11. 夜更けのラウンジ
13階のラウンジは24時間開いている。
21時、夜勤の浄化師たちが軽食を食べたり、はたまた業務が終わった者達が連れ立って飲んだりとそれなりに賑わいを見せていた。
— — —
ドサッと窓際の4人席の豪華なソファに恭弥が腰を下ろした。
目の前に座る東雲がニヤリと笑う。
「あれ、結構お疲れじゃない。そんなに面倒な会議だった?」
「上は頭が堅いな…」
恭弥は軽く天井を仰ぎ、疲れたように目を閉じた。
「もらってきたわよ、みんなの分!」
そう言ってウィスキーボトルを抱えた咲良がやって来た。その後ろではグラスと氷を橘が運んでいる。
「ありがとう、咲良。」
恭弥は目を細めて甘い笑みを浮かべる。
「ふんっ、その手には乗らないんだから、誰もがその甘いマスクを好きだとは限らないからね。」
「ははは、咲良は手厳しいなぁ、まぁほら3人とも氷入れたから、好き好きに注いで」
橘がグラスを回す。
「おつかれ」
それぞれグラスを掲げると口をつけた。
「白瀬くんと、霧島さん、任務同行きまったんだって?」
と東雲が橘に尋ねた。
「ああ、霧島はまぁ心配なところは多いが、何せ白瀬がもうほぼひとり立ちできるからな。流石だよ、努力するお坊ちゃんは。
周りも見えてるし、チームプレーも上手い。あとは何かトラブルが起きた時、ちゃんと動ければ本配属もできるだろうな…」
「ずっるーーーい、橘!私も新人ちゃん2人と触れ合いたかったのにぃ!恭弥が!私を2ヶ月もヨーロッパくんだりまで飛ばすから!」
結局内勤もほとんど教えられず、藍川に横取りされたとぷりぷり咲良が怒る。
「まぁ、他国からの大型重要防護壁修繕の緊急依頼でしたからね。最小人数派遣にするには、咲良さんが行くしかなかったですし…」
と東雲が言うと、ほらな、というように恭弥が咲良に視線を向けた。
むうううぅと唸りながら、咲良は橘が差し出したチーズを口に頬張った。
「霧島さんは大丈夫そう…?」
「ああ、広域浄化型が得意だったら魔法に付加させたほうが良かったんだが、なんだか肉弾戦向きなんだよな…怪我しやすい闘い方ってところがちょっと目が離せないな。
ただ、気配の察知が得意だし、いざとなれば防護壁も作れる。戦いながら防護壁出せるのってちょっとチートだよなぁ〜」
と橘は苦笑いをして言った。
「キャリアを重ねれば、あいつは化けるかもしんねぇなって思う時があるよ。」
凄いわねぇ!と咲良が恭弥に目配せをすると、恭弥は微かに頷いた。
「そうだ、咲良。灯里の苗字が恭弥と一緒の理由、俺、教えてもらってないぜ?」
「あ〜〜、えっとね〜、うーん。」
口籠る咲良に東雲がフォローを入れる。
「恭弥と灯里さんは遠い親戚みたいなものなんだよ。ほら、恭弥は元々"黒崎"だったでしょ?」
「あぁ、あの五大魔貴族サマのね…なるほどそういう曰くつきかい。
じゃぁ俺には関係ねーなー」
とニカッと笑って橘はウィスキーを煽った。
「"霧島"なんてそう珍しくもないだろ」
恭弥はそれ以上話を広げる気はないようだった。
「それよりも恭弥、白瀬くんの誤解は解かなくていいの?恭弥のこと目の敵にしてたけど…」
東雲が気遣うように問いかける。
「ああ、いいんだ。今さらだしな」
恭弥は目を伏せて小さく呟いた。
第一章 完 (二章へつづく)
第一章を読んでくださり、ありがとうございました!
社会人×現代ファンタジーという少し変わった題材ですが、灯里たちの日常や成長を楽しんでいただけたら嬉しいです。
第一章では、環境保全局の仲間たちとの出会いや、新人浄化師としての第一歩を描きました。
第二章では、いよいよ本格的な任務が始まります。環境保全局の仕事や仲間たちとの絆、そしてこの世界の秘密も少しずつ広がっていく予定です。
これからも、灯里たちの活躍を温かく見守っていただけると嬉しいです。
真白みこと




