38. 正式配属
エネルギー管理局での研修が終わった翌朝、灯里は悔しそうな顔をした咲良と、自慢げにニヤニヤしている橘の目の前に立たされていた。
橘の妙な笑顔も気持ちが悪いが、咲良がわざわざ戦闘班のフロアにいることも珍しい。
「…な、なんでしょうか?」
「霧島!今日からお前はなんだと思う?」
「えっ?何って何ですか?私は私ですけど…」
今日からなんだというのだ、別にいつもと変わらない自分自身だ。
すると、ブスッとした咲良が、首をかしげる灯里の横にピタッとくっついた。
「あ〜、くやし〜い!わたしだって可愛い灯里ちゃんが欲しかった〜!」
「諦めるんだな、咲良。もう霧島は正式に戦闘部門の一員だ。」
(あ…そっか。)
橘の顔を見上げると、しっかりと灯里を見つめる紅い瞳と目が合った。
「霧島、研修修了おめでとう。今日から正式な第七戦闘班のメンバーだ。」
橘は少しだけ笑った。
「よろしく。」
灯里の頬がほんのりと紅潮する。
「はい!ありがとうございます。よろしくお願いします!」
自分の住所が確定して、地に足がしっかり着いたような、そんな安心感に包まれる。
「…あ、白瀬くんはどこに配属になったんですか?」
ふと、同期の蒼の姿が見えないことに気がついた。
「あ〜、あいつはな〜」
「う〜ん、そうねぇ。」
途端に二人とも呆れたような顔になった。あんなに戦闘向きなのだ、彼もきっと戦闘班に違いない。
苦笑いのような表情をする二人を、灯里は不思議そうに見つめた。
すると、あまり聞かない蒼の弾んだ声が廊下から聞こえてきた。
「恭兄ぃ、どうやったら恭兄ぃと一緒に戦える?特務遊撃班って他に誰がいるの?」
「……蒼、お願いだから、ここではその呼び方はやめてくれ…。」
「嫌だよ。長いこと僕の誤解を解かなかったんだから、このくらい許してくれなきゃ。」
今までの態度が嘘だったかのように、蒼は恭弥にべったりとくっついて嬉しそうに話している。
一方の恭弥はややぐったりして見えた。
橘が灯里の耳元でコソッと囁く。
「あいつな、昨日の夜、久しぶりに恭弥に会ってからずっとあんな感じなんだよ…。」
誤解という壁がなくなった今、蒼は恭弥のそばにいられることが嬉しくてたまらないようだった。
灯里も小さい声で橘に聞き返す。
「…でも流石の白瀬くんでも最初から特務遊撃班には配属されないですよね?」
橘は、困ったように頷いて、蒼に声をかけた。
「おはよう、白瀬〜。お前の配属は七班だぞ〜。」
「白瀬くーん!特務遊撃班はその特殊任務に合わせて基本的に人員構成を決めるから、みんな本所属が別にあるのよ〜!」
九条の言葉を聞いて納得したのか、白瀬は笑顔でこちらを向いた。
「おはようございます!橘さん、九条さん。そうなんですね!じゃあ僕にもいつかチャンスはあるのか……これから宜しくお願いします!」
(うっ、プラチナの笑顔、いつもの二倍増し…。)
輝く蒼の笑顔が眩しすぎる。
…まぁ、でも彼の中のわだかまりがなくなって本当によかった。灯里はにっこりと微笑んで蒼に声をかける。
「蒼くん!私も七班だから、これからも宜しくね!」
「今夜は歓迎会やるぞー!二人は主役だから参加してくれよー。」
橘の発した"歓迎会"の言葉の響きに、灯里は目を輝かせた。
学生時代とはなんだか違うそのちょっと格式ばった、でも楽しそうな会に心が躍る。
腕を組んで頼もしく立つ橘、蒼にひっつかれて困り顔の恭弥、スレンダーな腕を灯里の肩に回す咲良、そして明るい笑顔を浮かべる蒼…。
気付けば、今の灯里にはかけがえのない仲間ができていた。
これからの日々には何が起こるのだろうか。…ふと融合個体のことが頭を過ぎる。
だが、どんな困難が待ち受けていようとも、彼らとなら乗り越えていける。
灯里は、そう信じていた。
(第三章 完)
第四章へつづく
ここまで読んでいただきありがとうございます!
ここで第三章は完結になります。
いよいよ、次話からクライマックスの第四章です!バトルシーンを多めに描か予定です。引き続き楽しんでいただけたら嬉しいです。




