第六話 自由
やっと主人公が自由に行動できるようになりました!
これからは話のテンポが少し遅くなると思いますがご了承ください。
ジョンが自由の身になるまでの間、世界は大きく変動していた。
幽閉されていた期間は5年ほど、現在の西暦は2050年である。
汚染は海に流れ蒸発し、雨として降り注ぐ、汚染された雨は大地に打ち付けられ、汚染を拡大させていく。
それはジョンが居るニコン国にも影響を及ぼしていた。
ニコン国は海で囲まれた国、その影響もあるせいか、汚染が広がるのは他国より早かった。
降り注ぐ雨は草木を枯らし、人は汚染により死に絶える者も居れば姿形を変え変異する者も居た。
皆は逃げ隠れるように地上からは姿を隠し、地下での生活を余儀なくされる。
だが地下施設にも許容できる人数は限られていた、ニコン国の有力者や裕福層が主で、国民は有り金をはたき、地下へと身を隠す。
その中でも資金が乏しい者は地上での生活を余儀なくされる、人々が集まり安全な生活をしていく。
しかし事件が起きる、変異した動物がニコン国でも姿を表したのだ。
変異した動物は害のない者もいるが、人に害をなす者も居た、飼っていた猫が変異し人を噛み殺し飼い主を食うという事件が起きたのだ。
人々はペットを手放すという手段を取らざるを得ない状況であった。
だが、放たれた動物は爆発的に数を増やしていく、汚染による生命の危機に反した時、生物は子孫を残そうとする。
同種同士が子を作り続け、それを邪魔する人間は一人も居ない事もあり、凶暴化した動物はいたるところに生息することになる。
人間はますます外での生活が困難になった、自衛隊はその事を危惧し動物の殺処分に乗り出すが、それも長くは続かない。
何故なら人が足りていない事もある、しかしそれ以上に汚染された土地での活動時間の短さである。
防護服を着ていても100%防げるわけではない、いずれ人体に影響を及ぼす、死ぬだけならまだいい、だが現実は違った。
動物だけが変異するとは限らないという事である、一定値の放射能を浴び続ける事により、肌はずり落ち、映画で見たことのあるゾンビのような姿になる。
知性ある人間が醜い姿に変異した場合、人間は平静を保てず、人格は崩壊する。
鬱状態になる者、動物たちの様に凶暴化する者も居た、この事が原因で人間は動物の殺処分に乗り出せないでいた。
これがジョンが幽閉されていた五年間という短い期間で起きた出来事である。
ジョンはそんな事もつゆ知らずヤマクチ県を歩いていた。
人っ子一人居ない事を不審に思いながらも、人が居るであろう市街地へと歩き続け、ようやく到着する。
そこでジョンは目を丸くする、市街地には食い荒らされた人の死体やそれに群がる動物たちの姿である。
動物の姿は犬のように見える、だがジョンの知っている犬ではなかった。
胴体からは首が三つに別れている、首を支える為に体の筋肉は発達し、既に原型を留めていなかった。
その姿をジョンは見ていると犬は死体から口を話し、六つの耳を立てる、次の瞬間、六つの目がジョンの姿を捉えた。
発見するや否や、口を大きく開き舌を出し左右に揺らしながら向かってくる、距離はどんどん詰められ既に目の前まで来ていた。
ジョンは咄嗟にいつも銃を隠している場所へと手を当てる、そこで懐に一丁の銃が入っていることに気づいた。
取り出すと手にはリーチェからの贈り物であるリボルバーが入っていた。
リボルバーを構え犬へ向け、引き金を引くが撃鉄の音だけが虚しく響いた、ジョンは改めて銃の側面を確認すると弾が入っていなかった。
「なんでだよっ!」
咄嗟に銃を逆さに持ち、銃把で襲いかかってくる犬の頭を殴りつける。
ジョンは怯ませる程度だと思っていたが、銃把は頭にめり込み頭部を砕いだ、犬は痛みに悶えながらも、反撃をする。
頭が一つ壊されても、残り二つあると言わんばかりに、二つの口はジョンへと襲いかかった。
左腕と脇腹を噛まれる、咬合力は強く肉が削がれる激痛が体に走る。
だがそれだけでは怯まない、伊達に今まで修羅場を超えてきては居ない、噛み付いて離さない犬の二つの頭を再び銃把で殴りつける。
咬合力は弱まり、口を離しジョンの足元に転がった。
「なんなんだこの生き物は……」
知らないのも無理はない、だがここで長年息を潜めていたジョンの悪癖が出る。
好奇心にはジョンは逆らえないという悪癖、素手で犬の体を触る、筋肉は付いているが骨は脆い。
首の付根は完全に繋がっている、腹を無理やり開き内蔵を確かめるが頭は三つであったが心臓は一つしかないらしい等、調べれば調べるほどわからなくなっていく。
ジョンはリボルバーを再び懐へしまい、傷口を塞ぐための布を探し、廃墟となったコンビニへと入る。
コンビニの中は荒れ果てていた、売り物の殆どは持ち攫われ、レジの中は無理やりこじ開けられ中身だけが抜きさらわれている。
動物の住処になっていたのか、糞尿の匂いが充満していた、長くこの場所に居たくないという思いからか早歩きで中を漁る。
結果として布はあった、だが酷く汚れていた、汚れを落とそうと蛇口をひねるが水が出てこない。
ジョンは諦め汚れた布の間に自分が着ている服の袖を破き間に挟もうと考えた。
だがそこでふと気づいた、痛みが消えているという事に……。
ジョンは最初壊死し感覚が無くなったものだと思った、恐る恐る傷口のあった場所を見る、だがそこには傷の痕跡は一切なかった。
ジョンは何度も何度も噛みちぎられた箇所を恐る恐る触る、痛みも感じなければ違和感もない。
それどころか、幼少期に車で撥ねられた時についた傷跡すら無くなっていた。
医者には一生残ると言われたほど酷い傷が無くなるなどありえないことである、ジョンは人体実験のせいか酷い疲れで幻覚を見たのだろうとすら錯覚する。
だが現実は違った、ジョンは気づいていないが、人体実験の際に仕様した新薬がジョンの体を変化させていた。
何故ジョンの体にこのような事が怒ったのかというと、新薬の効果は放射能に耐えうる体へと人間を強制的に進化させる作用がある。
体の治りが異常に早くなったのはこの進化の過程の副産物である、ジョンの体は既に従来の人間とは異なる存在となっていた。
もしあの新薬が世に出回れば、新薬を使った人々も同様に進化するだろう。
この進化の副産物は個々の遺伝子による変わる、ジョンの場合は驚異的な回復力であったが、他の人が使えばまた別のものになるであろう。
近い未来、世界は再び大きく変わることになる。
そんな事もつゆ知らず、ジョンは自分の異常に恐怖した。
思い返してみればあれは幻覚ではない、噛み千切られた時、感覚と痛みはあった。
ならば何故この様な体になったのか、すぐに思いつくことは人体実験である。
ジョンは誰からも教えられず自らで答えを導き出そうとしていた。
だがあと一歩の所で答えは出てこない、人体実験で何を行っていたのか詳細を聞いていないからである。
考えることを諦め、人を探し再び街を彷徨う事にした。
「それにしても、どうなってるんだ」
見渡す限り人は居ない、居るのは先程殺した犬とは別な動物だけ。
そんな中、ジョンは一つの看板を発見する、そこには安全な地下シェルターへの案内板であった。
看板の下には紙が張り出され、ジョンは読んでいく。
『地下シェルターへの案内、市民の皆様には安全で快適な地下への居住権をお買い求め出来ます、詳しい話を聞きたい方は株式会社シミテックまで』
ジョン行く宛も無く、赴くままに看板が掛けられたビルへと入っていく。
ビルの前に立つとジョンがビルに入ろうとした時、上からジョンを呼びかける声が聞こえた。
「そこで止まれ、要件は何だ」
そこに居たのは銃をジョンに向け警戒したように叫ぶ一人の男性が居た。
男性の表情は何からか怯えているように思える、ジョンはゆっくりと両手を上げ問に答える。
「久しく戻ってきたが人が居ないのを不審に思って人を探すために街を歩いていたんだ、銃をおろしてほしい」
そう言うと男は銃を下ろし、すまなかったとジョンに対し頭を下げた。
「問に答えられるならお前は違うのだろうな、すまなかった、今からドアを開けるから少し待っていてほしい」
男は再び銃を構え辺りを見渡し始めた。
待つこと数分程、ドアは静かに音を立てながら開く、ドアから顔を覗かせたのは一人の中年女性であった、
ドアの奥へとジョンは警戒しながら入る、ドアには無数の木が釘で打ち付けられ、ノブには女性が鎖で再びキツく縛る。
奥へ行くと、居住スペースとなっていた、どうやら複数の家族が同じ場所で住んでいるようだ。
10歳にもならない幼い子供も居る、そして全ての家族は何やら暗い表情をしていた。
「驚かせてすまない、俺の名前はジョン・ドゥ、最近帰国したものでここらの状況がよくわかっていないんだ、よかったら教えてくれないか」
ジョンの問に少々考え込む素振りをするが、女性はゆっくりと話し始めた。
女性の話しにジョンは顔を歪ませた、話の内容は第三次世界大戦による大気汚染が原因によるものと聞かされたからだ。
放射能による突然変異を恐れ、金を持たない家族はこうして大きなビルの中、立てこもる以外の選択肢が無かったらしい。
この立てこもり生活は既に2年間続いてるとの事、ジョンはその話を聞き、自分が犯した罪の重さを再確認する。
「そうか……それは辛い思いをしたんだな」
ジョンの目からは涙が零れ落ちていた、目の前の人達を哀れんでではない、自分の不甲斐なさ、そして心からの申し訳ないという気持ちからである。
だがあの時、ジョンにはどうすることも出来なかった、だがそれは言い訳であると自分を戒める。
「暗い話をしてすまなかったね、久しぶりの客人だし何も出せるものは無いがゆっくりしていくといいさ」
女性は言い終えると奥へと歩いていった、それに続きジョンも歩いていく。
居住スペースとは言っても簡易的な仕切りに薄い布団が並べてあるだけである、電気はビルの自家発電で補い、なんとか暮らしているという様子である。
そんな中、一人の少女がジョンの元へと駆け寄る。
「お兄ちゃん、外から来たのー?ずっと外にでてないから外の事おしえてよー」
ジョンは少女の問に優しく答えようとするがジョンは何も言えないでいた。
外の世界も何も、放り出されまだ数時間しか経っていない、ジョンよりこの少女の方が今の世の中を知っているだろう。
「外の事もいいけど、俺はね外国に行っていたんだ、その話でもしてあげようか?」
「うん、そっちのほうが面白そう」
ジョンは地べたに座ると、少女も目の前に座る、ジョンはドイズ国での出来事を話していた。
もちろん戦争の事は話していない、休暇に何をしただとか何処に行ったとか、些細な事を話す。
だがそれでも少女は喜んでくれた様で、暗い表情は徐々に無くなっていった。
「その外国って所は楽しそうだね、なんか食べ物の話ししてたらおなかすいちゃった」
「そうか、お母さんの所に行ってくるといい、俺も少し他の人に話を聞いてみるよ」
ジョンはその場から立ち上がると、ドアの前で門番の様に銃を構えていた男性の元へと向かった。
女性から行き方を聞くとまっすぐと男性の元へと向かう。
男性が居た場所はテラスになっている場所だった、そこでは周りの状況が一望出来る。
後ろから声をかけると男性は振り返らず、ジョンの言葉に反応をした。
「先ほどはすまなかった、こうでもしないと娘達を守れないから仕方のなかったんだ」
「気にしてない、それより俺に出来ることはなにかないか?」
それはジョンの些細な罪滅ぼしであった、少しでも罪悪感を和らげる為にとった行動である。
男性は少し考えると、ジョンに向かって問いかける。
「外から来たってことはある程度は腕に自信があるよな、危険だが頼まれていいか」
ジョンは端から答えは決まっていた、時間をあけることも無く肯定する。
「ならば、食料と自衛隊が駐屯していた場所へ行って食料と銃弾を回収してきてはくれないか」
「わかった、場所を教えてほしい、今すぐに向かう」
「誰か一人付けさせたいが、今は人手がない、一人でいってもらうことになるが……、大丈夫というのならお願いする、場所は紙に書いて渡すよ」
男性は紙とペンを出し書き出していく、書き終えるとジョンに紙を渡した。
行ってくると一言だけ言うと男性は気をつけてとだけいい、再び見張りを再開した。
テラスから出るドアを開けると、そこには一人の女性が立っていた、そこには僅かばかりしか残っていないだろう食料を手に持っている。
「私達の為にありがとうございます、よかったら少ないですけどこれを……、それと外は危険ですので、部屋に武器が置いてあります、あまり持っていくと困りますが少しなら大丈夫だと思いますので、お気をつけて……」
女性はそのまま去っていく、ジョンの手には今握られたであろう温かいおにぎりが残った。
おにぎりを大事にしまうと、武器庫へと向かう、ドアを開けて物色するが武器庫と言えるほどの物資は無かった。
銃が2丁に弾がそれぞれ50発程度、ジョンの持つリボルバーで使える弾は武器庫には無かった。
だが銃を持ち出すわけにもいかず、脇に置いてあったバッドを手に持ちビルを出ていく。
これからジョンが先に向かう場所は自衛隊の駐屯地である、武器の確保は食料を取る前に自分の身を守る為に必要であるからだ。
こうしてジョンの人々への贖罪の旅は始まった―――。
誤字脱字、矛盾点など発見しだい修正していきます。
はじめての評価、ブックマークありがとうございます、これから精一杯頑張っていきます。




