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環境保全局の浄化師 〜窓際局と侮るなかれ、不人気官庁の新人ですが裏では世界の危機(穢れという怪異)をひっそり片付けています〜  作者: 真白みこと
第二章 OJT -世界を守る浄化師の役割-

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24. 分析班②


分析班のフロアは、賑やかで色とりどりの戦闘班のデスクスペースと全く違う様相だった。


灯里の目の前にはPCが整然と置かれた長机が何本も並び、白衣型の制服を着た人たちが静かにキーボードを叩いていた。


壁際には背の高い棚が並び、薬品や魔石、小型の分析機器が所狭しと並べられていた。


中央にはスケルトンの大型分析装置が据えられていた。内部では紫色の結晶がゆっくりと浮遊し、その周囲を魔法陣の天板のような円盤が静かに回転している。ピッ、ピッ、と規則正しい測定音だけが静かなフロアに響いていた。


灯里は話しかけられそうな人を探すが、皆真剣になにかの測定機器やモニターに向かい合っていた。


パタパタ…、と後ろから静かな足音が聞こえて振り向くと、緑色のマッシュルームヘアの人がちょうど部屋に入るところだった。


(この人を逃しちゃいけないっ!)


灯里はずい、とその人の前に行き、急いで声をかけた。


「あの、すみません、戦闘班からOJTで来たものなんですが、東雲さん、どちらにいらっしゃいますか?」


ビクッ


話しかけられたことがよほど意外だったのか、その男性は肩を震わせて灯里を見た。

灯里と目線の高さがほとんど変わらない。しかも、学生だと言われても信じてしまいそうなくらい幼い顔立ちだった。


「…ええと、分析班の方ですよね?」


「ぅ、ぅん。そうだけどぉ…」


よっぽど話しかけられたことに驚いたのか、目を丸くしたまま、小動物のようにおろおろしている。


(えっ…私より歳下…?)


灯里が続けて話しかけようと一歩近づいたところで、


「霧島さん、ごめんね待たせちゃったかな?」


灯里たちがいるのとは異なる入り口から東雲が入ってきた。


「東雲さん、わざわざ来てくださってありがとうございます。いえ、ちょうど着いたところでこちらの方にお伺いしてたところだったんで…す…よ…。って、あれ?」


先程のマッシュルームヘアの人を東雲に紹介しようと振り返ったが、彼の姿はそこになく、遥か向こうのデスクの間から先程の緑色の頭が見えていた…


(分析班の人って、戦闘班と全然違う……)


---



灯里は東雲に連れられて、管やコードで繋がれた分析機器が所狭しと並ぶ八畳ほどの小部屋に入った。


奥には大きな透明のモニターが浮いており、解析中なのか様々な文字がその上を流れている。


東雲はモニターの前に手をかざして画面を切り替えた。すると、灯里と東雲が対峙した融合個体の映像が映し出された。


「これが、この間の戦闘の際に近くにあった防犯カメラが捉えていた映像だ。」


これは分析班が設置した、穢れを映す魔道具の映像らしい。

残念ながら音は録音されていないが、写し出された映像は鮮明だった。


ゴクリ、と灯里は唾を飲む。

確かにこの個体だ。だが、なにかが変だ。


「あれ…頭が1つ…それにちょっと小さいですよね…?」


「ああ、そうなんだ。…この画像は俺たちが遭遇する2時間ほど前の映像なんだ。」


「えっ?じゃあこの後にこの穢れは姿が変わったってことですか?」


つい…と違うモニターを東雲は操作して周波数のモニタリングデータを出す。


「ああ、この時点では通常観測される穢れの周波数の波形となんら変わりはなかった。だが…」


東雲は周波数のモニターと、防犯カメラの映像を同時に流し始めた。


すると、先程の穢れは廃ビルの中に入っていく。そこへ、もう少し小さいメスライオンのような形状の穢れが入っていく。


しばらくするとモワッという黒い煙が廃ビルの窓から噴き出した。


そこでいったん東雲がモニターを止める。


「この映像と同時刻の周波数の波形だ。」


周波数の波形は先程と異なり、二つの線が絡み合ったような形になっていた。


「これは……?」


「おそらく二つの穢れがこの時融合したんだろう。というのも…」


東雲がモニターの映像を早送りすると、また似たように穢れがビルに入って行き、黒い煙がビルから立ち込めた。

そして、周波数の波形も同じように一本、線がさらに追加になっていた。


「このモワッとした煙が出た時に融合した…ってことですね…」


「うん、分析班でもそう推測している。…でも奇妙なんだ。

穢れは通常、人々の負の感情から生まれる負のエネルギーが集まって発生する。


だから、近い範囲のエネルギーはひとつに集約されて、通常、強いエネルギーの集合体である中型以上の穢れは一体しか生まれない。


…それに、群れになるような小さい穢れでも、個体の形を取ったら、それ以上成長したり、他の穢れと融合しないんだ。」


「それが、今回は中型の大きさのものが3体合わさって、頭が三つある、あの大きな穢れができた…ということですね。奇妙ですね…」


ああ、と東雲は頷く。


「霧島さん、あの融合個体と出くわす前、なにかおかしなことはなかった?何かあれば教えて欲しい。」


うーーーん、と灯里は記憶を遡った。


「あ!そういえば!融合個体と出会う前、兎のような形の穢れが、何かから逃げるように私たちのところを通り過ぎようとしたんです!すかさず長谷さんが浄化したんですが…」


「なるほど、それは何か関わりがありそうだね。その場所を教えてくれる?映像があるか探してみるよ。」


はい、と頷いて灯里は東雲が持つタブレットの中の地図の該当部をタップした。


そこはちょうど、先ほどの廃ビルから直線上にあった。


「もしかしたら、あの融合個体から逃げていたのかもしれないですね…」


「穢れが穢れを喰らっている…そんな現象が起きているのかもしれない。」


穢れが共喰いをする…なんて気持ち悪いことが起きていたのだろうか…その不吉な可能性に灯里は身体を震わせた。


つづく



24話もお読みいただき、ありがとうございました!


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