第十章:灵魂战斗
「一の突き!」
暗技の手にある剣は、あらゆるものを貫く神の弓矢と化し、豹頭の戦士の悍ましい視線を浴びながら、確かな腕によって一条の流星と化し、李沐子の心臓目掛けて襲いかかる。まさに破竹の勢いであった。
李沐子はそれをまたもや正確にガードする。無咎の刃でまずは長剣の激しい勢いを受け流し、そのまま絡みつくような巧みな力で極小の物理バリケードを起こす。
「ッ!」
長剣が無咎の刃に弾かれ、清らかでいてどこか悲しげな音を立てる。その音色は、まるで透明な少女が魂の深みから紡ぎ出すような、美しい調べだった。
「二の突き!」
「三の突き!」
長剣は刃先をかすめ、李沐子の脇を通り過ぎていく。短刀と卓越した受け流しの技によって、すべてがいなされていく。何度繰り返しても同じだ。暗技の攻撃は李沐子に一切の実質的なダメージを与えられず、体力すらもほとんど削れていなかった。
ついに暗技が大きく上段から斬り下ろした隙に、体の大きな無防備な部分が露わになった。李沐子は反撃のチャンスを見出す。
豹頭の戦士が体の隙を見せ、長柄の武器を引き戻せない状態で、全身が攻撃範囲に晒されている。
李沐子は即座に間合いを詰め、双眸に鋭い光を宿し、手にした短刀を小気味よく連続突きに繋げる。狙うは敵の腹部。
もしこれらの一撃が急所に命中すれば、眼前の敵は一時的に戦闘不能になるだろう。たとえ鍛え上げられた武人であろうと、生理的限界を超えた激痛は耐え難く、麻痺に陥るはずだ。
隙を晒した豹頭の戦士は、李沐子の行動を止めようとしなかった。また、驚愕の表情も浮かべない。ただ淡々と、李沐子の一挙一動を静かに見つめていた。まるで無駄な努力を見るかのような、無関心な表情で。
飛蛾が火に飛び込むように。
李沐子が驚愕したのは、そこでだった。起こるはずのことが、何も起こらなかったのだ。
短刀が豹頭の革鎧に触れた瞬間、なぜか弾かれてしまった。革鎧の表面には、巨大な斥力と無類の弾力が存在し、短刀の前進を阻んでいたのだ。どれだけ力を込めても変わらない。李沐子は攻撃の勢いを一旦収めるほかなかった。
李沐子は体勢を立て直し、軽やかに後方へ数歩下がり、再び武人・暗技との間に安全な距離を取る。不意の追撃に備えてのことだ。
暗技が体勢を整え、長剣を自分の前に水平に構える頃には、李沐子もまた次の攻撃の準備を整えていた。その時、暗技が口を開いた。
「先ほどの一撃、もし他の部位を狙っておられたなら、あの瞬間に勝負はついていたかもしれませんな」
空いた手で自分の革鎧を撫でながら、暗技は得意げな表情を浮かべ、落ち着いた口調で言った。
低く抑えられた声が喉の奥から絞り出される。それは李沐子への説明であると同時に、事情を知らぬ者への解説でもあった。武人の誇りとして、暗技は決して己の装備の詳細を知らぬままに対戦相手を死なせることを良しとしなかったのだ。
「これは我が武人として幾多の生死をかけた戦場を潜り抜けてきた『+16の犀鎧』です。並の武器では容易に破れません。強力な防御補正と確率補正が付与されております」
「そちらの短刀は、たしかに良くできた上等な武具ではありますが、それでも我が革鎧の防御を突破することは叶いません」
「武器の優劣で敗れること、それは技の高低によるものではなく、武人としての大忌です。また、防具の精錬さを利用して決闘を汚すことは、武人としての最大の恥辱に他なりません」
「ゆえに、我はもう一度だけ最後の勝負を挑ませていただく。自らの優位を捨ててです。もしこの一撃で貴方を仕留めきれなければ」
「我は潔く投降し、武人としての名誉を捨てましょう」
李沐子は何も言わず、ただ短刀を暗技に向け、両目をぎらつかせて見つめた。
それを見た暗技は、会心の笑みを浮かべ、李沐子の意志を理解した。
そして即座に戦闘態勢を取る。長剣を右手ごと真後ろに引き、前屈みの突進姿勢をとる。左手を眼前に置き、攻撃距離を測るための照準とする。
獣の瞳が、左手の延長線上にある李沐子を捉える。瞳孔は細く絞られ、全身からは濃密な戦意が溢れ出している。
暗技の左腕と右腕は同じ水平面上に置かれ、その構えは奇妙でありながらも、異様な圧迫感を漂わせていた。普段は腰に巻かれている斑黄色の尾も、今は解かれて鉄棒のように一直線に垂れ下がっている。
李沐子は、その鋭い殺気と清らかな武人の闘気を感じ取った。おそらく相手は、すべての力をこの一撃に込めて、一瞬で決着をつけるつもりだ。
戦いは、電光石火のうちに終わるだろう。
この武人同士の極限の挑戦に対し、李沐子も短刀を握りしめ、深く息を吸い込んだ。瞳に宿る紫色の輝きは濃くなり、いつの間にか口元には微かな笑みが浮かんでいた。相手がここまで熱く誘ってくるのなら、応じないわけにはいかない。
一対一の決闘。それはまさに彼の望むところだった。
李沐子と暗技は視線を交わし合い、相手の目に溢れんばかりの闘志を見て取った。
他の公敵たちは、いつしか息を潜め、戦場を李沐子たちに委ねていた。辺りは一瞬にして静寂に包まれ、ただ公敵たちの長く低い呼吸音だけが響いていた。
誰かが突然、鼻がむず痒くなり、抑えきれずにくしゃみをした。その音が、この空間の静寂を打ち破る開始の合図となった。
李沐子の瞳孔が収縮し、全身が緊張に包まれる。
暗技の背後に隠されていた鋭利な剣が、主人の高速移動に伴ってその姿を現し始める。二人の距離が縮まるにつれ、それは最初の緑豆ほどの大きさから、やがて大豆ほどになり、どんどんと大きくなっていく。
視野の片隅にあったそれは、やがて李沐子の視界のすべてを占めるまでに広がった。
李沐子の目には、一条の白い流星が高速で迫るのが映った。身体は、攻撃が来るのを視認するよりも先に、すでに対応の準備を整えていた。
短刀と流星が激突する。李沐子は手が滑り、手のひらに激痛が走るのを感じたかと思うと、握力が失われた。視界は流星の白い光芒に完全に覆われ、その親しみと見覚えのある感覚に、一瞬意識が遠のく。心の中には、一抹の感動と畏敬が湧き上がり、意識が無限の闇に落ちていく最中、最後に一つの疑問が浮かんだ。
――俺は、負けたのか? 暗技に、彼の秘剣に敗れたのか――
体内の血液と共に、生命力が急速に失われていくのを感じる。李沐子は焦点の定まらない目をして、黒い伽耶の舞台上に倒れ伏していた。首元には無残な傷跡があり、そこから鮮やかで熱い血が大量に分泌されている。それこそが、李沐子の生命と惨敗の象徴である鮮やかな赤だった。
彼は暗技のあの流星の一撃を受け止めきれなかった。だから、この惨めな姿になったのだ。
朦朧とする意識の中で、何かを口に含まされた感覚があった。その後、視界は果てしない闇へと落ちていき、術法の身代わりすら発動する間もなく、意識は完全に途絶えた。
再び目を開けると、李沐子は十字架に縛り付けられていることに気づいた。両手両足は広げられ、人体は自然に「X」の字を描いている。
生存本能が、李沐子に助けを求める叫びを促した。しかし喉から出てきたのは、嗄れた押し殺したような「うああ」という声だけだった。空気が漏れる風船のように、単調な音しか出せない。傷ついた喉では、完全な言葉を発することはできなかった。そこでようやく、先ほど流星の秘剣で喉を切られ、舞台の上に倒れたのだと自覚した。
では、今このように生きているのはなぜか? 彼らが親切にも傷を治してくれたのか?
そして心臓のあたりから感じる、突き刺すような痛み。それが、事態が尋常ではないことを告げている。
黒羯羅たちは十字架の周りに集まり、面白そうにその獲物がもがく様子を眺めている。嘲るような、あるいは好奇心に満ちた目で、李沐子を値踏みしている。
李沐子は、自分が何か必死の状況に陥っていることを悟った。このまま抵抗しなければ、本当に彼らの消耗品として消されてしまう。
そこで、さらに激しく体を動かした。十字架に固定された革ベルトと、暴れる手足が、革と骨肉が擦れる激しい音を立てる。その時、黒羯羅がゆっくりと歩み寄ってきた。両腕を組み、重たげな胸を持ち上げ、悪魔のような美しい曲線を描いている。黒い紗の後ろに隠された美しい瞳を、李沐子に向ける。
彼女が紅い唇をわずかに開き、玉のような唇が動く。しかし発せられた言葉は、蛇のように惡意に満ちていた。それは李沐子の心を激しく打ち、彼に冷や汗を流させた。
「少年、あなたはもうすぐ死ぬわ。しかも、とても惨めで悲しい方法でね」
「でも、あまり悲しまないで。そんなに悪いことじゃないのよ。あなたの魂も肉も、すべて私たちの復興の大業に、合理地に利用されるのだから。偉大なる事業のための、一片となるの」
彼女は両腕を広げ、空中で李沐子を優しく撫でるような仕草をする。まるで李沐子を腕に抱きしめ、最も細やかな慰めを与えているかのように。
李沐子はさらに激しくもがき、口からは「ううっ」という声を発し続け、目には恐怖の色が溢れていた。
黒羯羅は冷ややかな声で、周囲に控える黒衣人たちに冷酷な命令を下す。
「『飱喰の共宴』の準備を始めなさい。この霸下学府の王儲を、完全に解離しなさい」
そして彼女は後方で待ちわびる公敵の大王や小公敵たちに向き直り、和やかな笑みを浮かべた。
一人の小公敵の王子が、不満を隠さず口を開く。
「本当に、この人間を殺すのか? 生かしておくわけにはいかないのか?」
彼は、公敵の大王たちと黒羯羅が試合の前後で交渉し、多額の代償を払って李沐子の処分権を買い取ったこと、そして李沐子が倒れた後、すぐに現場を整え、何か神秘的な儀式を準備しているのを見ていた。
豚頭の大王、山羊の骨魔法使い、猿猴の大王など、公敵の大王たちは悠然と後方で見物し、秘蔵の酒を味わっている。
山羊の骸骨の魔法使いは、李沐子に全屍を残してやれと呟いている。魔法実験にそのような死体が必要だからだ。他の補償を得てはいたが、やはり李沐子が忘れられないらしい。
豚頭の大王は、ブーブーと鼻を鳴らしながら、これで魔幻伽耶を手に入れれば、急速に強くなるのも夢ではないと言う。彼は他人に魔幻伽耶の使用枠を譲る約束をまだ覚えており、決して約束を破るような男ではない。
黒羯羅たちは、どうやら闇の伽耶の使用権を交換条件として、李沐子の人身処分権を手に入れたようだ。
このことが、彼ら二世たちには不満でならなかった。まるで自分たちが目をつけたものを、他の者に強引に奪われたような感覚。そして、実際の利益配分に自分たちが関われなかったことへの、底知れぬ喪失感。
黒羯羅はほほえみながら言う。
「もし皆さまがたが、この取引にご不満をお持ちでしたら、今後また多くの外界の人間をお送りいたします。中には山を断ち海を割るほどの強者も含まれております。必ずやご満足いただけることでしょう」
小公敵の王子は少し迷い、顔を上げて突然尋ねた。
「じゃあ、こいつが死ぬ前に、彼の『羯磨』が何か教えてもらうことはできないか? 俺はまだ、王儲の羯磨がどんなものか、この目で見たことがないんだ」
その言葉に、黒羯羅は断固として拒否の言葉を返す。声は清らかで甘やかだが、否定の態度は極めて明確だった。
「ダメよ〜」
「絶対にダメ〜」
「そんなことは、取り決めで禁じられているの。この少年の潜在能力をこれ以上探ったり、開発したりすることも、彼に関する一切の情報を他に漏らすこともね。私たちがこの紫眼の人間の少年の真の価値を見抜き、長年待ち望んだ目的を達成するために彼を利用しようとしているからこそ、模造の闇の伽耶といった貴重品と引き換えに、あなたたちと取引をしたの。だから、とても残念だけど、あなたたちの望みを叶えるわけにはいかないの」
断られた小公敵の王子は、まだ納得がいかない様子で、未知の存在に価値があるのかどうかを疑い、好奇心を込めてもう一度黒羯羅を見つめた。
「そ……それじゃあ、あの小僧は、いったい何者なんだ? お前たちは、彼のどこに目をつけて、そんな大金をかけたんだ?」
彼は非常に不可解に思っていた。自分たち小公敵は、最初はただの意地の張り合いで、互いに後れを取りたくないという理由だけで、李沐子を賞品の対象にしていた。そのきっかけは、単に彼の美しい紫紺色の瞳だった。
その後、彼が霸下学院の学生であり王儲だと知って、少しは高く評価するようになり、彼を巡る争いも熱を帯びていった。
そして、李沐子を巡る争いは白熱し、その雰囲気を一気に高みへと押し上げたのは、紛れもなく黒羯羅だった。彼女が御前試合を提案し、魔幻伽耶を持ち出したからこそ、事態は制御不能に発展し、今の有様になったのだ。
小公敵は、どこかおかしいと感じていた。具体的に何がとは言えないが、すべてが黒羯羅の計算の内にあるような気がした。これまでのことも、今のことも、彼女が最初から李沐子を狙って現れたように思えてならない。彼女が苦心して手に入れようとしているものは、結局のところ李沐子という人間そのものなのではないか。
彼は、その奇妙な考えを抱かずにはいられなかった。
しかし、小公敵にはどうしても理解できなかった。李沐子は確かに希少な資源ではあるが、そこまでして罠を仕掛ける価値があるとは思えなかったのだ。
山羊骨面の魔法使いが実験材料として強く欲しがっているのを除けば、他の大王たち、例えば豚頭の大王や猿猴の大王、毛人の大王などは、李沐子をどちらかと言えば「貴重品」ではなく「珍品」として見ている。なくてはならないものではなく、単に珍しいから興味を持っているだけだ。だからこそ、黒羯羅の提案を簡単に受け入れて交換に応じたのだ。
しかし黒羯羅は、違う。彼女は李沐子でなければならない、絶対に彼を手に入れなければならないという、切迫した必死さを感じさせた。まるで彼女たちこそが、このために李沐子を狙って来たかのように。
そう考えた時、小公敵は自分の考えが荒唐無稽すぎるのではないかと思った。最近、幻想小説を読み過ぎたせいで、妙な想像をしてしまったのだろう。考え過ぎだ。陰謀論がそこら中にあるわけがない。単に彼女たちがたまたま李沐子を必要としていて、魔幻伽耶を残すために大金を惜しみなく使っただけのことだ。もっと深い理由などあるはずがない。
首を振りながら、それでも具体的な理由には興味があった。小公敵は黒羯羅を見て、彼女がなぜ李沐子に目をつけたのか、彼に何か特別な点があるのかを聞こうとした。
黒羯羅はただ微笑むだけで、正面から答えることも、避けて通ることもなかった。
ただ、その視線は李沐子に向けられ、曖昧模糊とした言葉を、いくつか発しただけだった。
「ふふっ〜 あえて理由を言うならば……紫陽花があまりにも美しいから、というところかしら。うっとりするほど美しくて、抗えなくなって、結局こうなってしまったのよ」
「はぁ!? 何だって!? それ、まともに答えているのか? どういう意味だ? 紫陽花より美しい花なんて、桜や菊、牡丹、チューリップ、梅なんか、いくらでもあるだろうが?」
「うっとりするほど抗えなくなるって、どういうことだ? まさか彼らは筋金入りの花好きで、特に紫陽花に偏った趣味の持ち主ってわけか?」
小公敵が、彼女の言葉に含まれているかもしれない深遠な意味を必死に理解しようとしている間にも、黒羯羅はすでに優雅にその場を去っていた。揺れる黒いスカートの裾が、地面を素早く、音もなく滑っていく。
後に残された小公敵は、その場でただ呆然とするしかなかった。
一本の黒い長い角釘が、李沐子の体を深く貫き、木の十字架に打ち付けられていた。激痛のあまり、李沐子は体をくねらせ、鈍い悲鳴をあげるが、それも虚しい努力だった。
血が黒い釘の縁を伝い、一滴一滴、地面に描かれた五芒星の黒魔法陣の上に落ちる。すると魔法陣の光は一層強くなる。
黒衣人たちは神秘的な黒魔道の典籍を手に、李沐子の周りに集まり、閉じた円陣を組む。そして口々に呪文を唱え始める。
一見すると、何かの儀式のように見えた。
黒羯羅は闇の聖書を手に、非常に敬虔な表情を浮かべていた。まるで宗教の狂信者のように、その頬には不自然な興奮の紅潮が広がっている。
「初めに、闇は水の上を運行していた!」
一本の釘が胸腔を打ち、中の肉ごと貫く。
「闇は言った、『闇あれ』。すると闇があった!」
一本の釘が腹腔を貫き、肝臓のある位置を突き通す。李沐子の眼球は飛び出さんばかりに充血し、あまりの苦痛に幾度も死にかけた。
「闇は言った、『諸々の闇の間に淵あれ』!」
一本の釘が肺に打ち込まれる。
「闇は言った、『地よ、枯骨を生じよ』!」
腎臓に打ち込まれる。
「闇は言った、『天に黒穴あれ』!」
膵臓に打ち込まれる。
「闇は言った、『水は多くの死霊を生めよ』!」
脾臓に打ち込まれる。
「闇は言った、『我々の像に従って、傀儡を造ろう』!」
小腸に打ち込まれる。
「闇の業は終わった。されど安息はしない!」
李沐子の全身は釘で埋め尽くされ、宗教画に描かれる殉教の聖人のように、その姿は痛々しかった。
頭は片側にだらりと垂れ、完全に自我を失っていた。
黒羯羅の顔は紅潮し、呼吸は荒くなっていた。
そしてさらに呪文を続ける。語速が再び速くなる。
「闇の啓示、すなわち闇が彼に賜ったものである!」
釘の後端に刻まれた符文が、一つ、また一つと光を放ち始める。まるで生きているかのように。
「闇なるかな、闇なるかな、闇なるかな。闇は昔いまし、今いまし、後に永くいます無能者である。」
激痛の後に訪れる鈍い痛みで、李沐子は言葉を発することもできない。ただ、体内の何か非常に重要なものが、急速に失われていくのを感じる。それは体中の釘が集まる場所へと流れ込んでいく。
そして、自分の体がどんどん冷たくなり、重くなっていく。心臓の鼓動と、自分の呼吸の音がはっきりと聞こえるほどだった。
「心の貧しい者には災いあれ、地獄は彼らのものだから。我々の日ごとの苦しみを、今日、我々に与えたまえ。我々が人の負債を赦す如く、我々の負債を赦したまえ。我々を誘惑に遭わせず、悪より救い出したまえ。あなたがたは行って、万民を私の傀儡と為せ。」
李沐子はすでにほとんど力尽きており、完全に意識が朦朧としていた。一方、黒羯羅はますます興奮した口調になり、語調を速めて、狂熱的で熱狂的な断固たる勢いで唱え続ける。
「悪しき者の計らいから離れ、悪しき者の道に立つな。内なる国々はなぜ騒ぎ立つのか。闇は我が牧者、我は必ず滅びに至る。闇よ、願わくは、あなたの残忍さをもって、我を滅ぼしたまえ。低き所に住む者は、無能者の火の中に必ず住むであろう。全地よ、闇に向かいて泣け、あなたは闇の王子だから。」
儀式が最高潮に達した時、すべての黒衣人が跪き、祈りを捧げる。
「我らが父よ、偉大なる我らが父よ、どうかあなたの子らに祝福を賜り、深遠なる闇をこの世に降臨させ、運命の三重螺旋の檻を解き放ち、すべての人をあなたの示す至上にして至上の愛の道へと導きたまえ。」
黒羯羅は感激の涙を流し、目尻から流れる涙が大地を濡らす。感動に咽びながら、彼女は低く呟き、胸に十字を切る。
「願わくは、あなたが口をもって私に別れを告げたまえ。あなたの憎しみは死よりも苦いから。私は地獄の荊の花、深淵の毒草、あなたを死へと導く大罪人。あなたの魂と霊が、ここに安らかに眠らんことを。」
最後に、彼女は地面に跪き、頭を深く垂れ、書物を高く掲げる。頭上に掲げ、何か崇高な存在に捧げ、その視線を請うかのように。
しばらく沈黙した後、再び詠唱を始める。
「主よ、どうか私の僭越の行為をお許しください。」
他の者たちも動かずに跪き、同じ祈りの姿勢をとる。
「再び、あなたの御心を行いたまえ。この贄とされた小羊を、天の宮の上に収め、地獄の下に葬り、あなたの目の届くところに置きたまえ。」
「罪は贖われることなく、ただ償われるのみ。」
「たとえそうでなくとも、我々は決して善に仕えはしない。」
「奪うのは闇、返さないのも闇。」
「賢者は心の中で言う、『善などない』と。」
「闇を恐れることは、愚かさの初めである。」
「天にいます我らの父よ、信じる者には災いが伴う。この子は生きていながら失われ、得られながら死に、言葉は肉となり、我々のもとを去ったからだ。闇は世を愛し、その独り子さえも奪い去った。」
「疑いは、恐れるものの実体であり、見えるものの虚無である。あなたがたが悪を行って苦しむなら、逃れることができる。これは闇の目には忌まわしいことである。」
「トビアの悪行、ユディトがホロフェルネスに斬られ、マカバイの背信、愚かさは闇、消えることなし。闇を恐れることは、愚かさの初めである。」
「エノクは闇と共に歩み、モーセは地に降り、エズラの呪い、バルクの歓歌、十二族長の呪い。」
「天国はあなたがたの内にあり、光と闇は通じ合わねばならない。真理は闇、魂の迷い、マリアの沈黙。」
「死の樹の十の深淵、王冠は落ち、愚かさは立ち上がり、誤解は永く、残忍は永く、放縦は永く、醜さは永く、瞬間は永く、辱めは永く、動揺は永く、廃墟は永く。」
「白化は不可、黒化は不可逆、灰化は不可逆、冷化は不可逆、愚者の土、咎神の霊柩、偉大なる父の牧羊犬。」
「白羊は陷落、金牛は揺らぎ、双子は失語、巨蟹は殻を破り、獅子は落魄、処女は汚れ、天秤は傾き、天蝎は永死、射手は迷い、摩羯は崩壊、水瓶は枯渇、双魚は冷血。」
「愚者は終結、魔術師は破滅、女教皇は盲目、女帝は荒廃、皇帝は混乱、教皇は背教、恋人たちは分離、戦車は覆滅、力は臆病、隠者は愚鈍、運命の輪は停止、正義は傾斜、吊るされた者は逃避、死神は来ず、節制は失衡、悪魔は解放、塔は倒れず、星々は堕ち、月は真實、太陽は敗北、審判は沈黙、世界は未完。」
「公案は解けず、座禅は心を乱し、闇心は欲を見、菩提は迷い、涅槃は永動。」
「曼荼羅は砕け、真言は妄となり、手印は散乱し、灌頂は絶え、本尊は倒置。」
「大祓は穢れ、祝詞は呪い、神楽は悲鳴、鳥居は界を破り、神体は離脱。」
「ミカエルは剣を収め、ガブリエルは消息を絶ち、ラファエルは病をもたらし、ウリエルは闇に堕ち、サリエルは来ず、ラミエルは真實、ラグエルは寬恕、ラファエルは守備を放棄し、智天使は愚か、熾天使は冷め、座天使は座を倒し、主天使は権を失い、能天使は力なく、力天使は力なく、権天使は権限なく、大天使は沈黙し、天使は堕落。」
「今こそ、再び救世の旗を掲げ、この楽園の国をすべて此処に葬り、闇の霊を再び世に覆わせよ。」
「聖父よ! 聖子よ! 聖霊よ!」
「我らが無上の至尊よ!」
「我らの父、天の父、偉大なる父、闇の父、三位一体の上父よ。」
「どうか我らに、闇よりも深く、淵よりも暗き祝福を賜れ。」
「我を彼の道に歩ませ、偉大なる運命の奔流を拒絶し、再び讃えられて、大地に降臨させたまえ。」
「人を見下ろす者は必ず滅び、人は高き宝座に座す。先にある者は後になり、地を見上げよ。地獄の盛宴、今ここに始まる。」
「彼らの神は、すなわち彼ら自身の深淵!」
「深淵の下は、すなわち天の上父!」
黒羯羅が最後の呪文を唱え終えると、その顔は涙で濡れていた。涙はすでに面紗を完全に濡らしていた。
彼女は振り返り、優しい口調で公敵たちに話しかけようとするが、発せられた声はやや嗄れ、掠れていた。疲れと倦怠感を帯びた声だった。
しかし、彼女の背後には、もはや人の形を成さぬ肉塊が十字架に縛り付けられていた。巨大な闇が李沐子を覆い、正確に言うならば、彼を抱きしめていたのだ。
巨きな黒袍の主が、そうしていた。その主には顔も姿もない。ただ李沐子を見つめ、彼にそっと、一息の黒い息を吹きかけた。
小公敵たちは、黒羯羅と、その後ろにいる神秘的な存在に、戦慄を覚えずにはいられなかった。たとえ彼らが人間を食い、玩ぶ公敵であっても、この恐怖の光景の前では、臆病になり、弱気になるのを抑えられなかった。
「分食の宴の始まりよ! 今こそ、我らが天上の父と魂の交流を行う宴!」
黒羯羅は涙に濡れ、咽び泣きながらそう言う。そして広大な胸襟を開き、両腕を広げた。
「さあ、今こそ、世界の悪意の依り代を分かち合う時。秘儀は整った。闇の同胞よ、存分に味わいなさい。」
そう言うと、空中に浮かぶ幻の巨大な黒袍の主は、叉のついた古刀を取り出し、李沐子の体に幾つもの裂傷を刻んだ。
不思議なことに、その傷口から流れ出るのは紅い血ではなく、黄金色の輝く気流だった。その黄金の気流は、他の生命体にとって極めて重要なエネルギーを含んでいるようで、その場にいるすべての者の視線を一瞬で引きつけた。
李沐子は腹を裂かれ、腸が引きずり出される。そして空中で、輪を描くような生命の波紋となり、巨大な円盤となって李沐子の頭上数メートルの空を覆い隠した。
七本の菱錐の釘に刻まれたコバルトブルーの光が、ますます強くなる。幽かな青い光は、釘の表面の紋様の溝に沿って、水のような液体の魔力となって流れている。それは李沐子のすべて、彼の『王者としての存在』の根源を集約したものだった。
黒羯羅は身をくねらせて李沐子の下に歩み寄り、彼が極刑に処された哀れな姿に、恍惚とした表情で見入る。そして低く呟いた。
「まったく、なんと美しい、運命的な邂逅でしょう。これこそ、宿命の絡まり合う業縁というものね。」
彼女は涙を噛みしめ、声には感慨と、この世を超越したかのような解脱の響きが込められていた。その目には李沐子が映っているが、まるで現実にはいない誰かを見つめるかのようだった。
「夢を抱きて覇道の理想と王道の夢を語る、預言に謳われた孤高の原人。これこそが、あなたが乗り越えねばならぬ過酷な試練。もし、ここから続く英雄の試練を、見事に打ち破って覚醒することができるなら……いえ、それこそが、何かしらの意味における偉業となりましょう。」




