14. チームで闘うということ
無我夢中だった。
それでも、初めて穢れを浄化できたことは単純に嬉しかった。自分でも出来るのだと、少しだけ自信が持てた。
しかし、橘は表情は崩さない。
「報告された穢れは"単体"じゃない、"群れ"だ。まだいるぞ、警戒しろ。」
その一言で、灯里たちの高揚感は、一気に現実へ引き戻された。灯里と白瀬は周囲を見渡した。不穏な空気が漂う。
急に黒い靄が立ち込めた。
「白瀬、風魔法でこの靄を吹き飛ばせ」
「わかりました。風陣一の段、疾風」
白瀬が風を起こし、黒い靄を吹き飛ばした。すると、地面に20羽程のカラス型の穢れが現れた。
(うっわぁ…カラスが大量にいると気持ち悪ぅ…)
「予定通り、まずは千景と霧島の2人で直接攻撃、俺と一緒に白瀬は上方で待機だ。」
そう指示を出した橘は白瀬と共に風魔法で15メートルほど浮かび上がった。
その姿を見上げながら、千景がボソッと呟いた。
「いやぁ〜、何回見ても風タクシーって便利で良いわよねぇ〜。」
「風タクシー…?」
灯里が思わず聞き返す。
「だって、移動も追い込みも空中戦も全部風が運んでくれちゃうのよ?ずるくなーい?」
「聞こえてるぞー。」
上空から橘の呆れた声が降ってきた。
「はーぃ!すみませーん。」
千景は全く悪びれる様子もなく笑った。
(なんか…みんな、こういうやり取りするんだな…)
少しだけ肩の力が抜けた。
「じゃあ、私たちも行こっか!」
「は、はいっ!」
灯里と千景は穢れの群れに飛び込んでいった。
千景は浄化を纏わせた銃を取り出し、灯里は先ほどと同様に足に浄化を纏わせて走り出す。
先ほどと同じ要領で何体かはすぐに浄化できたが、残りはあっという間に飛び立ってしまった。
曇天の灰色の空に黒々とした汚れが浮かび上がる。
千景が下から銃を構え、数体に命中させる。銃から逃れるように穢れは橘たちが待ち構える方角へ飛び立っていく。
ーー
バサバサと宙に浮かぶ2人の方へ穢れが向かって飛んできた。黒い禍々しい空気が頬を掠め、ピリピリとした緊張感が漂う。
「白瀬、いけそうか?」
「はい。追い込んでもらえれば、空は遮るものがないのでまとめて浄化できます。」
「よし、じゃあ思い切ってやってみろ。」
橘の指示に頷くと、白瀬は印を結び、光魔法を展開した。
「光陣ニの段、閃光」
眩い紫色を帯びた閃光が曇天を染め上げる。
穢れが浄化の光に焼き切られ、灰となって空へ散っていった。
「うわ、すっっご…」
空を見上げていた灯里はあんぐりと口を開いた。上空から橘たちがゆっくりと下降してくるのを眺めながら、風属性はいいなと灯里は羨ましくなった。
トッと、橘が地面に降り立った。
「任務完了、だな。3人ともお疲れさん。いいチームワークだったぞ。」
「白瀬くん、すごかった…!あんなにたくさん、一気に浄化できるんだね……」
同じく地面に降り立った白瀬に灯里は声を掛ける。
殆ど全部、白瀬が浄化してしまったな、とちょっとがっかりしてしまった。最初の一体を浄化して、出来る気持ちになっていたが、あまり自分は役に立っていなかった、と灯里は肩を落とした。
「霧島、大事なのは浄化した数じゃないんだ。“対象を全部チームで浄化できた”ことが大事なんだ。
一人で十体浄化できる奴がいても、追い込み役がいなければ取り逃がすこともある。逆に、一体も浄化しなかった奴がいても、そいつがいたから全員が生きて帰れることだってある。
浄化師って仕事はな、誰が一番強いかを競う仕事じゃない。それぞれの得意を繋げて、誰一人欠けずに帰ってくる仕事なんだ。だから胸を張れ、霧島。お前も今日、ちゃんとチームの一員として戦えてたぞ。」
そっか…。だから浄化師は基本的にチームで戦うことになっているのか、と灯里は納得した。
みんな持っている浄化の型も、魔力の属性も違う、得意な部分を合わせて補完し合うことで、穢れを完全に浄化できればいい。
これは個々の優秀さを競う競争じゃない、人が住む環境を守る"仕事"なんだ、ということを灯里は学んだ。
「それはそうと〜、浄化して終わりじゃないぞ〜、帰ったら報告書があるからなー!」
ガハハハと笑って橘が言う。
(苦手なんだよなぁ、書類仕事…)
灯里はさっきよりも深く肩を落とした。
つづく
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
引っ越しのため、1週間ほど更新をお休みしておりましたが、7月から更新を再開します!
お休み中にもかかわらず、『環境保全局の浄化師』を読んでくださった皆さま、本当にありがとうございます。
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これからも灯里たちの成長を楽しんでいただけたら嬉しいです。
真白みこと




