表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『異世界転生してみたら、何もおかしくない世界のおかしい国名に俺だけが困惑している』  作者: スコ平おじさん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
11/15

第十一話 生命線の切り売りと、静かなる目潰し

第九弾となるスレッド『戦争なき絶滅――超高速の少子化という不妊化プログラムの正体』を投下した翌日、学校での空気は、目に見えて異様なものへと変わっていた。


朝のホームルーム。担任の山崎先生は、俺と御剣の顔をまともに見ようとせず、怯えた声で事務的な連絡だけを告げた。


「佐藤、御剣。お前たち……今週の土曜日、保護者を交えて校長室で三者面談だからな。遅れずに親を連れてくるように」


親への圧力、それによる退学処分をチラつかせた大人の陰湿な嫌がらせ。

文科省の成瀬の買収アメを大笑いして蹴り飛ばしたことへの、国家権力からの明確な「ムチ」だった。


さらに、嫌がらせは現実だけにとどまらなかった。

放課後、誰もいない教室でノートPCを開き、掲示板にログインした瞬間、俺と御剣は画面を睨みつけた。


「……スレッドが、まともに開かないわね」


御剣の言う通り、俺たちの『事実陳列』のスレには、数秒ごとに何万件もの無意味な文字列や記号が猛スピードで書き込まれ続けていた。

サーバーに過剰な負荷をかけて掲示板ごと機能停止に追い込む、プロによる力技のサイバー攻撃。

大人が本気で、俺たちの「口」を塞ぐための静かなる目潰しを仕掛けてきたのだ。


「生ぬるいハッタリも買収も通用しないと分かって、ついに力ずくで事実を埋め立てにきたか」


「ええ。でも、そんな低俗なノイズで事実が消えると思っているのが滑稽だわ。大人がそこまでして私たちの目を逸らさせたい『次の事実』を、今すぐネットの海へ投下してやりましょう」


御剣は冷徹な怒りを燃やし、今回は自衛隊のデータではなく、国会で可決された本物の「法律の原文」と「行政の公開資料」のファイルを画面に展開した。


攻撃のノイズでブラウザの投稿画面は完全にフリーズしている。普通なら手も足も出ない状況だ。だが、前世でMS-DOSコマンドを打ち込んで育ち、ネットの黎明期からその裏側を見てきた俺にとって、こんなものは障壁にすらならない。


「ブラウザでページを開こうとするから大人のノイズに巻き込まれるんだ。文字データだけのパケットにして、サーバーのAPIへ直接コマンドを流し込む。通信のミリ秒単位の一瞬の隙間があれば、これで投稿できる」


俺はターミナル(黒い画面)を開き、キーボードを電光石火のスピードで叩いた。文字だけの暗号化パケットが、混雑をすり抜けてサーバーの心臓部へと一瞬で突き刺さる。


管理人IDによる第九弾となるスレッドが、サイバー攻撃の濁流を真っ向から突き破ってネットの海へ撃ち込まれた。。


『オキュパイドジャパンの事実陳列』

『第九弾:生存インフラの切り売り――水道を外国に差し出す法律のバグ』

大規模な荒らしを突き破り、俺たちは一切の感情を排した「生命線の事実」を陳列していった。


【1:我が国『オキュパイドジャパン』では、人が生きていくために絶対に不可欠な命綱である『水道(命の水)』や『電気』といった生存インフラの運営権を、海外の民間資本(外国企業)に売却・参入させる法律(水道法改正など)が、国民にほとんど周知されないまま次々と可決されている。】


【2:水や電気は、他国であれば安全保障の最重要拠点として国家が厳重に管理するものだ。しかしこの国では、インフラの老朽化や財政難を口実に、外資への切り売りを政府自らが歓迎している。これは、空や金だけでなく、国民が生きるための『生存の権利』すら外国に明け渡す行為である。】


【3:もし、これらの命の蛇口を握る外国企業が、自国の利益のために料金を何倍にも引き上げ、あるいは有事の際に供給を停止した場合、我が国の国民には拒絶する権利すら残されていない。これが、内側からすべてを買い叩かれている我が国の、現在進行形の不都合な真実である。】


【4:これは未来の予測ではない。すでに【宮城県】では全国に先駆けて水道運営権が民間へ売却され、【大阪市】でも下水道事業に外国資本が参入している。さらに、自衛隊の最重要拠点が集中する国防の要・【青森県】では、再生可能エネルギー事業を隠れ蓑にして、基地周辺の水源地や広大な土地が中国系をはじめとする外国資本に【二百九十件以上】も合法的に買収され続けているのが現在の『実例』である。】


【5:その『再生可能エネルギー』の裏にある歪みも同様だ。国民は毎月の電気料金から【再エネ特措法(再エネ賦課金)】という名目で強制的に数千円の金を徴収され、その莫大な資金が外資系メガソーラー企業の利益として吸い上げられている。さらに、彼らが利益のために山林を切り開いて敷き詰めた太陽光パネルは、保水力を失った山々で【大規模な土砂崩れや洪水】を引き起こし、住処を追われた【クマ等の野生動物が人里に大量出没する深刻な獣害被害】を全国で巻き起こしている。環境のためという美名の下で、国民の安全と財産が中から食い荒らされているのが、数字と実害が示す事実である。】


エンターキーを強く叩き、データを放流する。


国家が雇った荒らしによる文字のノイズを突き破り、命の水、電気、そして自分たちの財布と安全を脅かす再エネの正体という、凶悪なデータがネットの最前線に躍り出た。


毎日支払っている電気代の不条理、そしてニュースで見る災害やクマの被害の「本当の原因」がすべて一本の線で繋がった瞬間、ネット住民たちの狂熱は最高潮に達した。国側のサイバー攻撃を力ずくで押し返すほどの物量で、この事実がネット中へ爆発的に拡散され始める。


「電気代から勝手に引かれてる金、外資のメガソーラーに流れてるのかよ!」

「山が削られたせいで洪水が起きて、クマが人里に降りてきてる……全部繋がったわ」

「宮城の水道も、青森の土地買収も、再エネの災害も全部ガチのニュースじゃん。国はこれを荒らしてまで消したかったのか!」

「人口を減らされ、生きるための水や電気まで他国に売り渡されてる。この国、本当に中から溶かされてるんだ」


大人がネットを力ずくで潰そうとすればするほど、俺たちの事実の輝きが増していく。画面を見つめる俺たちの隣で、世界を侵食する波紋は、もう誰にも止められない巨大な濁流へと姿を変えていた。


(第十一話 終)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ