数日鍛えただけで超人(超人外?)になれるのは
今週は三日連続更新します!
〇第3者視点〇
レイジによるジェイソン達4人に対する放課後特訓は3日間続いた。
「よくやるなあ、ジェイソン達」
「あんなに頑張っても俺たちがEクラスに勝てるわけないのにな」
「でも、いつも威張っているあいつらがあんなに頑張っているのを見てるだけってのもなあ」
「じゃあ、お前も参加してきらたどうだ?」
「お前が行けよ…なあ、あれってなんだかおかしくないか?」
「何が?」
指差した先を見ると、4人が校庭の向こう側でタイヤ引きをやっている。
「何がおかしいんだよ?」
「いや、引っ張ってるタイヤ、昨日よりデカくないか?」
「そんな馬鹿な…ほんとだ」
「あれは大型トラック用のタイヤじゃないか!」
「知っているのかライジェン?!」
「普通乗用車のタイヤならゴムだけで8キロ程度。しかしトラックのは60キロだ」
「「げっ」」
それを聞いてクラスメイトたちはジェイソン達を二度見する。
「でも昨日より引くスピードが速くないか?」
「だよな」
「そんな2日や3日で成果って出るのか?」
「そういえば留学生のレイジはどこだろ?」
「昨日はタイヤ引きの後ろから整地ローラーを掛けてたよな」
タイヤ引きで痛んだ運動場を整地する為である。
「見た見た。しかもあれを押すんだぜ」
「タイヤ引きで減速するとローラーに轢かれるから死ぬ気でがんばったんじゃないのか?」
「怖っ!スパルタじゃん!」
「ん?えええっ?!」
「あれはっ?!」
「うそだろっ?!」
みんながジェイソン達の後方を見ると、そこには…
「「「ロードローラーだっ?!」」」
そう、普通の校庭ではお目にかからない道路工事用のロードローラーがあった。
運転席にははやてが乗りハンドルを握り、後ろからレイジがぐいぐいとそれを押していく。
「ライジェン、ロードローラーの重さってどのくらいだ?」
「たしか10トンくらいあったと思うぞ」
「「げっ」」
そのロードローラーがタイヤ引きに負けない速さでジェイソンたちを追いかけている。
「あれに混じりたいと思うか?」
「いや、さすがに無理だよ」
「でもあの虚弱体質だったロヴィまで、でっかいタイヤを引いてるんだぞ」
「やっぱり何か秘密があるのかな?」
そしてひとりふたりと運動場に出てレイジたちの特訓を見学し始めるクラスメイト達。
「よし!そこまで!休憩するぞ!」
レイジがそう言うと、はやてが4人にドリンクの入った大きな紙コップを手渡していく。
「かーっ、うめー!このドリンク飲むと疲れが吹っ飛ぶぜ!なっ、スネイル」
「本来の姿じゃなくても大きなタイヤくらい楽勝で引けるようになりましたね」
ジェイソンとスネイルはドリンクを飲みながら汗をぬぐっている。
そこにはいつもクラスを牛耳っている意地悪な彼らの姿は無かった。
「おかしい、いくら頑張ったと言えども短期間でこれほどの筋力が付くなんてありえない」
「ディスクはいちいち細かい事を考えすぎだよ」
「ロヴィ自身が一番変だと思わないのかい?俺たちたった3日ですごく力がついてるぞ」
「ぼくって生まれて初めて頑張ったんだよ。だからかなって思う」
「ぼくだってこんなに頑張ったのは受験の時以来だよ」
4人の中で唯一の常識人であるディスクは首を傾げ、一番ののんびり屋であるロヴィは何も考えていないようだ。
「もしかして、あの飲み物かな?」
「ねえ、レイジ!その飲物って俺たちももらっていいかな?」
「いいけど、今の君たちにはたぶんおいしくないよ」
「え?」
「どういうこと?」
レイジはクーラーボックスから大きなペットボトルを出すと、紙コップに注いでクラスメイト達に配っていく。
「飲みたい人は飲んでね。だけどたぶんおいしくないから一口だけだよ」
「なんだ、ケチなんだな……ぶっ?!」
「うげっ?何だこれは?!」
「めっちゃドロドロして飲みにくっ!」
みんな一口飲んで…いや、口に含んだけど飲み込むことができない。
「これは綿山家特製の栄養ドリンクで、激しい運動をしてもすぐに回復できるし、酷使した筋肉を回復・成長させてくれるプロテインやビタミンなどの栄養素がてんこ盛りだからね」
「運動しないで飲むと、濃縮したジュース以上に飲みにくいでしょ?」
「えー、はやてくん平気なの?」
「運動すればおいしいよ」
「はやてくんってロードローラーの運転をしてるだけだよね?」
「ううん、ボクもレイジと交代でロードローラーを押してるよ」
「「そんな細身で?!」」
スパルタと栄養ドリンクだけでこんなに鍛えられたのかとクラスメイトたちは思ったのだが実はそれだけではない。
レイジが神である久遠やロリーナやツバサやブランを嫁にしたことで『神気』を纏い始めたのだ。
本来は旦那であるレイジを守護するための『神気』なのだが、4柱もの神を嫁にしたことで濃くなり、『超神気』と言えるものになっていた。
そしてそれはレイジを慕う者たちにまでその恩恵を与え、通常の何十倍もの効率で特訓の成果が出てきているのだ。
ちなみにその神気は聖職者であれば見えるので、教師でありシスターでもある神野晶がレイジを『神様』と言っているのはそのためである。
しかしクラスメイト達は飴と鞭によってジェイソン達が変わったのだと信じ込んでしまった。
「レイジ!」
「レイジくん!」
「レイジさん!」
「レイジ!」
口々にレイジの名前を呼ぶクラスメイト達。
「頼む!俺たちも鍛えてくれ!Eクラスの奴らに勝ちたいんだ!」
「え?そんな目標じゃないけど?」
レイジはぽかんとした表情で言う。
「そんなの目標じゃないぜ」
「ジェイソンの言う通りですよ」
「不本意ながら、ぼくもジェイソンの意見に賛成です」
「おなかすいたー」
欲望に忠実なロヴィはさておき、ジェイソンもスネイルもディスクもEクラス打倒が目標ではないという。
「じゃあなんのためにやってるんだよ?!」
「決まってるじゃないか!」
そこでずいっと前にでてきたのははやて。
「ボクたちはSクラスに勝つためにやっているんだからな!」
「「「「なんだってええええええっ?!」」」」
この訓練をすればEクラスになら勝てるかもと思っていたクラスメイトたち。
しかしレイジやはやて、ジェイソン達の目標はそのはるか上だった。
「さあ、休憩は終わりだ。そろそろ次の特訓をしようか」
「待ってくれ!」
クラスメイトの1人がレイジの前に進み出る。
「本当にSクラスに勝てるのか?」
「もちろん。だって、みんな同じ高1なんだよ。努力して勝てないわけないだろ?」
にこっと笑ったレイジを見て、クラスメイトたちは心臓を鷲掴みにされた気分だった。
期待感と恐怖で。
「ほらほら、レイジの笑顔は嫁さんにしか通用しないから」
「友達には通じるんだろ?」
「もちろん、ボクには通じてるよ!」
「ありがとうはやて!」
がしっと抱き合う二人。
「あれが例の…」
「レイジ×はやてね」
「いやここはあえてのはやて攻めレイジ受けで」
「私は攻め受け両方向だと思うわ」
何だか腐った会話も聞こえていたがFクラスのクラスメイト達の気持ちは決まった。
「「「「俺たち(私たち)も特訓してください!」」」」
そしてレイジによる特訓は始まった。
ランニング、正拳突き、タイヤ引き、武術の基礎訓練。
さらには動体視力の特訓などもあった。
「今からピンポン玉に文字を書いて投げるから、文字を読みつつキャッチしてね」
ビュンっとレイジがピンポン玉を投げると、ジェイソンに当たる直前でぐいっと曲がる。
「変化球だと?!」
ジェイソンはピンポン玉をキャッチしそこなって弾いてしまう。
「ピンポン玉は簡単にカーブとかかかるから油断しないでね」
「でも文字は読めたぜ!『リンゴ』だ!」
もちろん実際はリンゴを意味するルーマニア語『măr』と書かれている。
「次っ!」
「うわあ、取れないよ!それに何て書いてあったの?」
スネイルはキャッチできないばかりか読むこともできなかった。
「じゃあ、今度は読みやすいように軟式テニスボールにするね」
ひゅんっ!
「うげっ?!」
顔面にボールをくらって吹っ飛ぶスネイル。
「大丈夫かスネイル?!当たらないように投げているのになんでぶつかっていくんだ?」
「正面じゃないと見づらいじゃないか。それと文字は見えたよ!『トマト』だっ!」
「うう、まだ読めないよお」
相変らずロヴィは物事の習得に時間がかかる。
それでも時間を掛ければ神気の影響もあり徐々に習得できていく。
「うーん、バスケットボールでも駄目なのか」
「レイジ、ボールに回転を掛け過ぎなんじゃない?」
「じゃあ、はやて頼める?」
「うん、ボクにまかせて」
ひゅん
「見えたっ!(がしっ)取れたっ!…えっと、なんだっけ?」
「見えたんだよね?」
「うん。だけど数字がたくさんあって」
「え?」
レイジがはやての投げたボールを確認すると『8291290』と書いてある。
「何で数字?」
「こうすると記憶力もあがるでしょ?」
「はやてナイスだ!それ採用!」
「いくよ、ディスク!」
「いいよ!…見えたっ!(がしっ)取った!答えはフランス革命!」
「はやて、今度はいったい何を書いたの?」
「今習ってる世界史の問題だよ」
「じゃあ俺にも投げてみてよ」
「いいよ」
はやてが文字を書いたピンポン玉をレイジに投げつける。
「(ぱしっ)うっ?!」
「レイジ、答えは?」
「これは難しいな…『295×312』だから…えっと…だから…うんうんうんうんうん、で、92040かな?」
「うそっ?レイジって3桁の掛け算を暗算でできるの?!」
「いや、295を312回足したんだ」
「まさかの力技?!」
『脳筋であるマッチョはすなわち全身が脳である』というどこかで聞いたフレーズを思い出したはやてだった。
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