番外編短編・ブルーハワイ
今、高校二年生の有実だったが、一度もカップラーメンを食べたことがない。ファストフードもそう。ポテトチップスの味も知らない。お手伝いさんが作ってくれたポテトチップスの味は知ってる。
「何この店は。昭和レトロ?」
そんな有実、昭和レトロな自動販売機の店にいた。名前はベンダーショップ・天国。
東京で暮らす有実だが、今は祖父母の家へ来ていた。ゴールデンウイークだし、両親は海外で仕事というのもある。
田舎の祖父母の家で退屈していたところ、この店に来た。元々祖父母が経営していた店らしい。今は別の人に渡っていたが、昭和レトロな自動販売機って何?
「え、ハンバーガー? トーストサンド? 何これ。うどんもそばも自動販売機で食べられる?」
驚きで目が丸くなってしまう。そこそこのお嬢様だった為、カップラーメンもファストフードもポテトチップスも禁止だった有実にとっては全てが未知の世界だ。
誰もいない。母に見つかったら怒られそう。実際、こっそり友達にマックに行こうとしたら怒られた経験もあるが、今は母の目もない。
店には監視カメラもない。近くの道路から車やバイクの音はするが、人の気配は薄い。
背徳心も刺激されてしまう。心臓もばくばくいってきたが、特にかき氷の自動販売機が気になる。
パネルデザインのかき氷、どれも派手。お手伝いさんや母の料理と全く違う色合いだが、惹かれてしまう。
「ブ、ブルーハワイ、いっちゃう?」
中でも一番背徳心をそそるブルーハワイ。ドキドキしながらお金を入れ、ブルーハワイのボタンを押す。
比較的綺麗にメンテナンスされている自動販売機だったが、ボタン周辺は色褪せ、経年劣化が隠せない。それもまた、背徳心をぐいぐい刺激。
「すご、荒くない?」
その上、かき氷は勢いよくカップに注がれていく。もう背徳心マックスだ。真っ青なブルーハワイの色も惹かれて仕方ない。
「お、いただきます!」
しかもたったまま、一口いただく。余計に背徳心が刺激され、美味しい。味自体はたいしたことない。有実の家の近所にある専門店のかき氷のほうが圧倒的に美味しいが、そこで背徳感は味わえない。
こっそり食べるブルーハワイ。このシチュエーションも最高。頭もキンとしてきたが、夢中で食べてしまう。
気づくと完食していた。カップの中は空っぽ。冷たいものを食べたせいか。それとも添加物に免疫がないせか不明だが、お腹も少しキリキリと痛いが、それも、まあ、悪くない気がしていた。
「たまには冒険してもいいでしょう?」
かき氷の自動販売機に問いかける。答えはないが、まだ有実の心臓はドキドキしていた。




