34. 衝撃の真実
「うっわ〜いろんなお店がある〜!」
灯里はレストランが立ち並ぶフロアで目を輝かせた。
さすが潤っているエネルギー管理局だ。有名どころのレストランがビルのレストランフロアにいくつも入っている。
「今日はまだ混み合ってないし、どこでも好きなところに入って大丈夫だよ。」
黒崎がニコニコと微笑ましそうに灯里を見て言う。灯里は、はたと大人気なくはしゃいでしまったことに気がついた。
「あ...すみません、私、はしゃいでしまって。」
「いいよいいよ。玲央のことは気にせずに、せっかくだから、霧島さんの食べたいものがあるお店に入ろう?」
白瀬も心なしかいつもの食堂とは違う環境にワクワクしている様子だ。
灯里たちは、寿司屋がランチ時間にのみ提供している海鮮丼を食べることにした。注文を終えると緑茶がサーブされた。
いつもコーヒーや紅茶ばかりなので久しぶりの緑茶にほっこりする。
目の前に座る白瀬と黒崎を見比べた。
......なんだか似ている。それもそうか、いとこだし...と思って、あれ?と気がついた。
「あの、黒崎さん、白瀬くんと従兄弟ってことは霧島恭弥さんともご親戚なんですか?」
そう、誰かに似ていると思ったら、恭弥に顔の造りが似ているのだ。雰囲気がまるで違うので全く気が付かなかった。
「え?うん。あ、言ってなかったね、恭弥は僕の兄だよ!」
「ええっ?!そうなんですか?でも名字が違いますよね?」
「うん。兄貴は環境保全局に入る時に、正式に家を継がないことになったから、祖母の戸籍に入って、"霧島"姓になったんだよ。」
「へ〜そうなんですね〜。どおりでなんか見たことあるな〜って感じたんですね。」
「ふんっ、あいつなんて、家の責任をぜーんぶ玲央に押し付けて出て行ったじゃないか。無責任なんだよ。」
白瀬がブスッとした顔で呟くと、
「あれ?入局してから兄貴に聞いてないの?」
玲央がきょとんとした顔で白瀬に尋ねた。
「え?何を?入局してから数回しか顔も合わせてないし、喋ってなんかいないよ。」
「そうなの?てっきり聞いたと思ってたのに。」
「だから何をだよ?」
周りに聞こえないように少し、黒崎は声のトーンを落とした。
「兄貴さ、実は小さい頃から"穢れ"が見えてたんだ。あの通り魔力も加護も桁違いだったからね。
そのせいか、人の裏表にも敏感でさ。五大魔貴族の腹の探り合いみたいなのをすごく嫌ってた。
だから家族ではずっと決めてたんだ。家督は僕が継ぐ。兄貴は環境保全局で上を目指すって。」
「小さい頃から...だから今、あんなに強いんですね。」
「うん。でも、対外的には環境保全局のことを公表できないだろ?それで、家族の中だけでこの話は留めててさ。」
「なんだよ、それ!弟同然だった僕には環境保全局に入る時くらい教えてくれたってよかったじゃないか!」
白瀬はムッとする。黒崎はチラリと灯里のことを見て、続けて言った。
「いや、それがさ、ちょうど兄貴が入局する直前、兄貴の目の前で、凄くお世話になってた女性が強い"穢れ"に襲われて亡くなったんだ...」
「え......?」
「まだ兄貴も浄化師になる前だったから、加護での浄化が上手く発動できなくて、助けに行った時には間に合わなくてね。
…あの時、兄貴、荒れに荒れちゃって、3ヶ月休養してたんだ。」
具材がたっぷり乗った海鮮丼が運ばれてきた。
「お待たせしました。」
店員の声だけが静かに響く。
誰もすぐには箸を取れなかった。
3ヶ月...それは回復に時間がかかった事を意味するのではないか、と灯里は思った。
"最強"とまで言われている恭弥に、そんな過去があったなんて知らなかった。
「兄貴、ああ見えて自分が弱いところを人に見せられないからさ、あの時、蒼に会うことができなかったんだと思うよ。」
「......。」
蒼は俯いてしばらく沈黙していた。
「ああもう!僕が一人で勝手に勘違いして怒ってたって事じゃないか!言葉が足りなすぎるんだよ、恭兄ぃは!なんで玲央も教えてくれなかったんだよー!」
「いや、蒼がそこまで勘違いしてるなんて僕も知らなかったし...」
頬を膨らませてプリプリと怒る白瀬が、なんだかいつもより幼く見えて、思わず灯里は笑ってしまった。
「あははっ!」
灯里の笑い声に毒気が抜かれたのか、白瀬が怒るのを止めた。
「なんだ、よかったじゃない。ただの勘違いで、ね。蒼くん?」
つい、黒崎の呼び方が移って、下の名前を呼んでしまった。
灯里の言葉で落ち着いたようで、白瀬もいつもの落ち着いた表情を取り戻す。
「...うん。ありがと、灯里ちゃん。」
「えっ、いーな、二人とも名前呼び!俺のことも玲央って呼んでよ、灯里ちゃん!」
「えー、どうしようかな。今日会ったばかりだし。」
「そんな〜」
黒崎のおかげで誤解が解け、昼食はあたたかな空気に包まれた時間となった。
つづく




