16. 緊急招集
初任務から10日後の朝8時、初めての緊急招集に、灯里は少しだけ緊張していた。
第七戦闘班は橘を含め12名で構成されている。現在OJT中の灯里と白瀬を加えると14名。いつもは顔を合わせない先輩たちが一堂に会すると、思っていた以上に圧倒される。
コの字型に並べられた椅子にそれぞれ自由に座る。
中央にスクリーンが下り、橘がスクリーンに一番近い席に座って待っていた。
全員が集まったのを見ると、橘が立ち上がった。
「みんな、おはよう。朝から急遽集まってくれてありがとう。レベルCの個体が一部のエリア内に5〜6体ほど同時に発生しているという通報が昨夜入った。
今の七班は欠員もなく、人員も揃っている。こういう複数発生案件にはうってつけってわけだ。今日は七班総員で出動する。」
橘が部屋の電気を消し、スクリーンをつけた。スクリーンには東京のなかでもそこそこ大きな駅とその周辺の地図が表示された。
「報告されている地域は池沢駅周辺。商業施設が多く、建物の影やビルの隙間など、穢れが潜むことのできる場所が非常に多い。」
橘が続けて画面を切り替える。
画面にはライオンのような形の穢れの絵が表示された。
(……いつもの任務より、なんだか本格的だ。)
「これが今回報告されている穢れの模擬図だ。サイズでいえば、下から三番目のレベルCのなかでも、そんなに大きい方ではない。しかし、一度に5体程度の発生は比較的珍しいから、皆、気を引き締めるように。」
はいっ。と班員達は返事をした。
「9:00に装備を付けた状態で駐車場に集合。今回は広範囲の捜索になるため、2人1組のバディで穢れを捜索、見つけ次第浄化する。
2個体以上に同時に遭遇した場合や緊急時は、腕についたデバイスで互いに応援要請をすること。」
ガタガタと席を立ち、皆それぞれ、出動するための準備に取り掛かった。
「いやぁ〜、総出動って久しぶりじゃないですか?」
近くでショットガンをケースにしまいながら、先輩の一人が橘に声を掛けた。
「そうだな。ここまで人数が揃ってるのも珍しいしな。」
「なんか遠足みたいでワクワクしますね〜。」
「おいおい、遊びじゃないぞー。」
橘が苦笑いしながら返す。
そんなやり取りを聞きながら、灯里はプロテクターを装着した。
(みんな、緊急任務なのに意外と落ち着いてるんだな…)
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駐車場につくと、何人か準備が終わったメンバーが集まり始めていた。灯里が近づくと、ワンボックスカーの側に立っていた橘に手招きされた。
「霧島、今日は同じ戦闘スタイルの長谷と一緒に組んでもらえるか?レベルCのサイズとの戦い方を見て学ぶ、いい機会だ。」
「ア〜カ〜リ〜ン!よろしくね!オレのことは長谷センパイ♡でも、ハセリン♡でもなんでもいいよー!気軽に呼んで!」
「あっ、えっと、ありがとうございます、長谷先輩。よろしくお願いします!」
橘は他の班員たちへ指示を出すために、離れていった。
長谷は灯里と同じく戦闘浄化型らしく、比較的軽装備だ。……と思ったのだが、背中に何か大きなものを背負っている。
なんだろう?と覗き込む灯里の視線に気がついたのか、長谷がニカッと笑い、背中を見せた。
「あ、コレコレ、オレの武器。ロングハンマー!」
長谷の背中には、本人の身長に迫るほどの巨大なハンマーが背負われていた。
(えっ、これで戦うの…??)
こんな長いものを振り回せるものなのだろうか。よく見ると、ハンマーヘッドの平らな面には魔法陣が刻まれており、先端部はそこまで大きくないが、とても重そうだ。
「うんっ!カッコいいでしょ!これをブィーンって振り回すんだ!」
(…テンションの高い長谷先輩にぴったり。)
色々な種類の武器があるんだなぁと灯里は感心して辺りを見回した。
ピストル、ライフル、ショットガン、細身のソードに短剣、日本刀、トンファーに棒…
どちらかといえば銃器が多いが、バリエーション豊かだ。
まだ自分に合った武器を見つけられていないので、これを機にいくつか試してみたことがないものにも挑戦してみたくなった。
……ちょっとハンマーは遠慮したいけど。
そうしているうちに全員集合し終えたようで、バディごとに車へ乗り込んでいく。
白瀬は千景と組むことになったようだ。
「じゃ、オレたちも行こっか。」
「はいっ」
長谷に促され、灯里も池沢へ向かう車へ乗り込んだ。
この時の灯里は、まだ知らなかった。
今回の緊急招集が、思いがけない事態の始まりになることを——。
つづく




