いきなり交換留学?!そして学園長の登場!
こんな学園長でいいのかと。
だが後悔はしてない。
古代中国から帰って久しぶりにのんびり…したかったけど学校なんだよね。
古代中国で10日くらい居たけど、こっちでは時間は数分しか進んでいないし。
「あー休みたい」
「レイジがそんなことを言うとは珍しいのじゃ」
「レイジくんは兵馬俑の工房で働きづめで、泰山まで歩いたりもしたからね。よしよし」
「わらわもするのじゃ」
マリア姉さんと久遠が俺の頭を撫でてくれる。
というか久遠が撫でているのは後頭部なんだが。
「でもアニキ、ずる休みしたら駄目よ」
「わかってるよカレン」
気合を入れて玄関を開ける。
「やあ!」
「あっ、はやて、おはよう!あれ?なんでここに?」
「今日は一緒に通おうかと思って、バスから早めに降りたんだよ」
「そっか」
「ところでレイジは疲れているのかな?」
「えっ?わかるの?」
「そんな気がしたから」
「ちょっと疲れてるだけだよ。でも体力はあるから大丈夫さ!」
「それなら問題ないね。でも困ったらボクに言ってくれよ」
「ああ、その時は頼むよ」
そして俺ははやてと登校する。
「ねえ、マリアねえ。やっぱりあの人って女の子じゃないの?」
「私もカレンみたいにそう思ってレイジくんに聞いてみたんだけど、体育の授業でシャツまで脱いで着替えていたから間違いなく男だって」
「ぺったんこなだけじゃなくて?だって美少年だけど髪を長くしたら美少女っぽいから」
「うーん、誰でも嫁にできるのなら、同性もアリなのかな?」
「えーっ?そんなことあったら…クラスの『腐』に連絡して薄い本を書いてもらわないと」
「カレン?!」
「あっ、うそ、冗談だから」
「それ、出来たら私にも回してね」
「はい?」
何だか後ろで不穏な会話が漏れ聞こえているけど…というか丸聞こえだよ。
「あはは、やっぱりボクって女の子って思われてるんだ」
「ごめん、うちの姉妹が変なことを言って」
「慣れているからいいよ。ところでレイジは100人の嫁さんにするのは女の子限定?」
「え?」
「女の子以外はどうなのかなって」
「う…女の子だけがいいんだけどなあ」
「はははっ、やっぱりそうだよね。ごめんね変なこと聞いて」
まさかはやては俺に気が?…なわけないよね。
でもはやては本当に美少年にも美少女にも見えるよなあ。
そんな会話をしつつ、広重も合流して3人で登校する。
うーん、友達と登校ってのはいいなあ!
「広重、部活の調子はどう?」
「ああ、まだこれからだけどね、うまくやっていけそうだよ」
「女子サッカー部のコーチは大変だろうけどな」
「みんな素直でよく話を聞いてくれるから大丈夫だよ」
広重はイケメンだからよけいだろうね。
それ以前にサッカー選手として有名だったってことが大きいのだろうけど。
そして学園に到着。
広重は別のクラスなのではやてと自分のクラスに入る。
「学園長がワラキアから帰ってきたんだって」
「へえ、どんな学園長なんだろ?」
「すっごい美人らしいけど、怖いんだって」
「興味あるなあ」
何て声が教室のあちこちから聞こえる。
「はやて、ワラキアって何?」
「あれレイジはワラキアを知らないの?それはルーマニアにある聖ワラキア学園のことで、この聖トランシルバニア学園の姉妹校だよ。学園長がそこにしばらく出張していて、今日帰ってきたみたいだね」
「ふうん」
「興味無さそうにしてるけどあそことは交換留学生を頻繁にしているから、ボクやレイジもそれにあたるかもしれないよ」
「えっ?それってあてられるものなの?」
「誰が留学生に相応しいかは学園長が判断するんだよ。留学は短くて2週間、長ければ1年以上ルーマニアに行くことになるね」
「ルーマニアって英語だっけ?」
「そのままルーマニア語だよ。でも向こうの生徒も英語や日本語を勉強しているから英語さえやっておけば困らないみたいだよ」
「そうなんだ」
「というか、この学園のガイドブックに書いてあったけど、ここを受けるって決める前に読んでないの?」
「いや、とりあえずマリア姉さんと一緒の学園だからいいかなって思って」
「そうなの?じゃあ、学園長を見たらもっと驚くかもね。くふふふふふ」
え?何?
怖いって言われていた学園長、そんなに驚くような人なの?
というわけで学園長が帰ってきたので臨時集会が開かれた。
「ねえ、どの人が学園長?」
「あそこのおでこがちょっと広くて背の高い人」
「あっ、あの人?すごい美人だね。背も高くて日本人離れしてるって言うか」
「母親がルーマニア人で父親が日本人なんだって」
「へえ」
「その母親から30年前にこの学園を引き継いだんだそうだよ」
「え?」
30年前?
遠目から見ても学園長は30歳にすら見えないぞ?
「どう考えても50歳は過ぎているはずなんだけどね」
「それで驚くって言ったのか」
「え?いやいや、そのくらいでは別に、ね」
「?」
そして学園長が演壇に登場した。
「学園長、マイクを」
「いらん」
そう言うと学園長はすうっと息を吸い込み、
「ワシが聖トランシルバニア学園学園長、江田島平八蜜であるうううっ!!!!!!!!!!!!!!」
ズガガガガガガガガガガガガガアアアアアアンンッッッ!!!!!!!!
講堂は揺れ、窓ガラスがはじけ飛んだ。
「以上っ!」
そして江田島平学園長は降壇した。
「な、なんなんだよこれは?」
「うわさに聞いていた以上だね。耳が痛くなったよ」
「というか、あれで話は終わりなの?」
「あの言葉に色々な気持ちを込めているんだって」
「う…それならもっと真剣に聞くべきだったなあ」
興味本位で見ていたから真剣みが足りなかったかも。
「では、続いて、交換留学生の発表をします」
「え?今から?」
「呼ばれた生徒は壇上に上がってください」
「俺たちは入学したばかりだから選ばれないよね?」
「さあ?わからないよ」
俺ははやてと一緒に誰が選ばれるのかワクワクしながら見守る。
「綿山マリアさん、永見明日香さん」
「あっ、マリア姉さんと明日香先輩だ」
「お姉さんとお嫁さんが居なくなると寂しくない?」
「そ、そんなことないぞ。あれ?明日香先輩が俺の嫁って言ったっけ?」
「え?あ、そ、それは学園内では周知の事実だよ。だってレイジの奥さんに告白したって無理だからそうやって情報が流れるんだよ」
まあ嫁さんたちにちょっかい出されないならそのほうがいいのか。
「綿山レイジくん、天竜院はやてくん、以上です」
「「は?」」
はやてと俺の声がハモる。
「おい、呼ばれたぞ」
「嘘だよね?あっ、手招きされてるよ。行かないと」
「そ、そうだな」
俺は名前を呼んでくれた先生の元に急いで行く。
「呼ばれた4人は壇上に立ちなさい」
壇上にマリア姉さん、明日香先輩、俺、はやての順で並ぶ。
マリア姉さんは成績優秀な生徒会長だし明日香先輩は部活で活躍しているから選ばれるのわかるけど、何で俺たちが?
とりあえず、壮行会みたいなのが急遽催されて俺たちは送り出されることになった。
「では4人とも学園長室に行きなさい」
ここが学園長室か。
「すごく立派なドアが付いているんだな」
「それよりもガラスを見るといいわ」
「マリア姉さん、ガラスがどうかしたの?」
「特製の強化ガラスよ」
「もしかして学園長が叫ぶと割れるから?」
「そうなのよ。それなら講堂もそうしてほしいのだけど、あそこのガラスは割れても下に落ちない仕組みになってるから」
「え?どういうこと?」
「割れて吹き飛んだように見えるけど、落ちてこないで自動修復するのよ」
何それ不思議。
どんな仕組みなんだろ?
「学園長!綿山マリア以下4名、参りました!」
「うむ!入れ!」
中から力強い返事があり、マリア姉さんが扉を開けてくれる。
「よく来たな、諸君。ワシが聖トランシルバニア学園学園長、江田島平八蜜であるっ!」
その声量で学園長室がビリビリと揺れる。
うーん、これだけで言いたいことってわかるのかなあ?
なんとなく俺自身を試されているような気はするけど。
「ふむ、やはりな。先ほど演壇から見ておったが、ワシの声に動じなかったのはお前たち4人だけだ」
「まさかそれが選抜理由でしょうか?」
「生徒会長よ、その通りだ。今回の選抜理由はそれだ」
「そっか、毎回同じならマリア姉さんが選ばれたことあるはずだもんね」
「ふむ、お前が綿山レイジか。確かに父親に似て良い体つきと肝っ玉をしておるようだな」
「お父さんを知ってるんですか?」
「お前の両親なら何度か顔を合わしておる」
そうなんだ。
うちの両親って色んな所に顔が効くんだな。
「さて、今回の交換留学生の趣旨だが…」
どうやら留学のたびに趣旨が違うらしい。
「学園同士の力比べだ。故に交換留学生というが、まずはこちらから代表を送り込み『勝負』を行い、君たちが帰ってくる時には向こうの代表と一緒に帰ってきてもらってこちらでまた『勝負』を行うのだ」
「勝負?」
「勝負の内容は現地の学園長が決めることとなっている。だがどんな勝負でも諸君なら聖トランシルバニア学園の名を穢すことなく頑張ってくれるものと信じておる」
いったいどんな勝負なんだろうか?
俺に当たる勝負が頭脳系じゃなければいいけど。
「あの、ボクは知力も運動能力とかもごく普通なんですけど…」
「天竜院。ワシの学園に通うからにはいつまでも普通でいてはならんぞ」
「そう…ですか…」
あれ?はやての様子が変だな?
普通じゃだめって言われて落ち込んだのかな?
「ともあれ、留学は今度の土曜日に出発して月曜日から聖ワラキア学園に通ってもらうぞ」
「わかりました」
「はい」
「はい」
「…はい」
俺は今日の下校もはやてと一緒だった。
ちなみに広重は部活、マリア姉さんは生徒会の仕事だ。
「なあ、はやて。学園長の言ったことなんて気にするなよ。自分のペースでやればいいんだからな」
「ううん、学園長が言ったのはがんばれって意味じゃなくて遠慮するなって意味だよ」
「え?どういうこと?」
「こう見えても、ボクはレイジより力が強かったりするんだ」
え?嘘だよね?
こんなに腕細いのに?
「ちょっといい?」
俺ははやての腕を掴んでみる。
「お?えええええ?」
何これ?
はやての腕を引っ張っても動かない?
「じゃあ、ボクの番だね」
ぐいっ
「うおおおおおっ?!」
俺は力づくで転ばされそうになって慌てて合気で踏みとどまってはやてを逆に浮かせる。
「あらーっ♪」
はやては楽しそうに一回転して着地した。
「やられちゃったね。やっぱりレイジはすごいや」
「いや、待ってくれよ。はやてってこんな細腕で俺より力あるのか?」
「まあ、ね」
「すごいなあ。人は見かけによらないもんだなあ」
思わずはやてを見直してしまった。
それに今だって一回転しながら目もつぶらないでずっと俺の顔を見ていたんだぞ。
まるで宙返りに慣れているかのように。
「もしかして向こうで少しはレイジにボクの本気を見てもらえるかもね」
「そっか、期待してるよ!俺も頑張るからさ」
「レイジこそいつも通りで十分だよ」
そして俺は家に帰ってから留学の準備を始めるのだった。
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