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サキュバスとバンパイアと。

鈍感系主人公ではないレイジにサキュバスの魅了はどのように効くのやら…。

明日はEクラスとの騎士戦が行われる。


騎士戦とは騎馬戦の騎手に当たる生徒が槍に見立てた長い棒を持って、敵の騎士や騎馬を攻撃して騎士を落とせば勝ちだ。


各クラス5チームが出場しての3回勝負。

チームは1回ごとに入れ替えてもかまわない。


そしてこの勝負でクラスの持つポイントが加算もしくは減算される。

騎士戦に限らずそういったクラス対抗戦で発生したポイントを学期ごとに合計して高い順に翌学期からの新しいクラスが決まる。


ちなみにルーマニアは9月から学年が始まり6月上旬に終わるので、日本であれば4月下旬はまだ1学期と言いたいところだがルーマニアではもう学年末間近だ。


そして1年のFクラスは12月と3月の総合成績で最下位となってFクラスのままとなっている。


今までもほとんどFクラスが上のクラスに上がったためしはないらしく、AからEはまだ入れ替わる可能性があるがSとFだけは別格で1位と最下位が確定しているとも言われている。


「あと何回くらい対抗戦があるの?」

「最低週に1回はどこかのクラスと対抗戦があるっす」


そう教えてくれるのはこのクラスで一番最初に話してくれた巨人族のリア・アルデリアンだ。


「それと学年末である6月には学園全体の対抗戦があるっす」

「それは何をするの?」

「学園一周障害物競争っすね」

「どういうの?」


リアの説明によれば、学園の運動場や体育館やプールなどの運動施設はもちろん、教室や音楽室や美術室などの部屋や廊下に屋上、そして広大な裏山まで含めた壮大なスケールで行う障害物競走らしい。


その『障害』はそれぞれのクラスが担当し、他のクラスの走者を妨害する。


そして早くゴールした者から順にクラスの得点が加算され、脱落した者はクラスの得点から減算される…だそうだ。


「これでもしSクラスを全員脱落させてFクラスが全員ゴールすれば逆転の可能性だってあるっす!」

「それはすごいな!」

「でも実際に今までFクラスでゴールしたことのある選手はほとんどいないっす」

「妨害って何をするんだよ?」

「学園長が認めた手段ならなんでも許されるっす。例えば『テスト』っす」

「テスト?」


配られた問題を解かないと先に進めないのがテストの障害らしい。


同じクラスの仲間が教えることは禁止されているが、難しい問題を解けなくても簡単な問題がある。


その代わりに簡単な問題は難しい問題より何倍も量が多い。


「それからアスレチックとかも多いっすね」


プールの真ん中に浮き橋を作って水中から揺らすなどして妨害する障害らしい。


「あとは迷路とかお化け屋敷とか」


迷路はわかるけどお化け屋敷って邪魔になるのかな?


「バンシーとかレイスとかナイトメアとかお化けっぽい生徒がやるのかな?」

「そういう生徒も居ることは居るっすね。でも実際は特殊メイクをしたゾンビとかのほうが怖がられるっす」

「特殊メイクって誰ができるの?」

「映画部が得意っすよ。ハリウッド直伝の特殊メイクを代々伝えてるらしいっすから」

「それにしてもリアは色々詳しいんだな」

「あっしの兄貴に聞いてるっすからね」


おや意外と兄妹仲いいのかな?


「あとはメイド喫茶とか執事カフェが強敵っす」


お化け屋敷といい、なんだか文化祭になってないか?


「思ったより殺伐としていないというかほのぼのしてるな」

「今まであげたのは楽な方の障害っす」

「楽な方?」

「アスレチックで棒を持った生徒が追いかけてきたり、野外には落とし穴とかもあるっす」


怖っ?!

大けがしないのか?


「ここの生徒は純粋な人間も含めて結構丈夫っすからね。就学試験で体力テストがあるくらいっすから」


だよねー。

人外が半数も居る学校なら相当タフな人間じゃないと駄目だよな。


「あとメイド喫茶でスカートに忍ばせたナイフで攻撃したり、執事が足技で襲ってきたりするっす。もちろん武器に刃は付いてないっすよ」

「それもある意味メイドや執事らしいけど…」


どちらかというとマンガやラノベ寄りだな。


「ちなみにあっしの兄貴はサキュバスに魅了されてリタイアしたっす」


そんなのありなの?


「もしかしてレイジもサキュバスに魅了されたいとか思ってるっすか?」

「いや、そんなことはないよ。興味はあるけど」

「正直っすね?!」

「健全な男子高校生だからね!」

「自分で健全とか言うっすか?!毎晩嫁をとっかえひっかえしているって噂っすよ!」

「誰だよそんな噂流すの!」

「そうだよ!レイジは嫁さんたちと添い寝は出来てもそれ以上進めないくらい純粋なんだからな!」

「なあ、はやて」

「ん?何だいレイジ?」

「どうしてそんなこと知ってるのかなあ?」

「レイジくんのお嫁さんのひとりに聞いたんだけど、誰かは聞かないであげてね。もっと誘惑した方がいいのかな?なんて悩ませるくらいなんだからレイジくんが悪いんだからね」


うっ、はやてを問い詰めるつもりが俺の方に矛先が向いてしまった?!


でも仕方ないよね。まだ俺は高1なんだから。


添い寝で手を握って、うっかり朝抱きあってたとかくらいしかないから。


「サキュバスに興味あるならうちのクラスのラウラに声かけたらどうっすか?」

「ラウラって確かあの子だったよな」

「そう、ラウラ・フローレアっすよ」


ラウラという女子生徒は見るからにサキュバスらしい体形をしている。


胸とお尻は大きいのに腰はものすごく細く、大きな瞳と厚ぼったい唇。

三つ編みに編み込んだポニーテールが長く垂れて綺麗かつ妖艶だ。


俺の視線に気づいたのかラウラはニコッと微笑むと、舌を出し、唇をぺろりと舐める。


「ほら、ああやって男子生徒を誘惑してどこかに連れ込んで精気を吸ってるって話っすよ」

「精気を吸うって?」

「そ、それは…それを女の子に聞くっすか?」

「あっ、ごめん。だけどエッチなことじゃなくても精気を吸えるって話を聞いたことがあって」

「日本にはそんな人外が居るっすか?!」

「いや、もしかしたら今まで読んだ小説とかの話の記憶かもしれないけど」

「それならボクも覚えがあるよ。吸血鬼だけど血を吸うんじゃなくて触れるだけで相手の精気を吸って干からびさせるとか」

「吸血鬼はそんな怖いことしないもん!」


急にはやての話に割って入ってきたのはアリス・ナスターセ。


ここの学園長と同じ苗字だから彼女も吸血鬼なのだろう。

見た目は長身美女の学園長と全く違うけど。


「現代の吸血鬼は美しい花とか植物の精気を吸うの!それに普段は人間と同じ食事で済むんだからね!」

「わかったわかった」


そう言いつつ俺はアリスの頭をなでなでする。


「はうっ?!何するのっ?」

「あっ、ごめん。一生懸命主張しているのが可愛らしくって」


アリスの身長は130センチくらい。

吸血鬼って年を取らないとか以前に高校生だとこの程度の成長なのかな?


…胸だけは結構あるけど。


「レイジ、どこ見てるのさ」

「はやても気にならないか?」

「確かにアンバランスなのは魅力のひとつだって言うよね」

「だよな」

「何を言ってるの?!あたちのこと馬鹿にしてるでしょ?」

「違うよ。アリスは小柄で可愛らしいのに女っぽくて魅力的だなって言ってたんだよ」

「(ボソ)ボクはそこまで言ってないし、レイジってこうやって自然に口説くんだよねえ」

「えっ?あたちが女っぽくて魅力的?!まさかロリコン?!」

「おお、レイジの攻撃を跳ね返した!」

「何を感心してるんだよ、はやて。そもそも攻撃じゃないんだけど」

「そうじゃなくて、レイジって彼女の事どう思う?」

「クラスメイト?」

「じゃなくって、異性として」

「異性として魅力的だって言うと駄目なのかな?」

「あたちはこんなにちんまいから、好きだって言ってくる男はみんなロリコンだからね!」

「でも俺って小学生の嫁さんが居るんだけど」

「「え゛?」」


アリスとリアの眼が点になる。


「何歳の相手でも結婚できるってことは『合法ロリコン』っすか?!」

「わたちもこんな見た目で結婚出来る年齢だから『合法ロリ』とか言われたことがあるけど、まさかロリコン側に合法があるなんて知らなかったわ!」

「いや、そもそも俺はロリコンじゃないよ。単に女性として魅力的かどうかって視点で見るだけだからね」

「そんなに言うってことはわたちを嫁にしたいってことなの?」

「それはお互いよく知り合ってからの話でいいよ」

「レイジ、もう口説きにかかってない?」


確かにはやての言う通りかもしれないからひとまず話をそらそう。


「で、何の話だったっけ?」

「吸血鬼は怖くないって話をしてて、その前はリアのお兄さんがサキュバスに惑わされたって話をしてたよ」


おお、はやてはしっかり覚えてくれてるな。


「ラウラのこと呼んだかしら?うふっ」


熱い吐息を感じさせるような色っぽい話し方をしながらラウラがこっちにやってきた。


「さっき聞いていたけど、あなたってたくさんお嫁さんが居るのに未経験なのね。ふふっ、それならラウラが初めての女性ひとになってあげよっか?」


そう言って俺の頬にすっと手を伸ばしてくる。


「別にいいよ。急いでるわけじゃないし」


俺はそっけなく返す。


「そう。それならいいけど、ラウラはあなたみたいな強い男性はいつでも歓迎するわよ。うふふっ」


そういうと手をヒラヒラさせながらお尻を振るような色っぽい歩き方で自席に戻っていくラウラ。


「サキュバスってあんなにオープンなんだな」

「高校在学中にどれだけの男性と関係を持てたかの勝負をサキュバス同士でやってるとか聞くっすね」

「ちなみに巨人族としては高校在学中の目標とかあるの?」

「一族としては無いっすけど、あっしの目標は学食の全メニュー制覇っす!」

「おおっ、いいねっ!」


俺も思わず賛同する。


「俺の通ってる学園の学食はおいしいって評判なんだけど、毎日お弁当だから食べられないんだよな」

「愛妻弁当っすね」

「だからこの学園に来て初めて学食を食べたんだ」

「奥さんも留学してるのにっすか?」

「明日香先輩も俺と同じで寮に住んでるからお弁当とか作れないからね」


寮の調理場を借りるってマリア姉さんと明日香先輩が言ってたけど、断ったんだよ。


せっかく学食を食べられるチャンスなんだからね。


「そう言えば寮って二人部屋っすよね?もしかしてレイジとはやては同室っすか?」

「え?もちろんだけど?」

「そうっすか。それは色々はかどるっすね」


確かに勉強とか教えあえるから効率いいよな。


なんて鈍感系主人公みたいなことは言わないぞ。


どうせ俺とはやてが変なことしてないかとか思っているんだろうけど、友達同士だから何も無いからな。


本当だからなっ!

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