神戯大戦2
何もない荒野、2人の男が相対していた。
一方は茶色の髪を後ろでまとめて腰に刀を携えて、油断ない顔つきで相手をにらんでいる人族の男だ。
もう一方は短い髪にツノと尻尾を生やし、自然体のまま人族の男と向き合っている龍族の男だ。
「よかった。まだ誰とも戦っていないようだな。始まってすぐ、お主の気配を探って来た甲斐があった。ハンデ背負った相手と戦っても面白くないからな」
「ガハハハ、面白い言い草だな。まるで俺と戦うためにここに来たと言っているみたいだぞ」
「そう言っているつもりだがそれがどうした?お主が前回の優勝者だろ?なら、今のところこの世界で1番強いのはお主ということだ。ならその相手にわしの剣がどこまで通用するのか胸を貸して欲しい。それにある人物より頼まれたこともあるがの」
「ほう、面白い。なら相手をしてやろう。だがその前に名前を聞いといてやろう。無謀にも俺様に挑んできたのだ強ければ覚えておいてやる」
「わしの名前はソウだ」
そして、ソウは刀に手をかける。
2人の間に緊迫した空気が流れる。
チッと刀が鍔に当たった音がしたかと思うと、ソウがいた場所に残像を残すほどのスピードで接近し、刀が振り抜かれる。間髪置かずに刀を切り返し、目では到底追えない速度で斬りつける。
その攻撃を受け龍族の男はソウに向かって腕を振る。ソウはその腕を紙一重で屈み避ける。が、その後生まれた突風により後ろへ吹き飛ばされる。
吹き飛ばされた体を受け身をとって、体勢を整える。
「何発かは当たったと思ったのにやっぱり無傷か。龍闘気ってやつかの」
「ほう、知っておるのか、この闘気は初代が代表が纏っていた闘気で、龍族に伝承されているものだ」
「ああ、その闘気は剣も魔法も一定の力より低いものは攻撃を通さないだろ。全く反則すぎだな。刀と己の技量だけで通せるとは思っていなかったが、実行されると己の技量の無さを痛感させられるわ」
「フハハハハ、何心配しなくてもとてつもない技量だ、これほどまでに強い人族は見たことがない。もし俺のところにすぐ来なければ、最下位にならなかったかもしれないぐらいだ」
「褒めてもらえるのはありがたい。だが、まだ準備運動だ。次はその体に傷をつけてやろう」
「ほう、なかなか大きな口を叩くではないか。この前の大会、結局俺に傷をつけてこれたのは、妖族と魔族だけだったのだぞ。そいつらに匹敵すると言いたいのか。面白い、ではくるが良い」
ソウは抜いていた刀を一度鞘に戻し、刀を構え直す。
ソウの周りの空気が一瞬にして変わる。
龍族の男はその空気に、今まで自然体であるのをやめ、迎撃の構えを取る。
一瞬ソウがブレる。
「理心流 居合の型 朧紫閃」
龍族の男の胴に向かい刀が一閃する。男は胴に向かってくる刀を腕で防ぐ。防ぐが先程の攻防では、傷すらつかなかった闘気が貫通し、腕に斬りつけられた傷がつく。
龍族の男の纏う空気が一瞬で変わる。が、ソウはそんな事気にせず、目にも留まらぬ速さで、龍族の男を斬りつけていく。
「どうした?腕に傷がついたぞ。余裕かましてるからだな。ちょっとはやる気になってくれたか?」
「たしかに面白い。どういう理屈か知らんが、傷をつけられたのは認めよう。だが、それで俺が焦るわけがない。まあ、少しはやる気にもなったから、格の違いというのを見せてやろう」
ソウの凄まじい剣戟を、両手で防ぎ続けていた龍族の男が反撃にでる。
剣を腕で防ぎ、蹴りを繰り出す。ソウはその蹴り捻りかわし、追撃で来た拳を刀で防ぐが、威力を防ぎきれず、後ろに吹き飛ぶ。刀を地面に突き立て後ろへ吹き飛ぶ勢いを殺し、着地し刀を構えるが、正面にいたはずの龍族の男はおらず、勘といっていい反応で、上から振り下ろされる脚を刀で防ぐ。凄まじい威力に膝をつく。あたりを見ると、蹴りの威力でクレーターができている。
クレーターの上から龍族の男はソウを見下ろす。
「ほう、今のを防ぎきるとはなかなか面白いな。これはもう少し本気を出してもいいかも知らんな」
そう言って何もない空間から剣を取り出す。
「やっと剣を取り出したか、全くお主の強さの底が見えんわ。腕に傷をつけたはずなのに消えとるし、やっぱりこの世界の者は規格外だよ」
「なに、自慢して良いのだぞ。人の身で俺に剣を取らせたんだ。だがもう俺に一撃も入れさせはせんがな」
「大きな口を叩くだな。ならわしは手加減抜き、全力でいかせてもらおう」
ソウの構えていた刀が揺らめく。刀身に凄まじい量のマナが行き渡り、刀が揺らめいて見えるのだ。さらに、それは刀だけに収まらず、ソウの体をも纏っていく。
一瞬で龍族の男にソウが近づき、斬りかかる。刀でそれを迎撃した龍族の男が吹っ飛んでいく。吹っ飛んだ状態の男にソウが追撃を繰り出していく。男が一太刀受けるごとに吹っ飛んでいく方向を変えていく。マナを纏ったソウの残像が彗星のように様々な方向へ伸びて、何度も攻撃していく。
だがそれも、ドゴーンという爆音とともにできたクレーターにより終わってしまう。
クレーターの上では、龍族の男が傷一つない体で宙に浮いている。
ソウはクレーターの底で倒れ伏していた。纏っていたマナは無くなっていて、左腕はあらぬ方向を向いている。刀を地面に突き立て立つが、ゴポッと口から吐血をする。一撃で凄まじい威力だ、先程まで手加減していたとわかるのが、今回できたクレーターが、先程できた蹴りのクレーターの倍は深いということだ。
ソウは体はボロボロ、左腕は使い物にならない満身創痍の状態で、宙に浮いている龍族の男に声をかける。
「奥の手を使って無傷とか泣けてくるな、どんな体してるんだよ」
「いや、お前はもう立派な俺の敵だ。まさかマナを体に纏うとはな、あのままもう数撃食らっていたら危なかった。お陰で使う気のなかった重力魔法まで使ってしまった。すぐに楽にしてやる。どうせここで死んでも現実に戻るだけだ。何か俺に言い残すことはあるか?」
「ハハハ、最後の言葉ってやつか、まだそれを言うのは早いだろう。だって、ほら。わしはまだ使えなくなったのは左腕だけだ、あいにくわしは諦めが悪いんだ。わしを諦めさせたかったら、右腕に足も使い物にならないようにしないとの」
「そんなに苦しみたいのなら苦しませてやる」
ふわっとソウの体が少し浮く。直後、龍族の男がソウを上に蹴り上げる。そのまま、先程と立場が逆転したかのように、龍族の男がソウを剣で吹っ飛ばし続ける。ソウはそれを何とか右手一本で扱う刀と体術のみで、なんとか受け続ける。数度繰り返された後、吹き飛ばされ、それを追撃してきた龍族の男が、剣を横薙ぎに振ってくる。
「理心流 返し技 返影斬」
ソウはそれを体を強引に捻り、紙一重でかわす。そして、その勢いのまま刀を男に振り下ろす。
刀はマナを帯び揺らめき、剣をかわされた男は無防備にその攻撃を受ける。男はその攻撃をものともしないかのように、ソウを蹴り落とす。
ソウは攻撃で態勢を崩しており、受け身をとれない。
地面に人型の穴が空く。穴の周りがひび割れ、立っているのが不思議な程ボロボロなソウが現れる。
「どうだ、もう傷はつけられないとか言ってたが、大きな傷ができてるぞ」
龍族の男は苦い顔をする。その体には肩から腹にかけて一筋の傷ができており、血も流れている。
「たしかにお前には一本取られた。まさかあの状態から、俺の剣をかわせるとは思わなかった。俺もまだまだ修行が足りんと言うことだな。だが、お前はもうボロボロじゃないか。剣もまともに振れんだろう」
「ああ、その通りだ。どうせならひと思いにやってくれ」
「なんだ、もう諦めるのか。もう少し粘っても良いのだぞ」
「はは、もう実力の差はわかったさ、それに約束も果たしたからな」
「約束?まあよい、ではまた次の大戦で戦おう」
「ああ、次は倒してやるよ」
龍族の男が剣を一閃する。ソウの首が体から離れ、飛んでいく。直後、ソウの体が光となり、消えていった。
荒野には先程まであった傷がなくなった龍族の男が1人立ち、目をつぶり続けていた。
更新遅くなり申し訳ございませんでした。
次の更新は9日の予定です。
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