フラグ回収とか悪役はやらなくてもいいから!
古代中国編完結!
千頭の馬の先頭に立って戦闘を命じたのは死にかけのはずの始皇帝だった!
なんて言葉遊びをしている暇はない。
俺たちは泰山に入ってすぐに始皇帝の精鋭に追いつかれてしまった。
『もっと奥に来るのだ!まだそこでは我が力は届かぬ!』
仕方ない。
派手に暴れるしかないか。
「みんな先に行っててくれ。俺が足止めするから」
「それなら我らも!」
「いや、俺一人の方がいい」
がしっ、ぐぐぐっ
「レイジ!それは数百年以上生きている大木ぞ!抜ける訳が(ズボッ)抜けたア?!」
俺は大木を引っこ抜くと、突進しながらそれを振り回す。
「確かにあれでは我らは足手まといぞ」
「今のうちに行くでござる!」
賛族の5人とアヤメが足の遅い初音ちゃんや斎姫や瑠璃を抱えて…あっ、明日香先輩まであの面々だと遅いうちに入るのか…あっという間に山の奥に行ってしまった。
「貴様、何者だ?なぜ朕の持ち物を奪う?」
「彼女たちはお前の持ち物ではないっ!俺の嫁だっ!」
「何だとおおっ?!」
「「「「えええええええっ?!」」」」
始皇帝はともかく、なんで兵士まで驚いているんだ?
「き、貴様、賛族の女はアソコが強すぎて男のモノをすりつぶすのだぞ!」
それって噂だよね?
本当だとしてもそれ聞いていいの?
聞いたらセクハラだよね?
「陛下、こやつはまるであの時の賛族の長のような怪力ですぞ!」
「まさか賛族の生き残りかっ!」
「まあ、そういうことにしてもらってもいいけど…俺の嫁に手を出そうとするなら、ここは通せないぞ」
「ええいっ!弓だ!弓を射掛けろ!」
騎馬隊が持ってきた弓なんてたかが知れて(ビュン!)…前言撤回。
強弓が俺の顔を貫こうとしてとっさにかわす。
「なるほど、名のある将も居るのか。だけど悪いな。俺は…」
がしっと土を一掴み握りしめる。
「嫁たちのためにも負けられないんだよっ!」
ヒユンヒュンヒュン
バキバキバキッ
ビュン!バキッ!
「土と小石で矢を打ち落とすだと?!」
いくら強力でもマリア姉さんのマッハデコピンよりはるかに遅いし威力も低い。
地面を掴んで投げる『弾幕』で矢は全て撃ち落とせるし、万が一突破してきてもかわすのはたやすい。
「死ねええええっ!」
おっと、木を足元に置いたから突撃してきたか。
「だがあまいっ!」
俺は足元の大木を蹴り飛ばし、先頭の10騎を一気に吹き飛ばしつつ、その後ろの騎兵たちも巻き添えにする。
「おのれっ!それならば『隷たちよ!朕の命令に応えよ!』」
ん?何をするつもりだ?
タタタタタタッ
凄い速さで山を下ってくる紅たち5人。
「みんな聖域までたどり着けたか?」
「……」
「紅?」
「紅よ、蒼よ、白よ、黒よ、そやつを殺すのだ!」
「「「「はっ!」」」」
何だって?!
何かの力で紅たちを操っているのか?!
とりあえず騎兵の真っただ中に飛び込み、襲い掛かってきた紅たちの攻撃を、
「騎兵バリアーっ!」
「騎兵シールドっ!」
「「ぎゃああっ!やめろおおおっ!」」
と、そこらにいる騎兵を掴んでぶつけることで受け止める。
しかしさすがに4人相手は分が悪い。
力ずくでやって怪我とかさせられないし…さてどうするか?
俺は駆け出して名前を呼ばれずにじっとしている『闇』を掴むとそのまま木の上に上る。
「なっ?居ないだと?」
「どこに行った?!」
皇帝や騎兵が辺りを見回している間に俺は木の上で闇を正気に戻そうと試みる。
急がないと紅たちなら闇を見つけられるかもしれないからな。
「とはいっても、どうすればいいんだろ?」
キスしたら目が覚めるなんて演劇やマンガじゃあるまいしね。
「陛下、ご命令を…ご命令を…」
うわごとのように言っている闇。
「そうか!それだ!」
俺は缶バッジ型レシーバーを取り出すと、初音ちゃんを呼び出す。
「頼む、皇帝の声色で命令してくれ!」
『なんて言うの?』
「………だ!」
『りょーかいっ!』
俺は地上に着地して抱えていた闇を下ろすと、向かってきた紅たちを一人ずつ捕まえてはレシーバーの声を聞かせる。
「…レイジ?!」
「…御屋形様?!」
「…レイジ様?!」
「…レイジさん?!」
よし、全員正気に戻ったな。
「何をしておる!朕の言うことを聞くのだ!その男を殺せ!」
「それは聞けぬぞ」
「そうだな」
「聞けないわね」
「無理…」
「そんなこと聞けないわよ」
5人返事しているけど、闇を除いた4人しか把握されていないんだろうなあ。
「なぜだっ?!隷紋はたやすくは消せぬはずっ!」
「種明かしはしないっ!自ら不利になることはしないからなっ!」
実は『朕の言うことを今後一切聞くな』と言わせたのだ。
本人でなくても声が一緒なら命令できたみたいで助かったがな。
「レイジ、ここからは我らに任せろ」
「賛族族滅の恨み、ここで晴らしましょう!」
「「「おお!」」」
任せろと言われても嫁さんが危険な目に遭うのを傍観しているわけにはいかないんだけど。
『心配は無用だ』
あれ?白虎神様?
『聖地まで来た彼女たちに我の力を与えた。故に一騎当千だ。見よ』
凄い速さと力で騎兵を打ち倒していく紅たち5人。
確かに出番は無さそうだけど…。
「父の仇っ!死ねっ!…あうっ?!」
「紅様?!」
慌てて蒼が紅を抱えて引き返してくる。
「ふっ、愚か者め。朕の命令を聞かなくなっても、朕を殺そうとすればその命は尽きるのだ!」
「レイジ…」
俺の名前を呼んでがくっと首を垂れる紅。
「紅!しっかりしろっ!おのれえええええええっ!」
「ふっ、そんな奴隷のために何を怒るのだ?ひ、ひいいいいいっ?!」
俺の顔を見て恐れおののく皇帝。
「ヒヒイイイインッ?!」
「ヒヒヒイイインッ?!」
さらに馬たちが暴れてパニックを起こす。
「くっ、来るなっ!」
俺は落馬した皇帝に近づき、振り回していた剣を素手で掴み取る。
『そこまでだ』
白虎神様の声がして我に返る俺。
『紅は無事だ。我の力で命はつなぎとめておる。急ぎ未来に戻って隷紋を消してもらうのだ』
「わかりました!」
俺は紅を抱えると一気に山を駆け登った。
「みんな、すぐに未来に戻るぞ!」
「パンとブドウジュースは用意済よ!」
俺たちはそれらを食べ、紅の口には俺が口移しで入れてやる。
「んっ」
よし、飲んだな。
『では、未来へ送ろうぞ!』
そして俺たちの古代中国での冒険は終わった。
俺は家に帰ると古代中国、秦の歴史を調べていた。
「どこか歴史が変わったりしたのかな?」
「歴史はそう簡単には変えられないのじゃ。しかしそこにある兵馬俑の中身はおそらく斎姫ではなく豚の骨になっているじゃろうな」
「久遠、それならお父さんがこれを送ってくるって過去も変わらないの?」
「いや、過去に飛んだレイジを基準として改変がされたのじゃから、たった今、兵馬俑の中身が変わったのじゃ」
「そういうものなのか?」
「難しく考えても仕方ないのじゃ。もし何かあったらまたその時に考えればよいだけじゃの」
さすが久遠は神様だな。
そういうところは説得力がある。
「それにしても斎姫は嫁にしないのじゃな?」
「そういうのは落ち着いてからでいいと思うんだ。まだ助かったばかりだからね」
とりあえずうちでゆっくりして心の傷を癒してもらわないと。
「それと、紅たちの隷紋を消してくれてありがとうな。さすが稲荷神様!」
「ふふん、もっと褒めても良いのじゃ」
ふんぞり返る久遠の頭とキツネ耳をモフりながら撫でてやる。
「そ、それなら全身を頼むのじゃ」
ぽんっと子狐の姿になった久遠の全身を思う存分モフる。
久遠はお腹のあたりを撫でると特に喜ぶんだよな。
「それならば我もやってもらおうか?」
「え?」
俺と久遠が声のした方を向くと、大きな白虎がのっそりと部屋に入ってきた。
「白虎神様?!」
「白虎神じゃと?!」
「我はお主の強さに惚れた」
ボンッっと音を立てて、煙と共に美しい白髪の女性が現れる。
いわゆるチャイナ服だがその胸の大きさは見たことが無いレベルだ。
というか白虎神様ってハスキーボイスの女性だったのか?!
「我の事も嫁にするがよい。お主にはその資格がある」
そう言うと俺を抱きしめて大きな胸に顔をうずもれさせる。
「はううっ?!」
天国がここにあったのか?
俺は思わず放心してしまう。
「レイジ!レイジ!しっかりするのじゃ!」
慌てて人間の姿に戻って俺を引っ張る久遠。
「稲荷神の娘よ。奪い返したくば我くらいの包容力を持つのだな」
「わ、わらわはまだ子供なのじゃからそんなに胸は無いのじゃ」
「それでも我より多くの…を持っておるではないか」
「そ、それはまだ使えぬのじゃ!」
使えないって何だろ?尻尾の話かな?
もしかすると将来の久遠は九尾みたいになって、モフモフ9倍かも?!
「我は4つある…をそのまま人間の姿に投影しておるからこのように豊満なのだぞ」
「駄目なのじゃ!いくら8つあっても人間の姿になってそれを触らせるのは恥ずかしいのじゃ!」
「だからキツネの姿で触ってもらっているのだな?」
白虎神様がそう言うと久遠の顔は真っ赤になる。
「そ、それは…たまたま偶然なのじゃ!不可抗力なのじゃ!」
「えっ?久遠ってもう尻尾が8つあるの?」
「なっ?!レイジ、聞こえておったのか?!」
「九尾みたいに9本になったらいいなと思ったけど、そっか、もう尻尾が8本もあるのか」
「いや、それは尻尾ではなく、ちく……そ、そうじゃ。尻尾の事じゃ。でもまだまだ未熟じゃから見せたり触らせたりすることは出来ぬのじゃ」
「いつかモフらせてよ」
「うむ。楽しみに待っておるのじゃ」
こうしてまた新しい嫁が増えた。
「そういえば白虎神様って何て名前ですか?」
「我の名は『ブラン』だ」
「どういう字をあてるんですか?『武蘭』?」
「『舞乱』ではないかの?」
「『ブラン・ティーグル』だ。漢字ではない」
「「え?」」
「さきほどジャンヌという者に頼んで『白虎』をフランス語にしてもらったのだ」
まさかのフランス語の『白虎』直訳?!
「ビャッコよりブランのほうが可愛いであろう?」
「あ、うん。確かに」
「そ、そうじゃの」
ブランは雄々しい口調に反して包容力と可愛らしさがあるんだなと思うのだった。
「…の数が4倍ならわらわにも勝ち目が?いや、そもそものボリュームが足りないのじゃが…」
「どうしたんだ久遠?悩み事か?」
「な、なんでもないのじゃ!」
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