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Episode30・(Ren Side)

連の闇の心。


【警告】

流血シーンが含まれます。

苦手な方はブラウザバックを推奨致します。



 願わくば

普通の人生を生き、歩みたかった。

平穏な日常を生きて、何時かは土に還る。


 幼い頃、

そんな細やかな平穏を送るのだろうと漠然と思っていた。

まだ幸せだった頃は、そう単純に思っていた。



 叶えたい夢もあった。

果たしたい目標もあった。

けれど、もう夢を抱いていたあの頃には、もう戻れない。


 

 どれだけ自分自身を傷付けても、満たされない。

どれだけ、自分自身に刃物を向けても、

傷を付けても終わりはない。

寧ろ、深みに嵌ってしまった。


 


 いつしか自分自身を痛め付ける事が、

生きている中での懺悔だと思い込むようになった。

所詮は『罪人の息子』『殺人者の息子』でしかない。


 あの日から

大罪を犯した女の血が流れている事を憎悪と感じて

この穢らわしい身体と存在が憎たらしく思い、傷を付けたくなった。


 (傷付いて、傷付いて、痛め付ければいい)


 最初はいつだったか。

きっかけはなんだったかさえ思い出せない。

 

 一度だけ、と決めた付けた傷は、止められなくなって、

懺悔と悔恨を身代わりとして抱き生きる青年に、

拍車を掛けずに青年を自傷へ走らせる事なんて、簡単な事だった。


 廉の両肩、背中は傷だらけだ。

縦横無尽の傷痕の一線は

見えない青年が抱き続けた思い生きてきた懺悔と悔恨の証拠。

誰にも言えない素性と吐き出せない無惨な思いの形。

身体に現れた心の傷痕。


(これでいい。傷付けばいいのだ)



 膝を落とし、ベッド脇に背を預けながら

切り裂いた右肩を古びた新聞紙できつめに押し付ける。

早く血が止まるように。


 セピアカラーになりつつある

灰色の新聞紙がみるみる赤に染まっていく。

闇色の瞳で、窓から見える夜の虚空の空を見上げた。


 鮮血は呼吸をするかの様に

腕を伝い歩きするかの如く、廉の腕を一筋、伝い落ちる。

血は留めもなく溢れ伝い古びた新聞紙を、鮮血に染めた。



(やり過ぎたのかも知れない)






 無慈悲な空には何も存在しない。

濃紺の夜空は、廉にとって闇の様に感じていた。

………まるで、廉の心を現しているかのように。





(………生憎、和歌にはバレてしまったけれど)




 けれど和歌には自傷を知られたのであって、

傷痕の意味は幸いなのか、悟られていない。

それが救いだった。


『この事、誰にも言わないでね』

『…………言わない』




 和歌に自傷が見つかって、

手当てした貰った時に呟いた言葉。

和歌は固くて、簡単に口軽く

そんな事を話す人物ではない事を知っている。


 何せ、幼少期からの長い付き合いだ。

彼女の素質も性格は知っている。






そう知っていたけれど、一応、口止めをしておいた。





 和歌は物静かに口を閉ざしていたとしていたとしても、

和歌の母親、育ての母親に知られてしまえば大事になるだろう。

和歌の母親を、彼女を失望も、悲しませたくはない。


 知られたくないのに、繰り返してしまう。

まるで毒薬みたいだ。




 誰にも見せない、

気付かれない廉だけが知っている傷であり、秘密だ。

表向きは何気もない凡人の青年を装いながら、

裏では罪と憎悪を晴らす為に、自身を傷付け続けている。





(これでいいのだ)



(これでいい。誰もが天罰を下してくれないのなら、

自分自身で手を下せばいいのだ)


 痛みも感じなくなった。

自傷の沼に堕ちている間の廉の心は酷く無感情で虚無だ。

そして自身の身体に流れる血に殺意ばかり湧かせている。


 血が止まり乾けば、そのまま放置している。

床に敷かれた無数に敷かれた色褪せた広告の紙や新聞紙。

其処には赤茶色に変色した鮮血を、蔑む瞳で見詰めながら、

横たわる。


 ベッドは形だけあるだけで、殆んど使っていない。

ふかふかとしたそれに横になる事は、罪人の

自分自身にとって分不相応、贅沢だと思うからだ。

冷たい床と毒素という名の枯れ、穢れた血と共に、

冷えてしまえばいい。

 



 自分自身がのうのうと生きている事は許さない。

怪我も傷も負わず、平穏無事でいる事も、

無論幸せを感じるなんて事はご法度だ。


 痛みを残しながら、自身を傷付け続け、消えない傷痕を残す。

同時に思い知るのは大罪の重さと、遺族の無念さ。

そして自分自身の虚無さ。




 もう夢も希望も持てない。

否、持つ事は許されないのだから。


 母親が殺人者となってから、全てを諦めた。

母親の存在がある以上、廉は自由を手に入れる事は出来ない。

否、赦されないものだと思い込んでいる。





 遺族の怒りや痛み、

大罪を犯した母親への憎しみを自分自身の身体に、ぶつける。

それが、今の身体に刻み込まれた傷の結果と言うべきか。



 けれど何時しか、もう廉はそうしないと、

生きていけない身体に成り切っていた。

それを、


____哀しみとして隠して。





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