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環境保全局の浄化師 〜窓際局と侮るなかれ、不人気官庁の新人ですが裏では世界の危機(穢れという怪異)をひっそり片付けています〜  作者: 真白みこと
第二章 OJT -世界を守る浄化師の役割-

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17. 想定外の脅威


-池沢駅 東口-


灯里と長谷はワンボックスカーから降りた。

2人は朝でも薄暗い繁華街の裏路地を肩を並べて歩いていった。閉じられたシャッターが続き、人の気配はほとんどない。夜には賑わう場所なのだろうが、今は別の街のように静まり返っていた。


「今回は周波数での探索はしないんですか?」


店が閉じている寂しい路地は、夜とは違いよそよそしい空気が漂っており、何か会話をしたくなった。


「うん。複数個体がバラバラに発生しているとなると周波数も違ってて、探せないんだよね〜。だから今日は総力戦。みんなで手分けするしかないんだ。」


「足で稼ぐ、"昔ながらの"探し方、ですね。」


「そうそう。それ。なんだかんだこういうやり方は必要なんだよね。」


「長谷さんは、いつ入局されたんですか?」


「俺はちょっとみんなより早くて、19になった頃に前いた国土建設局から異動してきたんだ。学生時代から穢れが見えててさ…

まー、早めにこっち来れてよかったよ。

だってあれだぜ? なんか事故物件の跡地とかすっごい空気澱んでるのに、そこの工事の現場監督とかすることもあってさ。あれは、気持ち悪さでどうにかなるかと思ったよ。」


周囲を見渡しつつ、ポツリポツリと互いの話をしながら歩いていく。


うっすらと黒い靄が漂ってきた。

すると、ピョン、とうさぎ型の小さな穢れがそこから出てきて、横を通り過ぎ去ろうとした。


すかさず長谷がハンマーで叩いて浄化する。驚くほどの浄化スピードだ。


「は、早いですね…」


「ま、戦闘浄化型はね、穢れに対して浄化の効率がいちばんいいんや。ま。それでも恭弥さんには全く及ばないねー」


いつしかモニターで見た恭弥の姿を思い出した。

そうだ、彼は大きな穢れを一刀両断して浄化していた。


「あの恭弥さんって人、どこの班にも属していなさそうなんですけど、どこの部門なんですか?」


皆がよく会話に出すので、名前を良く耳にするが、灯里は彼について詳しいことは何も知らなかった。


「あー、あの人はちょっと特別枠の"特務遊撃隊"ていう高難度案件対応部隊の隊長さんなん。まー、いっちゃん強い人ってこと!」


「なんか最後の砦みたいな部隊ですね…」


耳慣れない部隊名であったが、とにかく"強い人"だ、ということは心に刻まれた。


「いやー、でも変やなー、さっきの穢れ。俺らのこと気づいてもいないようやったし、まるで何かから逃げているよう……」


「え…?穢れって逃げることもあるんですか?」


「普通はないなぁ。だから気持ち悪いんやけど…」


『キャーーーーーーーーー!!!!!』


一本先の道から叫び声がした。


灯里たちは走って叫び声のほうへ向かう。すると小学生二年生くらいの女の子がボールを抱えてガタガタ震えて立っていた。


彼女の視線の先を辿ると、ライオンよりやや大きいサイズで、ケルベロスのような頭が三つある穢れが黒い息を吐いて唸っていた。


女の子は足が地面に張り付いたように動けない。


灯里は考える間も無く女の子に駆け寄って彼女の腕を引き、抱き寄せた。


その拍子に女の子の持っていたボールが穢れの方へ転がってしまった。


穢れがそのボールを思いっきり踏みつける。


『パンッ!!!』


大きな破裂音が鳴り響いた。ボールの破裂音が、記憶の奥底に沈んでいた音と重なった。


灯里はその音に身体を震わせた。脳裏にサイレンの光、悲鳴、黒い汚染、大きな黒い影がフラッシュバックした。


意識が穢れから外れてしまい、灯里は固まった。


「アカリン!」


ドンッという衝撃音がした。灯里と少女は、穢れと灯里の間に入った長谷に押されてよろめいた。


「ぐぅッ…」


ハンマーで穢れの一つの頭を長谷は潰したが、穢れが右脇から振るった爪に腹部を抉られた。

長谷は腹部を押さえて蹲る。

ハッとして灯里は腹から血を流している長谷に駆け寄った。


「長谷さんッ!!!」


急いで応援要請を出す。


そして灯里は目の前に対峙する"穢れ"を見た。


大きさだけ見れば、下から三番目程度のレベルCだ。それなのに、全身から漂う圧迫感は、今まで見たどのレベルCとも違っていた。


じり…と後退りして逃げたくなったが、自身の脚にしがみつく温かい存在を見てハッとした。

そうだった、彼らを守るために、踏ん張ると決めたのだった。


今の灯里では長谷と少女を護りながら戦い、この穢れを倒すことはできない。


-今のお前たちが目指すのは、生き残って帰ることだ-


訓練の時の橘の言葉を思い出す。

今は他の仲間の助けを待つために、力を使うべきだ。


灯里は力を振り絞って3人を覆う卵型の防護壁を作った。どうにか耐えるんだ、そう、自分に言い聞かせた。


そんな時、


「霧島さん?!……この穢れは、、いったいどういうことだ?!」


デバイスや機器を抱えた東雲が、脇の路地から現れた。


つづく



いつもお読みいただき、ありがとうございます!


今日の更新話の立役者・長谷ですが……

実は「環境保全局に入る前」のお話を書いてしまいました(笑)


スピンオフ短編

『事故物件の解体現場で働いていたら、国家機関にスカウトされました。』

を公開しています!


本編とはまた違った雰囲気になっていますので、よろしければぜひ読んでいただけると嬉しいです。

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