25. 分解魔法
翌朝、灯里は東雲に呼ばれてイミテーションドームにいた。
「霧島さん、僕が融合個体に分解魔法を当てていた時のことを覚えてる?」
「はい。分解魔法で、融合個体の足が少しずつ崩れていきました。」
「うん。分解魔法は、直接的な攻撃力を本来持たないから、穢れを浄化するのには向いていない。だけど、今回の戦いのなかで、僕が分解魔法を当てていた時だけは、重なり合った周波数の波形が分離していたんだ。」
「えっ、それって…もしかしたら分解魔法をかければ、融合個体を融合前の複数の穢れに分離できるかも…ってことですか?」
東雲はツカツカとドームの中央へ進みながら言った。
「ああ、もし融合個体を分離できれば、戦闘班員一人でも対処できる可能性がある。だから今、分析班では分解方法を研究してる。そこで…だ。」
東雲はニッコリ笑って、ドームの窪みに球体をコトリ…とセットした。
「闇属性の魔力をもつ浄化師には、全員、分解魔法を特訓することにしたんだ。」
ドームの中が薄暗い星空に覆われた。
中型の穢れが飛び出てくる。
「霧島さん、闇属性だったよね?よし!分解魔法、どんどん、放っていこう!」
(えええええーーーーっ!ウッソー!急にこういう戦闘モード?!?!)
笑顔でスパルタ発言をした東雲に、灯里は項垂れた。
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灯里は紫色の魔法陣を何度も展開した。放つたびに東雲が細かく修正を指示し、灯里は汗だくになりながら分解魔法を繰り返した。
ハァ…ハァ…
「うぅ…も、もう立てません…」
「ありがとう!霧島さん。おかげで穢れに分解魔法を当てた時のデータがパターン別に沢山取れたよ!それに…」
東雲はしゃがみこんで灯里に目線を合わせた。
「浄化の加護と組み合わせた時、君の魔法の効果は増幅されているよ。君は集中力もあって、上達が早い。よく頑張ったね、お疲れさま。」
思いがけず褒められ、灯里は目を丸くした。
「ほ、ほんとですか…頑張った甲斐があったぁ〜。」
「うん。本当に良くやってくれてるよ。よし!じゃあ分析班でのOJTはここまで。お昼食べたら、防護班に行ってくれるかい?」
「はい!わかりました。」
(やっとお昼だぁ〜〜!)
空腹でふらつく足をなんとか前へ運びながら、灯里は無限食堂へ向かった。
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ポーン
エレベーターで防護班のある6階に到着した。
午前の訓練だけで足腰はもう限界だった。
(お願いだから今日は座学でありますように……)
灯里は小さく祈りながら、廊下に一つしかない、防護班の扉をノックした。
「失礼しまーす。」
扉を開けた先は、"和"だった。
まず木製の下駄箱が目に入った。靴を脱いで上がる板張りの床の先には畳敷きの一角があり、衝立で仕切られたデスクスペースが続いている。
柔らかな和紙照明が天井から吊るされ、オフィスとは思えないほど落ち着いた空気が漂っていた。
(あれ…?ここ、一応オフィスだよね…??)
「いらっしゃ〜い!待ってたわよ〜」
九条咲良が衝立の向こうからひょこっと顔を出した。パッと立ち上がり、こちらへやって来る。
「さ、靴、抜いでこっちにいらっしゃい!」
灯里はおずおずと靴を脱ぎ、畳の上へ上がった。
大小様々な木のテーブルが衝立に仕切られるように並び、万年筆や筆で術式や魔法陣を静かに描く防護班の面々の間を通り抜けた。
「悠真といままで一緒にドームにいたって聞いたわぁ〜疲れたでしょう?」
咲良は豪華な牡丹の花の絵が描かれた屏風の奥へ灯里をまねいた。
そこは応接間のような空間で、畳の上にモダンな木の机とハイチェアが置かれていた。
咲良は灯里に座るよう促すと、コトリ、と和菓子と熱々の緑茶を灯里の前に置いた。
「ささ、召し上がれ♡ まずは休憩しましょ?」
(…あれ?わたし、なんでここに居るんだっけ…?)
灯里はOJTってなんだったっけ?と首を傾げた。
つづく
25話もお読みいただき、ありがとうございました!
第二章も終盤へと向かっていきます。
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