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昭和レトロ自販機来客簿〜迷えるお客様の癒しの夕食〜  作者: 地野千塩


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番外編短編・キャベツ

 夫の転勤に伴い、とある田舎に暮らしてはいたが、毎日つまらない。


 家の周辺は山、田んぼ、畑ばかり。確かにネットスーパーもあるし、病院や子供が通う中学もあるし、車があればそんなに不便でもないが。


「た、退屈ー」


 思わず成田七子はつぶやく。今はちょうど家事が終わり、ぽっかりと暇。今日はパートもなく、スキマバイトをあさってもいい求人がない。


 飼い猫のスズもゴロンとしている。黒猫だったが、最近はぽっちゃりししてき、何か雰囲気がだらしない。スズもこの田舎暮らしに退屈しているのかも。


「こんな田舎でもなんかないかな。お祭りとかやってない?」


 だらんとしているスズを横目にしながら、スマホで検索していると、この町に奇妙なコンビニがある事を知った。


 無人の二十四時間営業もコンビニ。こういうと、最先端の無人コンビニみたいだが、店の雰囲気は寂れ、昭和レトロ風。店の商品は昭和レトロ風な自動販売機で提供され、ラーメン、うどん、弁当、ハンバーガーなどその場で食べられるらしい。


「へぇ、昭和レトロね」


 デザインもポップかつ渋め。なんとも言えない哀愁が漂う。ギリ昭和生まれの七子。生まれる前の時代にタイムスリップした感覚もした。単にネットで見ているだけだが、気になる。


 自転車に乗り、そのコンビニに行ってみる。店名はベンダーショップ・天国というが、さて、どんな天国があるのだろう?


 昼下がりに行ったせいか、他の客はいない。ネットの情報通りに昭和レトロな自動販売機が並び、ちょとした博物館のような趣きもある。


 大切にメンテナンスされてきたんだろう。確かにお弁当の自動販売機は錆や傷もあったが、他の自動販売機は塗装も塗り替えられ、綺麗だ。清潔感というよりは、人の手で大事に扱われてきた歴史が滲んでいる。


 店の壁には地図や変なポスターもある。その雑多な雰囲気も、昭和っぽいではないか。


 しかも野菜も売られていた。野菜は小松菜、キャベツ、じゃがいも。雑多に段ボール箱に入っていたが、一袋全部百円。お金は貯金箱に売れて支払うシステムだった。田舎によくある無人野菜販売の簡易版だろうが。


「そんな性善説でいいわけ?」


 最近は野菜泥棒や闇バイトなど、この田舎も治安悪化がニュースになっていたのに。監視カメラすらついていない。都心ではスイーツやラーメンの自動販売機の無人店舗に行ったことがあったが、監視カメラがついていた。それでも、強盗被害に遭ったというニュースも見たことある。


「こんなんでアリなの?」


 七子も戸惑うほどだったが、気が抜ける。実に田舎らしい。退屈な田舎暮らしだったが、こんな部分がけっこう楽しい。


 その後、ツナマヨのトーストサンドを購入し、その場で食べた。チープな味わいだ。アルミホイルに包まれているにのも、素朴すぎるが、これはこれでアリかもしれない。


 結局、野菜も買って帰った。ちょうどキャベツも切れかけていたし、グッドタイミングだ。


「こんな貯金箱でお金入れるだけでいいのかね?」


 首を傾げつつも、貯金箱に百円玉を入れる。チャリンと音が響き、これで支払い完了だ。


「本当に本当にこんなんでいいの?」


 若干、腑に落ちないが、手のひらには大きなキャベツ。ツヤもあり、緑色は生命力が溢れてる。無農薬かも。スーパーのキャベツよりちょっと大きめ。


「まあ、それでもいいか?」


 さて、このキャベツで何を作ろう。サラダでもいいし、ロールキャベツもいい。焼きそばやお好み焼きも美味しそう。


 いつもは献立を考えるのも面倒だったが、美味しそうなキャベツが目の前にある。こういう時は別だ。

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