第十一章:仄暗牺牲
寒い。寒い。寒い。
体がとにかく冷たい。これほどまでの寒さを感じたことはなかった。出血多量による体温低下で、李沐子は氷の底に落とされたかのようだった。全身に襲いかかる激しい鈍痛で意識は朦朧とし、体のすべてが耐え難いほど苦しかった。
目の前の世界に意識を集中できない。ぼやける視界の中で、一群の黒衣人たちが、自分の体から流れ出ていく神秘的な気流を貪るように吸い取っているのが見えた。この黄金色の気流が体から少しずつ失われるたびに、自分は一段と弱っていく。
空に浮かぶ、自分の腸でできた数平方メートルの血肉の幕はゆっくりと回転し、黒い気流がその周りを旋回していた。それはまるで生き物のように動き、不気味な生物と化していた。
体内、とりわけ腹部からは一陣の虚無感が押し寄せる——それは自分の体内から7メートルにも及ぶ腸をすべて引き抜いた代償だった。腸の内部の内容物はすべて排出され、血まみれの腸の内壁では無数のひだが蠢いている。
七本の棱錐形の杭の窪みからは、李沐子の生命の精華が絶えず集められていた。この七本の命を奪う杭は、李沐子を十字架に釘付けにし、生きている人間として最も重要な生命エネルギーを吸い取り、集めていた。
これらの貴重な液体は、一滴ずつ杭の表面の円形の頭部から滴り落ちる。まるで最後のカウントダウンのように。
この液体の最後の一滴が落ちるとき、自分が人間としてのすべてを終えることになるのだ。
李沐子は苦しみながら頭を上げ、遠くにある人間の捕虜たちの方を見た。全精神力をつぎ込み、鉄格子の幾重もの太い柵を通して、人々から向けられる異様な視線に気づいた。
その中でも一人の人間が特に奇妙な感覚を与えてきた。李沐子はその時、不思議とその人が自分に抱く感情を察知することができた。おそらく死にかけたことで五感が異常に強化され、普段は微かすぎて気づかないことまでも感じ取れるようになっていたのだ。
李沐子は感知能力が強化されたかのように、その人物が他の者たちのように恐怖や不安、怯え、仲間の死を悲しむといった消極的な感情を発していないことに気づいた。むしろ期待と、何かを見届けるような感覚、あらかじめ定められた目標と奇妙な感情のフィードバックを伴った、名状しがたい混合体だった。
彼はその人物が自分に向かって笑いかけ、口元で無言の形を作っているのをぼんやりと見た。しかし距離が遠すぎて、その意味を読み取ることはできなかった。
だがその人物から放たれる玩味と嘲笑の気配は、確かに李沐子に感じ取られていた。
李沐子は虚ろな目で周囲の景物を見つめた。自分がもうすぐ死ぬことを悟っていた。王道天賦術法《身代わり》との接続も断たれ、金蝉脱殻のような脱出は不可能だった。今回こそ本当にここで死ぬのだろう。
視界の片隅で、李沐子はふと、数匹の光を放つ蝶が空中で舞っているのに気づいた。黒い種類もいれば白い種類もあり、その周囲には厚みと鮮やかさを兼ね備えた光をまとっていた。
蝶たちは互いに追いかけ合い、じゃれ合い、石猴洞天の中を自由気ままに飛び回っていた。空中で旋回し、絶えず動き、舞い踊っている。しかし周りの人間たちはそれらをまったく見ていないようだった。
李沐子は今初めて目にしたが、それまでは彼らの存在にまったく気づいていなかった。まるでこの空間には存在しないかのようだった。
なんて美しい蝶たちだろう。限りなく鮮やかで優雅だ。こんな時ですらも、人の心を晴れやかにし、心を静かにさせてくれる。
まさか人生の走馬灯を見ているのか?見るはずのない幻覚でも見ているのか?
だがもしそうだとしても、自分の走馬灯に映るのは蝶の群れではなく、きっと——
李沐子は過去の記憶に沈んでいった。
心拍のリズムがますます遅くなる。下では黒衣人たちの摂食速度が加速していた。彼らは口で軽く吸い、閉じ、飲み込むだけで、李沐子から湧き出る金色の気流が彼らの口に入り、二度と出てこなくなる。
最後の回光返照の中で、李沐子は周囲のすべてを見渡した。悍ましい公敵、板挟みの捕虜、神秘的な黒衣人——自分はどうやらとんでもない状況に陥っていたらしい。本当に、自分の中途半端な人生もこれで終わりか。
李沐子は死んだ。目を閉じ、心臓の鼓動は止まり、脳は最後のプログラムを開始する。
顔には静かで安らかな表情が浮かんでいた。
「おやおや、どうやらこの人間はついに死んだようだな。まったく、大した手間をかけさせてくれた。では、先の約束通り、この少年の死体はお前にやろう」
痩せ細り、全身に陰鬱な気質を漂わせた男が口元を歪め、計画がついに成就したという陰険な笑みを浮かべた。
彼は黒羯羅のそばに立ち、黒衣人の中でも地位が高いように見えた。彼女の方を向き、抑えきれない笑みを浮かべている。
彼は黒衣人の中で唯一素顔をさらしていた。反射する眼鏡をかけ、痩せ細り、冷徹で古めかしい顔立ちをしている。
今、その教科書的に冷徹な顔には、抑えきれない興奮と期待が浮かんでいた。まるで啓示を待ち続けた伝道師のように。
「福音書の預言に従って行動すれば、ここまでやれば問題ないはずだ」
玩味を含んだ、探るような口調だった。
黒羯羅は人の心を奪うような笑みを口元に浮かべ、ベール越しでも彼女の愉快な気分が伺えた。首を振り、周りの者たちに耳を傾けるよう合図した。
「まあ、そういうことね。次が本当に私たちの力量が試されるとき。運命の時がついに到来し、止まっていた風車がようやくゆっくりと回り始める。私たちにも真の活躍の場が訪れるの。今後吹く運命の強風に乗って」
声には底知れぬ深遠さが含まれ、まるで神がかりのような掴みどころのない口調だった。
周囲の黒衣人たちは恍惚として、黒羯羅が描く美しい幻想に浸り、夢中と陶酔の表情を浮かべた。
「それじゃあ、私も福音書に示された指示に従うわ。本当に楽しみね」
黒羯羅はほのかに微笑む。
彼女は不意に隣の公敵の王たちの方を向き、優雅な足取りで爾朱大王に近づき、そのそばに立った。
公敵の王たちを見渡し、口元に期待と異様な光を宿した視線を浮かべる。
優雅に一礼し、封魔球の中に収めた闇の伽耶を封魔球ごと石猴王に差し出した。
「先の約定に従い、この魔幻生物はあなたたちのものです。自由に処分してください」
続けて、限りなく誘惑的な口調で言う。
「何をしても構いません。どうかお心のままに」
石猴王の目には、ついに念願が叶ったという色彩が浮かび、ゆっくりと手を差し出した。
まるで悪魔に手を差し伸べるかのように。
封魔球が手に落ち、その重みを実感すると、石猴王の口元も思わず緩んだ。老けた顔には見て取れるほどの興奮が現れていた。
有頂天になった彼は気づかなかった。黒羯羅が彼の額の細い隙間をじっと見つめ、長い間それを観察していることに。何を考えているのかはわからない。
それは石猴王の第三の眼のある場所で、真の力を隠し、万不得已には開かれない。黒羯羅の目には計算が光っていた。
ついに手に入れた。この瞬間、彼は待望のものを得た無上の幸福感を感じていた。
「感謝する、異邦人よ。お前たちは我が一族の未来の大厄災を解決してくれた」
石猴王の口からは、悠久の時を超えてきたかのような質感を帯びた、古びた声が発せられた。
それを見て、黒羯羅の口元の笑みはさらに艶やかで美しくなった。棘のある毒薔薇のように。
彼女は優しく言った。
「あの子の死体については、お好きに処分してください。すべての王気と精華を吸い取られた今では、ただの残骸に過ぎません。我々にとっては何の価値もありません」
そう言いながら、黒羯羅は意図的に彼らの意見や考えを漏らし、平淡な口調で続けた。
「そんなゴミは、標本にするのもよし、食料にするのもよし、肥料にするのも構いません。まったく気にしませんが、ただし、お早めにされることをお勧めします」
彼女は親切なふりをして注意を促した。
「闇の儀式を施され、我々の秘儀を行った生物は、すぐに炭と化します」
「その時になれば、もう再利用できなくなります」
「それから、これらの人間についてですが、よろしければ我々も教廷の黒魔法実験用に買い取りたいのですが」
石猴王は手を大きく振り、無頓着に言った。
「好きなように持っていけ。我々にとっては、彼らはただの食料と餌に過ぎない。いつでも補充できる」
黒羯羅は慌てて手を振り、焦った口調で言った。
「それはなりません。我々はせっかくの協力関係にあります。この信頼関係を壊したくはありません」
石猴王は断固とした態度で、顔には強い決意を浮かべた。
「あなたは我々の友人だ。友人同士の関係を金で計るわけにはいかない。これは絶対に譲れない原則だ」
彼はどうしてもこれらの捕虜を黒羯羅たちに贈り、関係を強化しようとしているようだった。
石猴王の熱意に押され、黒羯羅はため息をつき、仕方なく言った。
「大王がそこまでおっしゃるなら、私もこれ以上お断りするわけにはいきません。それならばこうしましょう。彼らに呪法をかけ、質を検査して、その中から数名を連れて行きます。残りは大王たちが人売り市場で売買なさってください」
石猴王が驚いた顔をする中、黒羯羅は澄んだ声で叫び、遠くの檻に向かって言った。
「これは闇の世界の使者がよく使う高等魔法、いわゆる黒魔法というものよ。喰らえ、人間の捕虜ども!『五毒心魔顕形掌』!」
一陣の掛け声とともに、黒い掌印が黒羯羅から放たれ、どんどん大きくなっていく。風に乗って大きくなる黒い掌印は、檻の中の捕虜たちを貫通し、彼らの恐れに満ちた目の前で接触した。
黒羯羅は限りなく楽しげな笑みを浮かべ、説明した。
「『五毒心魔顕形掌』——これは人の心底に隠された五毒を呼び覚まし、人を名実ともに怪物に変える恐ろしい魔の手よ」
目に見える速さで、檻の中の人間の捕虜たちは悲鳴を上げ、呻きながら、それぞれが真の異形へと変貌していった。
彼らの四肢は曲がり、内側に萎縮し、結晶が剥落する。背中に角質層のような薄い外殻が生える者。顔に幾つもの不気味な複眼が現れる者。手に鋏のような構造が生える者。ぬめぬめとした触手が生える者。全身に細かい三角形の鱗が生える者——
その形態変化はさまざまであったが、例外なくかつて見たことのない非人の姿と化していた。ホラー小説の常連たちだ。
フニーアは青ざめた顔で、顔に焼き付くような激痛を感じていた。そして尾骶骨のあたりから何かが芽を出してくる痛みも。
彼女は自身の左頬のざらついた部分に触れ、指でその粗い感触を確かめた。心は一気に底へ落ち込み、自分の行動を思い返して心の中でため息をつく。これもこの悪人への罰なのだろう。
彼女の顔には、今や蠍のような角質層が生えていた。左半分の顔を覆い、恐ろしい様相を呈している。尾骶骨の上からは蠍のような白い尾が伸び、先端には毒針がついていた。彼女は比較的変化の少ない方だった。
多くは直接、完全な異形生物と化していた。人の面影はなく、蠍、蜈蚣、飛蛾、蟾蜍など様々な形態で、全身から耐え難い悪臭を放っていた。
「嫌だ……俺、怪物になんかなりたくない!」
「神様!神様、お助けください……」
「うわああ……こんなの嫌だよ、怪物になるなんて、せめて人間の形のまま死なせてくれよ……」
全員が自分が異形の怪物になったという巨大な悲しみと信じがたさに浸り、一時的に誰も、ある異変がひそかに起こり始めていることに気づかなかった。ある変化が暗闇の中で蠢いていた。
最も注目を集めたのは隅にいた一人の少年、浮浪人の仄暗だった。今や彼はもはや人型とは言えず、キメラのような混合怪物と化していた。ただ、変わらず澄んだ一対の目だけが冷静に四方を見渡し、何かを考えている。黄緑色の悪臭を放つ膿が彼の皮膚から絶えず溢れ出ていた。
一目でSAN値がゴリゴリ削られるような、生理的な無限の嫌悪感を抱かせる。もし怪物の醜さランキングを決められるなら、間違いなく仄暗はランクインするだろう。
「ははは。実に心地よい!」
黒羯羅は腹を抱えて笑った。顔には興奮による充血で不自然な紅潮が浮かんでいる。
普段の美しい声は、今や完全に嘲弄の音符と化し、洞天の中に反響した。
「普段は清らかなフリをしているくせに、結局心の闇は闇界の者たちも自嘆弗如、降参したくなるほどだ。笑わずにはいられないな。まったく滑稽極まりない!」
黒羯羅の声は一瞬で辛辣で鋭くなり、限りない嘲弄の意味を込めていた。
まるで捕虜たちの傷口に塩を塗るかのように、また口を楽しませるために。
黒羯羅は続けて、嗄れた声で言った。
「この『五毒心魔顕形掌』は、自らの悪に気づいていない愚か者たちに悟りをもたらすために開発されたものよ。心の中の悪と過去の悪が強ければ強いほど、体の異化の度合いと受ける苦しみも大きくなる」
そう言いながら、李沐子の方へ歩いていく。
「お前たちに絡みつく宿怨、そして過去にお前たちが殺めた無辜の魂たち、お前たちが積み上げた悪業——それらすべてが今、顕現してお前たちを苦しめる。苦しみたくなければ、素直に自分が悪人だと認めることだな」
李沐子の次第に冷たく硬直していく顔に触れ、手を近づけて確かめる。生気が完全に失われたのを感じ、黒羯羅は人に命じて李沐子を解放させた。
「本来なら、自分を律する清教徒でなくとも、殺生や犯罪を犯さない一般市民であれば、この黒魔法はただ衰弱させるだけだ。しかし——」
彼女は言葉を続けながら、地面に安置された李沐子の体を見つめ、捕虜たちの方を一度も見なかった。後始末が整い、内臓や血迹が大体拭き取られた後、ようやく後ろの捕虜たちを一瞥し、思わず笑った。
「ぷっ……まさかの全滅か。一人も善人がいないとはな。ますます失望させられる。せめて清濁併せ持つ覚悟くらいあっても良かろうに。まったくもって失望だ。だが、本当に失望させられたのは、お前たちを派遣した組織だな。あの共同体という連中は、ますます退化している」
三度「失望」と言った。どうやら黒羯ロ女史はこれらの捕虜たちをまったく評価していないようだ。
黒羯羅は傍らの黒衣人数人に低い声で何か指示をすると、黒衣人たちは立ち上がり、洞天の出入り口を見張る石猴の衛兵たちに一瞥をくれた。石猴王の許可を得て門を開けさせ、先に外へ出て行った。
「では、尊敬する王の皆様方。宴も終わりましたので、我々暗黒界の者は先に失礼いたします。ついでに申し上げれば、宴の葡萄の風味は大変素晴らしく、龍桃も実に魅力的でした。また今後も協力の機会があれば、再び味わいに参りましょう」
李沐子の遺体は、石猴王の指示で洞天の奥——龍桃を育てる血池へと運ばれた。そこで廃物利用されるのだ。人間の残骸とはいえ、多少は血液を搾り取って水分として利用できる。
黒羯羅は恬淡とした笑みを浮かべ、さりげなく李沐子に視線を送り、口元の笑みを深くした。一礼してから、立ち去ろうと向きを変えた。数歩歩いてから、突然何かを思い出したように額を叩いた。
石猴王に一束の符紙を投げ、丁寧に説明した。
「封魔球の封印符紙は定期的に交換する必要があります。魔幻伽耶はおとなしい生物ですが、時々適度に駄々をこねることもあります。その際には適切に宥めてやる必要があります。我々の者が定期的にメンテナンスに参ります」
最後の用事を済ませ、黒羯羅はにこやかに笑いながら黒衣人たちを連れて去っていった。最後に門をくぐる前に、ふと石猴王に言った。
「大王の配下の一部の者たち、唇が若干紫色に変色し、瞳孔も開いているようですね。良い兆候ではありません。早急に検査されることをお勧めします。中毒か、心臓に問題があるのでしょう」
「ご配下の皆様の御心身の健康のためにも、どうか念入りに精査されるよう」
そう言い終えると、六人の大王たちに一礼し、別れを告げた後、すべての黒衣人たちが洞天を出ていった。彼らの姿はすぐに無限の闇の中に消えていった。黒羯羅はかなり軽快そうだった。
外部の者が完全に姿を消した後。
石猴王は数人の兄弟たちを見渡し、六大王の方を向いた。その晒された不気味な人の顔を一瞥し、少し躊躇いながら言った。
「彼らはあなたに従って来たのだろう。見送りに行かなくていいのか?」
六大王は無関心な声で低く応えた。
「いや、来る前にその件は話してある。宴の取り決めも済ませてある。それに先ほど別れも済ませた。また後日訪れるだろう、その時に改めて返礼すれば良い」
石猴王は頷き、考えるような表情を浮かべた。問題はなさそうだと思い、それ以上追求しなかった。本能的に何かおかしいと感じつつも、深く考えることはなかった。
半身人大王が興奮した様子で言った。
「闇の伽耶を見せてくれよ!こんな伝説の超レアアイテムは初めて見るんだ。近くで見せてくれよ!」
石猴王は仕方なく封魔球を差し出し、半身人が気をつけるように注意した。
先ほどの黒羯羅の警告を思い出し、一人の石猴長老に指示を出した。
「よく我々の戦士たちの身体を検査してみよ。何か問題がないか確かめるのだ。重点的に心臓を調べよ。まずは血常规と生化血液検査から始め、全身検査の費用は内庫から出せ」
「問題がなければそれで良し。あった場合は、手段を選ばずに治せ。族の戦士たちは我が一族の基幹だ。決して粗相やおろそかがあってはならぬ」
長老は承諾し、数匹の医療知識のある石猴と数人の石猴長老を連れて検査に向かった。一隊の武士猿たちが整列して検査を受け始めた。
毛人大王が涎を垂らしながら石猴王の隣で人間の捕虜を指さした。毛からよだれが垂れ、涎を垂らす様子だった。
石猴王はため息をつき、甘やかすように言った。
「十匹だけだ。いや、二十匹までだ。残りはまだ使い道がある。人間との交易に使えるかもしれん」
「だが、仮に人間の世界に戻したとしても、彼らの居場所はもうないだろう。無理に留まろうとしても、非難の声と異様な視線に囲まれるだけだ」
山羊の頭蓋骨の魔法使い——ネフィリム種族の大王が補足した。その声は深い諦念と万物を見透したような冷たさを帯びていた。
「人間というのは極めて排他的な種族だ。自分たちと異なる存在を目の当たりにすると、心の底から恐怖が湧き上がる」
「支配欲と掌握欲が彼らを操り、異物を排斥し、自らを他者の上に置こうとする。たとえかつて同類だった者たちであっても、戻ったところで、他の価値を示せなければ、上層部によって終身隔離されるか、研究機関の貴重な実験素材として実験に供されるだろう」
「公敵の社会であれば、少なくとも珍しい動物やペットとして生きていける。人間と同じく、高等公敵には小動物を飼育する習慣がある。このように元が人間だった珍種であれば、飼い主にもっと大切にされる。飽きられるまでは、かなりの数の人が引き取りに名乗り出るだろう」
魔法使いの言葉は冷酷かつ残酷だったが、客観的な観点を伝えていた——フニーアたちがもはや現在の人間社会に溶け込むのは難しい、ということを。
毛人大王はこの場所の主の許可を得ると、軽やかな足取りで鉄格子の檻に近づいた。
細長い二股の舌を口の中でくるくる回し、伸ばしては空中で振り回す。毛人大王は眼前の檻の中の捕虜たちを貪るように見つめていた。
たとえ彼らが怪物のような外見に変わり果てようとも、千奇万怪の公敵を食料とするトッププレデターである毛人大王の目には、ただ形の変わった上等な食材に過ぎなかった。
毛人大王の漆黒の瞳が檻の中の人間の捕虜たちをじっと見つめていた。嗜血の光を放ち、唇を舐めながら低く呟いた。
「いただきます、可愛い食材たちよ」
一筋の舌が、長く溜めていた力を解放して弾き出される毒蛇のように、一人の捕虜の体を貫いた。その者が恐怖の極致で見開いた目の前で、舌は命中した。捕虜の体の異化の度合いはフニーアより数段高く、半身が異形の怪物と化していた。
毛人のしなやかな舌が彼の体に巻きつき、引き寄せて毛人大王の元へと急速に引きずっていく。捕虜は恐怖と戦慄の悲痛な悲鳴を上げた後、毛人大王の深淵のような大口によって首と頭の大半を噛み砕かれた。
一瞬で脳漿が飛び散り、地面に弧を描いて広がった。大型肉食動物が獲物の骨肉を噛み砕く靡靡たる音が現場に響き渡り、耳障りで、人間の心に死への恐怖と戦慄を呼び起こした。
毛人大王は人間と変わらぬ細身で軽やかな体でありながら、獅子や虎のように大きく口を開けて捕食できるのだ。その舌はカメレオンのように溜め込んで弾き出すことができる。
その巨大な咬合力は鋼鉄をも貫き、鋭い歯は利器と比肩する。今、彼は口の中の美味を味わいながら、口元からは桃色と血色の混じった液体を垂らしていた。
檻の中の者たちはこの恐ろしい捕食の光景を目の当たりにして、心は一気にどん底に落ちた。心理的な防衛ラインを完全に打ち砕かれた者もいた。両手で頭を抱えて地面に跪き、崩れ落ちて悲鳴を上げる者。巨大な精神的刺激と恐怖に直面して身心が麻痺し、泥のように崩れ落ち、呆然と動けなくなる者。まだ恐怖に完全に圧倒されず、生存本能から毛人が食事中に背後から檻の扉を抜け出そうとする者もいたが、すぐに毛人に発見され、一撃で命を奪われ、そのまま口の糧となる——
突然、毛人大王が何かに気づいたように、鼻を激しく動かし始めた。彼は一時的に捕虜たちを放っておき、ある方向に目を向け、まっすぐに歩いていった。
周りの者たちは慌てて道を空けた。数歩で、毛人は仄暗の前に立った。
仄暗の巨大なキメラのような巨大な複合生物の外見を見て、毛人は思わず感嘆の声を上げ、手を伸ばしてまさぐった。
美食の経験が豊富な彼でも、こんな奇妙なものは見たことがなかった。これを競売場に出せば、奇妙な収集癖を持つ者たちが大金を投じるだろう。
毛人の枯れ枝のような細い三本の指が仄暗の体をなぞり、体の輪郭に沿って滑っていく。仄暗の身から漂うこの誘惑的な不思議な肉の香り——腥臭の中にねばついた腐敗の匂いを混ぜた——を嗅ぎ、口のよだれがしたたり落ち、透明な水滴のようによだれが唇の端から絶えず落ちた。
毛人大王の目は今や仄暗だけに釘付けだった。他のすべてを忘れ、黒豆のような小さな目をまん丸に見開いていた。
「食いたい……食いたい……お前の肉は、すごく旨そうだ。他の奴はもういい、お前の肉だけでいい。早く、一口食わせろ」
毛人が飛びかかろうとしたが、仄暗の放った名状しがたい触手に阻まれた。
「それはなりません。純度が低すぎます」
仄暗のラッパ状の爛れた唇が蠢き始め、重低音のような擦れる低く嗄れた声が喉の奥から発せられた。断固とした決意のこもった声だった。
「大王がどうしても私の肉を食いたいとお望みなら、お好きに召し上がるがよろしい。ただし、大王の口に入るのはただの腐った肉と臭い肉であり、決して珍味佳肴などではありません」
仄暗の視線は周囲に向けられた。巨大な拳ほどの大きさの目に涙が浮かび、悲憫の情がその中で渦巻いていた。
「なぜなら、私は限りなく強い憎悪を抱き、今まさにこの同胞たちの極限の苦しみを感じているからです。そのため私の肉質は極度に劣化し、世界で最も不潔で腐敗した汚れ肉と化しているのです」
「大王がお望みの絶品の味は現れず、ただの吐き気を催す嫌な味覚があるだけでしょう」
「もし私の純度が最も高い時の極致の味を楽しみたいなら、大王が今なさるべき方法はただひとつ。すなわち、私の肉質が劣化するのを防ぐことです」
「つまり……お前の言いたいのは、彼らを見逃せば、お前の肉質が悪くならないということか?そういうことか?」
毛人大王は探るように言い、枯れ枝のような三本の指を口元に当てながら、仄暗の言葉に沿って尋ねた。
「一流の美食家は食材の質を重視し、量を軽んじます。美味に対して最も崇高な敬意を払い、極上の味を味わうためには命を賭けることさえ厭いません」
「しかし大王は、そこら中に転がる低劣な食材ばかりに目を奪われ、真の意味での極上食材を見過ごしている。大きなものを失って小さなものを得ており、極上の珍味を味わうために何の代価も払おうとしない!これは愚の骨頂です!ましてや大王の美食家としての地位にまったく相応しくありません!これは冒涜であり、汚辱であり、汚染です!」
毛人大王は目を見開き、まるで仄暗に叱咤されて目覚めたかのようだった。そして、ようやく悟ったように言った。その声はとても小さかったが、はっきりと皆に聞こえた。
「確かにその通りだ。もし何の代価も払わずに、お前のような極上美食を味わうことができるなら、それは美食への冒涜であり侮辱である」
仄暗はさらに導くように続けた。
「同胞のために、私は死ぬことができる。これは大義を弘める道です」
彼は自嘲気味に言い、自己卑下と自暴自棄を帯びた口調だった。
「どうせこんな姿になった以上、私に生きる勇気など残っていません」
彼は毛人大王をまっすぐに見据え、大義凛然として言った。たとえ自らの命を犠牲にしてでも同胞を救おうとする正義の信念が、瞬く間にその場の全員を感染させ、空間中に広がっていった。
この生死をも恐れない気節と、己を犠牲にして人を助ける高尚な情操は、多くの者を密かに恥入らせ、自らを省みさせた。かつて相手が浮浪者であるという理由で軽蔑し辱めたことを悔やんだ。
「私のたった一つの命で、ここにいる数十の命を救えるなら、それは極めて正しく合理的なやり方です。もし大王が、私の微力な体で同胞を生かす代わりにするという私の提案をお認めくださるなら、どうか速やかに手を下してください」
彼は話の方向を変え、自らの真意を明かした。周囲の者たちの目には、彼らの生存確率を少しでも上げようと考え出した策に見えた。
「ただし、極上の食材の真の味を楽しみ、美食の真髄を悟るためなら、私に提案がありますいっそ巨大な混合刺身を作りましょう。私と数人の同胞を刺身の材料とし、全場の公敵を分け合って饗宴とするのです」
瞳を輝かせてこれらの言葉を言った後、仄暗は正気の表情を浮かべ、怪物のような体を動かして、背筋を伸ばして座り直した。ちょうど、死地へ赴く武士が死に際に告げる言葉のように、隠しようのない悲壮と慷慨が彼の中に余すところなく表現されていた。
周囲の者は誰もが感動し、涙を流す者もいれば、恥じ入る者もいた。経験豊かで人情に精通した公敵の大王たちでさえ、驚愕や衝撃の表情を浮かべていた。
人心が古くならず、騒がしいこの時代にあって、まだ集団の利益のために個人の利益を犠牲にし、皆のために己の命を投げ出す者がいる。この純粋な善良さと無私の献身精神は、皆に大きな衝撃を与えていた。
「まったく愚かな奴だ。この世に自分の命ほど大切なものはない。国家の利益だろうが集団の利益だろうが、自分がしっかり生きていることには敵わない。生きていてこそ全てを享受できる。死んでしまえば何もない」
後方で傍観していた半身人大王は、非常に軽蔑した嫌悪の表情を浮かべて言った。仄暗の身を捧げる行為に対する嫌悪感が満ちていた。
オウナイズアン、すなわち山羊の頭蓋骨の魔法使いが幽幽と口を開いた。感慨無量と冷静な知性が混ざり合った声で。
「人間という種族は、極めて情緒的な動物だ。また、極めて自己欺瞞に長けた生物でもある。避けがたい死に直面した時、彼らの体内に残る先祖の遺伝子が活性化する。それは太古の昔、人間の先祖が大型猛獣を狩る際、絶体絶命の状況で誰かが殿を務める必要が生じた時に生まれた自己感動の不良遺伝子だ」
「殿を任された者は『種族の存続のため』『同胞のため』と叫んで毅然と死地へ赴く。生き残った者たちは自己感動し自己欺瞞してこれを大義に仕立て上げる。生物の本能が存続と繁殖であるという事実にはまったく目を向けずに」
「この行動は、自分を感動させ皆を感染させると同時に、劣った遺伝子を後世に残し、子孫たちにこの利己的で集団に有利な悪質な行動を続けさせるよう警告するためのものだ」
オウナイズアンは冷たく言った。檻の中の仄暗の行動と人々の反応を見つめ、非常に冷静に評価していた。
「なるほど、つまり今、涙を流し声を上げて泣いている者たちは、演技をしているのではなく、本当に感動しているのだ。ただし、それは種や人間の大義のためではなく、彼らの脳が騙しているだけだ。個人が集団のために犠牲を払い献身する精神だと錯覚させている。代々受け継がれてきた人間の劣悪な遺伝子が背後で作用しているのだ。実に想像しがたい偽りの種族だな」
「そうだな。遺伝子は利己的だからな。これは弱小な人間が太古の昔から受け継いできた集団的記憶だ。彼らは先祖と同じ行動を取っているに過ぎない。自分たちの生存と繁殖の可能性を高めるために。もしかすると、このパフォーマンスで我々の同情を引こうとしているのかもしれない。見ろ、もう一人の愚か者が騙されているぞ」
「これは不気味の谷効果と同じで、人間の遺伝子プールに深く刻まれている。あの流れる涙と今の感動は、すべて彼らが種族と個体を存続させ、自己を麻痺させ、自己の罪悪感を薄めるために行う最終的な生物学的ストレス反応だ」
数人の公敵の大王たちが、口を揃えて檻の中で起こっているすべての不条理と現象を暴いていった。
しかし毛人大王はそんなことを考えてはいなかった。今、彼は熱涙を流していた。口の中の食べ物でありながら、このような自己犠牲の大義凛然たる精神を持っていることに。
それは本当に彼を感動させていた。




