28. 加護の特性
恭弥は灯里が作った魔法紙に加護を付加し、防護壁を展開した。やはり展開時に金色の光が舞い、イミテーションの穢れが防護壁にぶつかると、光を放って浄化された。
次に恭弥は、魔法陣が光らなかった灯里の"失敗作”を手に取って、加護を発動した。
…すると今度は防護壁すら出来上がらない。
そして立て続けに違う防護班員が”諍"の文字を使って描いた魔法紙でも、防護壁を展開する。この魔法紙で防護壁は出来上がったが、普通の防護壁と効果は変わらなかった。
恭弥はしばし、考え込んで灯里へ向き直った。
「......霧島さん、魔法紙を使わずに防護壁を展開してみてくれるかな?」
「えっ、今、ですか?」
「うん、そう。」
「はい...えっと、じゃあ、いっ、いきます!」
灯里は掌に加護の力を込める。ぼんっ、と少しぎこちない音を立て、防護壁が展開された。
未だ防護班の他の人のようにスムーズに展開ができないので、恥ずかしい。
灯里が前に突き出した両方の手のひらの前に、紫色のスケルトンの分厚い壁が出来上がった。
「...あら?」
咲良が目を細める。
東雲は眼鏡を押し上げた。
恭弥は無言のまま防護壁を見つめている。
数秒の沈黙。
そして東雲が笑った。
「なるほど。」
恭弥だけでなく、東雲や咲良も何かに気づいたように、灯里の防護壁をしげしげと見る。
灯里は、不安になって橘へ視線を向けた。しかし、橘も腕を組んだまま首を傾げているだけだった。
東雲は満足そうに頷くと、静かに口を開いた。
「霧島さん。君、自分では気付いていないみたいだけど……
その防護壁、普通じゃないよ。」
「えっ?!そうなんですか?」
「うん。」
東雲が防護班員たちに向かって、防護壁の展開を頼む。
大量の魔法紙をドームの隅へ置いてきた防護班員たちは、灯里の横に並び、防護壁を展開した。
灯里は周囲の防護壁を見比べて、思わず目を瞬かせた。
他の人が作った防護壁は、淡い紫色のガラスのように透き通っている。
それに対して自分の防護壁は、紫色が濃く、厚みもある。ガラスというより、透明な樹脂を何枚も重ねたような重厚さがあった。
「多くの浄化師は、加護の四つの型、"戦闘" "広域” "解析" "防護・封印"のどれかに特化していて、1種類しか使えないよね。だから、普通、防護壁を作るときは『防護』の加護しか使われない。」
東雲はそう言うと、灯里の防護壁へ歩み寄った。
「でも君は珍しくどれもバランスよく使える...。」
灯里の防護壁をコンコンっと軽く叩く。
防護壁の奥で金色の光がゆっくり揺らいだ。
「見て。金色に光った。」
「え……?」
「普通の防護壁なら、こんな反応はしない。」
灯里は自分の防護壁を見つめた。確かに、透明な紫色の奥で金色の光がゆっくりと揺れている。
「おそらく君は、防護の加護だけでなく、戦闘か広域の加護まで無意識に重ねて付加している。……だから橘や恭弥が君の魔法紙を使った時、防護壁そのものが浄化能力を持ったんだ。」
なるほど、やはり自分は不器用だ...。
だが怪我の功名とでもいうのだろうか、そのおかげで何やら新しい魔法陣が生まれたようだ。
喜ぶべきなのか、よくわからず、灯里はとりあえず曖昧に笑った。
「...あ、えっと、原因を解明してくださりありがとうございます。
でも、普通の防護壁じゃないなら、やっぱり成功……ではないんですよね?」
「何言ってるの!大発明品よ!」
咲良が目を輝かせて灯里の両手を握る。
「これから定期的に灯里オリジナル魔法紙、作っていきましょうねっ!!」
「………ハイ。」
何やら自分には大変な状況になってしまったようである。
事の重大さを理解しきれていない灯里はそんなふうにのほほんと思った。
つづく
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