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第四章:战斗


場上、一匹の猿と一人の男が激しく交戦していた。

血のように赤い瞳に変わった子猿は、その体が元よりも一回り大きくなり、まだ成人男性に比べれば小柄ではあるものの、中型の狼犬ほどの大きさにまで成長していた。

鋭い牙、突き出た爪、そして鬼のような速度——それらが中年の男に与える戦闘的プレッシャーは相当なものだった。

またしても死角からの奇襲攻撃。しかし武人としての経験を活かし、辛うじて斧槍で防ぎ、相手を退けることに成功した。

だが——キルダスは確かに感じていた。自分が戦闘の泥沼に足を取られていることを。

鬼のような動き、見えない死角からの攻撃、有効打を与えられないもどかしさ、抗いがたい怪力——それら不利な要素が、一枚一枚の瓦のようにキルダスの心に積み重なり、心理的負担を強めていった。

それでも敵は変わらず、まるで疲れを知らぬかのように、地面を高速で疾走し、跳躍を繰り返す。

一瞬の地上跳躍、空中で足元に爆音を響かせ、攻撃姿勢を何度も変えながら、子猿はキルダスの周囲を縦横無尽に駆け回る。

「このままでは、もともと回復していなかった体力が再び尽きるのも時間の問題か……」

そう悟ったキルダスは、決意する。

一息つくと、斧槍を地面に叩きつけた。金属の柄が土に三寸ほど入り、しっかりと地面に根を下ろす。そのまま彼はしゃがみ込み、やがて地面に正座した。

両手を膝の上に置き、まるで鋭利な剣が剣鞘に収められたかのような佇まい。しかしその内に秘めた剣気は、かすかに漂っている。

その目に宿っていたのは、敗北や諦めではなく、獰猛な獲物を前にした賢明な狩人の計算だった。

李沐子はその光景を見て、首をかしげた。

格闘技の本を何冊も読んできた自分でも、この技の意図を読み解くことはできなかった。

「正座……? それが武技なのか?」

檻の中では、フニャ団長や隻眼の男たちも困惑した表情を浮かべていた。彼らは歴戦の戦士であり、豊富な対敵経験を持っているにもかかわらず、この戦闘姿勢には見覚えがなかった。

「戦闘中に正座なんてありえない」——誰もがそう思った。

「あれは『擒捕』(きんぶ)だ。日本の技だな。中華の民である君たちには馴染みが薄いかもしれないが、いわば一種の擒拿術や柔術のようなものだ」

弱々しいが、なぜか力強さを感じさせる男の声が響いた。

声の主を探すと、隅で丸まっている男の姿があった。

四肢はねじ切られ、麻花のように曲がっている。傷口には膏薬が塗られ、骨は板や枝で簡単に固定されているだけ。それでもその傷はひどく生々しかった。

垢まみれで悪臭を放ち、見るからに不潔な姿。しかしその目だけは、なぜか澄んでいて、まるで世の中の汚さを知らない少年のように輝いていた。

フニャは直感した——この男は自分たちのチームの者ではなく、同じく石猿に拉致された人族同胞だと。

その痛々しい姿に、彼女は一瞬、哀れみにも似た感情を抱く。きっと多くの苦しみを味わったのだろう。

今までも彼の存在には気づいていたが、彼が捕虜同士の脱出会議に一度も参加せず、また自分自身も自チームに集中していたため、この檻の片隅に縮こまる男を半ば無視していたのだ。

「あの……こちらでは——そうお呼びしてもよろしいでしょうか? あなたはここに長くいらっしゃるようですね。私たちは数日前に連れてこられたばかりです。この公敵の巣についてはまだわからないことばかりで……」

彼女は期待を込めた目で尋ねた。

「もしよろしければ、何か教えていただけませんか? 私たちも、残った者たちを封王冢から生還させるために全力を尽くします」

そう、慎重に言葉を選び、この見知らぬ男から脱出の糸口を引き出そうとした。

「……先生?」

しばらく待っても返事がない。

もう一度声をかけようとしたその時——

「くくく——」

喉の奥からかすれた、気味の悪い笑い声が漏れた。まるで枯れ木と枯れ葉が擦れ合うような、ぞっとする音だった。

「そんなに畏まらなくていい。『先生』なんて呼び方は、俺には釣り合わないよ、フニャ殿。俺は君たちのチームの名を聞いて、ずっとお会いしたかったんだ。この街に来てからというもの、君たちに会えるのを楽しみにしていたんだぜ」

フニャの遠慮がちな言葉に、男は軽く返すと、唐突に自分が人帝城の出身ではないこと、そして彼らチームを以前から知っていたことを明かした。

最後に彼は神秘的な微笑みを浮かべ、さらに意味深長な一言を添えた。しかしその言葉に、誰も注意を払わなかった。

「俺を『仄暗(そくあん)』と呼んでくれ。それが俺の姓だ。この大都会を漂う浮浪人だ。そんなに丁寧にされるとかえって困る。気軽に話してくれ」

そう言う男の顔は、痩せ細り、唇は乾燥してひび割れ、まるで田んぼのあぜ道のように縦横に切れ目が走っていた。

格好は見るも無惨だが、その目だけは異様に澄んでいた。

それはまるで、絶望の中にある者の目とは思えない、無畏で無垢な輝きだった。

フニャは何か違和感を覚えた。

何か危険な気配が、まだ表面化する前に不可視の力で抑え込まれているようで、そしてそれは自分たちにも関わることのような——。

直感に戸惑いを覚えつつも、言葉にしようとした。しかし——

「ここはお前が口を出す場ではないぞ、身元不詳の野人」

背後から、隻眼の中年男の軽蔑に満ちた鼻声が響いた。

彼にとって、地位の低い下民に対してこのような態度を取るのはごく当たり前のことだった。

「なるほど。ただの浮浪人か。それならば、このような目に遭うのも納得だ」

彼は仄暗を頭の先から足の先までじろじろと見渡し、そのみすぼらしい姿をしっかりと目に焼きつけると、身分不相応な嘲笑を漏らした。

「おそらく何か悪いことをして、主か役人にやられたんだろう。そしてこの未知の領域の捨て駒にされた。こんな奴はいくらでもいる」

そう言い放ち、仄暗が何も反論しないのを見て、ますます自分の推測が正しいと思い込んだのか、言葉はさらに激しくなった。

子を罵ることは父を罵るに等しい。これは相手の存在価値を全面的に否定し、侮辱する行為だ。そしてそれは、儒家の五常や武人の武徳とは完全に背反する行動だった。

それにもかかわらず、その場の者たちは平然とそれを行っていた。相手の身分が低いから、罰を受けることはない——そう踏んでいたからだ。

檻の中のほかの隊員たちも、口々に仄暗を嘲笑い、軽蔑の目を向けた。中には彼を化け物を見るような好奇と嫌悪の入り混じった目で見る者もいた。

中にはそうしなかった者もいたが、それでも仄暗を「同類ではない異物」として見ていた。

彼らの態度は、ある意味で自然なものだった。人帝城で生まれ育ち、代々良家子や良民として過ごしてきた彼らにとって——あるいは下層の勲貴や寒門出身者にとって。

高い身分と教育を受け、彼らの認識では、外来者は生まれながらに自分たちよりも一段下だった。

人帝城でも同じこと。彼らは蛮族が自分たちにへつらい、頭を下げる姿にすっかり慣れていたのだ。

フニャは唇を閉じた。

何か一言、彼を弁護しようかと考えた。——それは差別だ、不合理な暴力だ、許されるべきではない——。

しかし、自分はこのチームの隊長である。浮浪人一人を弁護することで、チームの和を乱し、団員たちに自分が軽んじられていると思わせれば、信頼が揺らぐ。そして今後の脱出計画にも大きな支障をきたす。

そう考えた瞬間、彼女の中でその思いは、理性という秤によって押しつぶされた。

一方は、信頼し共に戦ってきた仲間たち。もう一方は、素性も知れず、助ける必然性もない、見知らぬ少年。

成熟した隊長として、冷静な大人として、どちらを取るべきか——彼女はよくわかっていた。

「すまない……この子には悪いが、皆のストレス発散の標的になってもらおう」

仄暗は、その冷たい空気の中で、ただ「その通りです」と言わんばかりの表情を浮かべていた。

屈辱も怒りも見せず、彼は瞬時に市井の小心者を演じ、へつらい、機嫌を取る表情を作り上げた。

「皆様のおっしゃる通りでございます。小生、精一杯お仕えいたします。決して怠りも異心もございません」

深々と頭を下げ、謙虚な口調でそう言った。

隻眼の男たちはますますこの男を軽蔑した。

何せ、中華の地は武風が盛んで、領民の多くは義を重んじ、生を軽んじる。名誉や世間の評価を自分の命よりも重んじる。

そんな彼らからすれば、目の前の男の卑怯で命惜しみな態度、媚びるような姿勢は、まさに唾棄すべきものだった。

しかし、彼らは気づかなかった。

仄暗が頭を下げた瞬間、その目に一瞬宿った殺気と血に飢えた輝きを。

全ての覇者が持つ暴虐と理不尽な衝動は、彼の内側に深く潜められ、この弱々しい体の中に押し込まれていた。

そして——時が熟すのを待っている。火山の噴火のように、領域内のあらゆる生き物を焼き尽くすその時を。

仄暗への追及がひとまず収まり、皆がこれ以上彼を責めることはなかった。

場の緊張を和らげるため、そして自分たちの不安を消し去るためでもあったが、フニャは口を開いた。優しい口調で——心の中には、わずかな罪悪感があったけれど。

「あなたは、あのキルダスという男の使っている技をご存じのようですね。もしよろしければ、その技について教えていただけませんか?」

そう言いながら、彼女は内心、もし断られたらどうしよう、また皆が彼を責め始めるのではないか、という不安を感じていた。

しかし——

「もちろんです、フニャ殿。漢日天種の疑惑を解くことができて光栄です。何せ、この後のためにも準備は必要ですから。私は何の齟齬もなく進めたいのです」

仄暗は微笑んだ。その笑顔は相変わらず優しく、何もなかったかのように穏やかだった。

それを見てフニャはほっと息をついた。同時に、この少年の度量の大きさに心から感心した。あれだけ公然と侮辱されたにもかかわらず、冷静さを失わず、寛大な態度を保っている。

「彼の言う『この後』とは、脱出のことかしら……」

しかし、それは誤解だった。仄暗の言う『この後』の真意は、まったく別のところにあった。

場では、キルダスが正座したまま、厳粛で集中した様子で、背筋を伸ばしていた。

まるで静かな部屋の中で明鏡止水の境地を追求する修行者のように。

小石猿はその周囲を高速で駆け回る。一瞬の跳躍、空中での音爆、そしてまた次の跳躍——死角をなくすように、彼の四方八方を縦横無尽に駆け抜ける。時折、幼い鳴き声が争いをあおるように響く。

キルダスは微動だにしない。まるで一本の杭のように。

周囲の石猿たちは狂ったように声援を送っている。集団の声には明らかに高ぶった応援の色が混じり、まるで子猿に何かを催促しているようだった。

李沐子も、何かがおかしいと感じ始めていた。

自分の感情もまた、周囲の熱気に飲まれ、落ち着かない気分になっていた。

「この戦い、もうすぐ終わるんじゃないか……しかも、誰も予想できない形で——」

それが、一瞬で決着がつくような形で——そう思った瞬間、自分でもその考えが馬鹿げているとわかっていた。

何せ、今の状況では敵は不敗の公敵だ。

数は圧倒的に多く、個々の戦闘力も侮れない。しかも敵の本拠地で包囲されている。生きて帰れるかどうかさえ、贅沢な望みだ。

つまり、今の自分たちはまな板の上の魚。ただ弄ばれ、屠られるのを待つだけ。

この窮地を打開する鍵——それは石猿たちの不死の軍団の謎を解くことだ。

だが、その不死の身体と驚異的な治癒能力をどうやって打ち破るのか、未だに誰も答えを出せていない。

たとえ一度、いや何度倒しても、蘇る限り、すべての策は無意味に終わる。

この場にいた者の中には、同じ石猿を連続で仕留めた者もいる。肉片になるまで粉砕し、常識的には絶対に動けないはずの状態にした。それなのに——しばらくすると、信じられない復活の場面が繰り返される。

その結果、戦闘員たちは体力を奪い尽くされ、抵抗できなくなり、元気いっぱいの石猿たちに捕らえられ、殺される。あるいは弄ばれ、喰われる——敗者の運命として。

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