神戯大戦3
ティナと向かい合った状態で、俺は呆然としていた。
人族ってあんなに強くなれるのか。いったい何年、血の滲むような修行をしなければいけないんだ…。
てか、人族もめちゃくちゃ強かったけど、あれだけやって、最後ほぼ無傷になって勝利とか、龍族って本当にやばいな。会話はよく聞こえなかったけど、龍族あれでまだ本気出してなさそうだったもんな。
「あはははは、いやー面白い試合だったねー。彼をこっちの世界に送った甲斐があるってもんだよ。それより大丈夫かい?途方も無い強さの違いに打ちひしがれているのかい?まあいいや、さあ人族がやられたことで他の種族も動き出すよ」
「お前今こっちに送ったって言ったか?あの人族は俺と同じで転生者なのか?」
「そうだよ、君と同じようにこちらには僕が読んだんだ。彼も僕の加護がかかっている。どうだい?これで君も少しはやる気が出たかい?お、また戦況が動きそうだ。今回は早く終わりそうだなぁ」
そう言うとティナは目の前の映像を変え、違う場所を映し出した。
―――――――――――――
そこには悲惨な光景が広がっていた。
森であったであろう場所は木は吹き飛んでいたり、粉々になっていたりして、あちこちで衝撃を受けた後のような穴が出来上がっていた。
近くの山であったであろうものは半分以上が何かにえぐり取られていた。
そして、その悲惨な光景の中心ともなる場所には3人の人影があった。
1つは宙に佇み、眼下に広がる光景を眺めている。
彼女は天族の代表シアン・トレイドである。元々容姿端麗な天族の中でもずば抜けて高い美貌を持ち、その上、天族の代表として、歴代最強と言われている。
彼女は青みがかった髪をなびかせながら、地面に倒れ伏した2つの影を見下ろしている。
戦いの始まりは人族代表であるソウが龍族の男に負けた時にまで遡る。
エルフ族の代表セレス・フォレストリアと獣人族の代表アル・フォン・ドーマンは過去の大戦で幾度も争ってきた宿敵であった。
そして、今回の大戦再び相見えた2人は一時休戦し、天族を倒す協定を結ぶ。
人族が負けたと言うことを聞いた2人は天族を探すために行動を開始する。
首尾よく天族を見つけた2人は奇襲を仕掛けた。
セレスはエルフの秘術を使うためマナを練り始める。アルはセレスを気付かせないよう、空中を飛んでいる天族に、獣人族特有の身体能力で死角から先制攻撃を行う。
「死ねぇぇぇぇ、クソ鳥が」
と叫びながらアルは蹴りを繰り出す。
しかし、シアンはその死角からの攻撃を読んでいたかのように、ひらりとかわすと手に現れた光の球体をアルに投げつける。アルはそれを宙を蹴って方向転換しかわす。そのまま地面に飛んでいった光の球体は凄まじい爆音と共に辺りの木々が吹っ飛んでいく。
それを見たアルはセレスのことがよぎるが、すぐに切り替える。
一度地面に着地し、すぐにまたシアンへと攻撃していく。
「クソ鳥とは舐めたことを言ってくれますね、犬っころが。何かが近づいてくるなと思い妖族あたりの種族かと思ったのですが、期待外れなものですね」
「ふざっけんな、この前の大戦でお前らの代表がやってきたことは忘れねえぞ」
「なるほど、前回の代表があなたに何かしてしまったのでしょう。しかし、代表が変わった今、その事を根に持って復讐してくるのは、お門違いというものではないですか。奇襲を仕掛けてきたのは見逃すのでどこかへ行ってください。私は今忙しいのです」
「へっ、たしかにお前は俺らにあんな仕打ちをしたやつとは違うやつだ。だが、止めることはねえ。前代表の尻拭いだと思って相手しな」
「ここで引き下がればいいものを。なら、すぐにでも終わらしてあげましょう」
両者は会話をしながらも、しっかりと攻防を繰り返している。
その身体能力を生かした身のこなしで次々と攻撃を繰り出すアルと、それを全て見切り空中で避けているシアン。しかし、会話が終わるとともに、攻撃を避けるだけだったシアンは反撃を繰り出す。
アルが仕掛けた蹴りをゆらりとかわし、蹴りを繰り出す。アルはそれを両手でガードするが、勢いで地面に叩きつけられる。
そのアルに向かって光の球体が迫ってくる。すんでのところで身を転がし避けたアルに、その球体が幾度となく襲いかかる。辺りの木々や地面を破壊する球体は着実にアルを追い詰めていた。
身を転がして1つ目をかわしたアルは、その後目で追うことのできないほどの速さで森を駆け、襲いくる球体を全て避けていた。しかし、はじめは木々により見えづらかったその姿も木々が吹き飛んでいくことで、見えるようになってしまう。
そして、あと数度球体が繰り出されれば当てられると言うところでセレスのマナが練り終わる。
完全にこちらを向いていないシアンに向け、秘術を繰り出す。
「エアリアルブラスト」
一方向に集中させられ、辺りの木々をも巻き込み凄まじい威力となった風がシアンに襲いかかる。
シアンはフンッと鼻を鳴らし、わかっていたかのように右手をそちらに向け、光の波動を繰り出す。
光の波動はいとも容易くエアリアルブラストを飲み込んでいく。
辺りに爆音が鳴り響き、穴が出来上がる。その穴は高温の熱に溶かされたかのように赤くなっていた。
その光景に驚愕したアルは思わず足を止めてしまう。それにより、光の球体が直撃してしまう。
セレスとアルは吹き飛ばされ、奇しくも同じところに飛ばされてしまう。
両者ともに攻撃が直撃し、ボロボロである。
セレスは全身が火傷のように爛れており、アルは全身が血だらけで、無数の傷と光の球体が直撃したと腹部は身が見えてしまい、両者ともに生きているのが不思議なほどである。
「私が気づいていないとでも思っていたのですか?もしそうならバカにされたものですね。魔法を仕掛けるならもっとマナを隠さないとすぐに気付かれてしまいますよ。しかし、バレていないと思い、駆け回る犬っころを見るのはとても面白かった。気分がいいのではやく楽にさせてあげましょう」
上に掲げられた右手の先には、先程までアルを追い詰めていた球体の数倍の大きさのものが浮かんでいる。
その球体がもはや身動きすら取れない2人へと向かっていく。
辺り一帯の木々を巻き込んだ爆風が吹き荒れる。
光の球体が直撃した跡地には何も残っていなかった。
それをみたシアンは少し儚げな表情をした後、再び格上の種族を探すため飛んでいった。
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