表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
環境保全局の浄化師 〜窓際局と侮るなかれ、不人気官庁の新人ですが裏では世界の危機(穢れという怪異)をひっそり片付けています〜  作者: 真白みこと
第三章 他省庁研修 - 迫る影 -

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
36/46

36. 静かな違和感


水瀬の研究を見せてもらってからも、水瀬の態度は変わらなかった。

  

白瀬が出勤したあとは、二人でデータを確認し、水瀬へ報告する。

水瀬は穏やかに頷くだけで、業務のこと以外は何も話さなかった。午後も昨日と変わらずデータ整理が続き、気づけば一日が静かに過ぎていた。


朝のあの二人だけの時間で、彼と距離が縮まったように感じていただけに、灯里にはかえって水瀬の態度が他人行儀に思えた。


その日の夕方、無限食堂で夕食を摂っていると、久しぶりに橘と長谷のコンビと顔を合わせた。


「よっ、霧島。エネルギー管理局ではどうだ?そろそろ俺たちが恋しくなってきたんじゃないか?」


笑いながら橘は灯里の隣に腰掛けた。


「アカリ〜ン、早く戻っておいでよ。外回り、橘さんとばっかでつまんないよ〜。」


「おいっ、俺と一緒でつまらないこたないだろ、長谷〜。」


賑やかな二人の姿に、ああ、これがいつもの環境保全局だ、となんだかホッとした。


「白瀬くんのおかげで、任されてるデータ整理は予定より早く終わりそうですよ。」


「おっ、それは良いニュースっスね!班長!」


「そうだな。霧島、実は最近、融合個体の件もあって人手が足りなくてな…。

新しい検知器の設置と、浄化とでみんなフル稼働なんだ。」


「えっ、そうだったんですか?そんな時期に外での研修を受けさせてもらって、ありがとうございます。」


「いや、これを受けとかないと研修修了通知が出せないから、気にするな。」


ふぅ、と息をつくと、橘は運ばれてきた肉うどんに箸をつける。

灯里も天丼の大海老を咀嚼する。海老のプリっとした身の食感がたまらなく美味しい。


「アカリンはあんまし麺類食べないの?」


ズルズルっとカレーうどんを啜りながら長谷が尋ねた。カレーの黄色い汁が白い制服に飛びそうだ…。


「いえ、麺類も好きなんですけど、今日、お昼にパスタを食べてしまって…。」


「ああ、エネルギー管理局のレストランフロアにあるパスタ屋だろ?あそこ美味いよな。」


「橘さん、よくご存知ですね?」


「おう、まぁ短かったけど、俺、最初の配属はエネルギー管理局だったんだよ。」


「えーーっ!班長、頭良かったんすかー?!」


「オイ、長谷、お前どういう意味だ!今でも頭良いだろうが!」


「どっからどー見ても、班長、オレ寄りの体育会系じゃないっすかー!」


二人のコントのようなやり取りに、灯里はますますホッとしてしまった。

なんだかんだ、慣れない職場での研修に疲れていたのかもしれない。


「私たちを指導してくださっているのが、水瀬さんっていう方なんですけど、橘さん、ご存知だったりしますか?」


「水瀬……?」


橘は一瞬だけ箸を止めた。


「……ああ、水色の髪の水瀬幸人で合ってるか?」


「はい!幸人さんって言うんですね。下のお名前。」


「おう。俺と名前が似てるから、入局当初はハルト・ユキトコンビ、なんつって結構絡んでたんだよな〜。嫌がられてたけど!」


なにかを吹っ切るように、橘は明るく笑った。


「ちょっ、班長…水瀬って…20年前のあの件の息子さん…ですよね?」


一方、長谷はやや焦ったように声を落として橘に問いかける。


「…大丈夫だろう。霧島も白瀬もちゃんと箝口令の規則は守ってる。」


チラリと橘は灯里の制服のエンブレムに目を遣る。

局員が箝口令がかかっている内容を権限なく口外すると、このエンブレムが赤色に変化し、本部へ通知がいくのだ。


「とはいえ…水瀬か。あいつ自身は問題ないだろうが、こんな時期だ。早めに研修を切り上げた方がいいな。霧島たちに何かが起こらないとも限らん。」


「そうっすよ!こっちも人手が足りないですし、戻ってきてもらいましょうって!」


危機感を持って話し合う二人の様子に、灯里は不安な気持ちになった。


「霧島、実は今、戦闘班以外の一部のメンバーも一緒に現場に出て、対融合個体の連携任務に当たれるように訓練をしているんだ。」


えっ、と灯里は目を見開いた。それは、非戦闘員の分析班や防護班も現場に出ているということだ。


うーん…。いかにも研究者です、というヒョロヒョロした分析班の面々の顔が思い浮かぶ。

彼らが、あのハードな訓練を受けられるのだろうか…。

心配だ…。


「霧島の新しい魔法紙も、実践に多く配備したいと考えててな、できれば早めに研修が終えられるとありがたい。」


「わかりました。魔法紙、またたくさん作製します!」


「明日、俺も研修に同行して、スケジュールのことを水瀬に直接相談してみるな。朝、下で待っててくれるか?」


「はいっ!よろしくお願いします。」


思ったより早く他省庁研修は終わりそうだ。

研修後に待っているたくさんの業務が不安だが、またすぐに戦闘班に戻れると思うと心が温かくなった。


つづく


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ