣所に繋がる扉の向こうで誰かが立っているのが見えた。
なぜ入ってこないのかと疑問に思いながら、体が冷えないうちにさっさと服を着ようと湯から出ようとする。
ガラッと扉が開けられる。
「あ、もう……」
もう出るから開けといてくださいと言おう思い扉の方を向いて、見えた光景に声が詰まってしまう。
そこに広がっていたのは夢のような光景であった。




