表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

35/65

今助けるからね!

ようやくですね!

いよいよ決行の時だ。


今夜、俺たちは斎姫を助ける。


ただし、誰がやったのかを知られないようにしないといけない。


なぜなら俺や俺の嫁たちが世話になっている工房やお店に迷惑をかけるどころでは済まないからな。


だからまずは俺もみんなも仕事をやめますと言ってお別れをしてきた。


そしてあらかじめアヤメが探し出してくれてあった近くの空き家に集まっている。


「誰にも迷惑を掛けないために『何も問題はなかった』という風に見せかけるからな」

「本当なら堂々と力づくで奪いたかったでござる」

「忍者的にどうかと思うけど、ね、初音ちゃん」

「瑠璃お姉さまの言う通りだから『忍者として陰からこっそり奪うでござるニンニン』って言わないとね!」

「相変わらず初音ちゃんの声真似はすごいわね。アヤメさんそっくり」

「初音殿も良い忍者になれるでござるな、ニンニン」

「なあ、アヤメ。そのニンニンってまさか初音ちゃんに教わったのか?」

「そうでござる。忍者たるもの『ニンニン』で締めくくるべきと聞いたでござる。ニンニン」


やっぱりかっ!

この前の連絡の時にいつからそんなこと言うようになったのかと思ってたけど…まあ忍者らしいからいいか。

昔旅行で伊賀の忍者屋敷に行った時、案内してくれた忍者が「…でござるよ。ニンニン」って言ってたくらいだからな。


ともあれ作戦はこうだ。


まず夜中にこっそり工房の倉庫に忍び込み、斎姫の入った兵馬俑…強兵筒を運び出し、見つけておいた空き家の中で斎姫を救出し、代わりに肉屋で買ってきた豚の頭や臓物を放り込んで、口の所に缶バッジ型レシーバーをセットしておく。


そして初音ちゃんが斎姫の代わりに苦しむ声を出して皇帝を信用させて、俺たちは斎姫と一緒に現代に戻るってわけだ。


もちろんその空き家には賛族の5人も集まる予定になっている。


さあ、やるぞ!





工房は貴重品が置いてあるわけではないから鍵など掛けていない。


だからあっさりと中に忍び込める。


「よし、運び出すぞ」


俺たちは兵馬俑を運び出し、すぐ近くの空き家に身を潜めてその中から斎姫を救い出す!


「口だけじゃなくてお尻の所も穴をあけてあるのね」

「そりゃあ用は足すだろうからな」


大きなお尻のほうの穴を広げてよいしょと斎姫を引っ張り出す。


「…あ、あなたたちは?」

「姫を救いに来た者だよ」

「えっ?誰に頼まれたの?」

「神様…と言って信じてもらえないよね?」

「誰でもいいの!助けてくれるなら!でも、わたしはどこへ行けばいいの?神様の所?」

「その神様もいる俺の家に来てもらうけどいいかな?」

「えっ、あっ、はい。もうあの皇帝に合わなくて済むのならどこにでも連れて行ってください!」


服を着替えさせて食事をさせたりして斎姫を落ち着かせつつ、兵馬俑に肉を詰め込み…あれ?


「カレンからもらってきた『万能接着剤』って確かに土でもくっつくけど、元の通りの見た目にはならないぞ?」

「新しい土を足したら?」

「それだと乾いていないから割れてしまって、中が見えてしまうよ」

「よく考えたら、その接着剤って高温で駄目になったりしないの?」

「カレンの事だからその点は大丈夫だと思うけど…困ったな」


「やはりそういうことだったか、うごっ?!」


「?!」


振り向くと戸口に誰かが立っていた。

そしてそれを察知したアヤメが一瞬でそいつの腹に一撃与えて昏倒させた。


「あっ、親方?!どうしてここに?!」

「えっ?工房の親方でござるか?!」


アヤメが活を与えて親方の気を取り戻させる。


「親方すみませんでした」

「まったく、何がどうなってるんだ…いや、それよりもやはりレイジは姫様を助けに来ていたのだな?」

「バレていましたか」

「普段から倉庫のほうばかり気にしているから丸わかりだったぞ」

「あ、あはは」


何やってるんだ俺。


「姫様の代わりに豚とかを押し込んで焼くのはいい考えだな」

「でも壊した部分が戻せませないんです」

「ならこっちへ来い」


親方は俺たちを先程の倉庫に連れていく。


すると奥の方に斎姫が入っていたのと同じくらい小さな兵馬俑が置いてあった。


「俺もこいつと入れ替えて焼いたふりをするつもりだったんだ。しかし肉の焼ける匂いや声がしないと怪しまれると思ってな」

「それならこれで」


俺は缶バッジ型レシーバーを取り出し、初音ちゃんに話してもらう。


『いやあっ、あついっ、くるしいっ!』

「これは姫様の声?!いったいどうなっているんだ?」

「説明は勘弁してください。でもこれを口元に見えないように付けておけば、焼いている間に声を出せるんです」

「そうか、ありがとう。これで俺も人でなしにならずに済む」

「いえ、親方は立派なお方ですよ」


俺たちはすでに乾いている兵馬俑に肉を詰めレシーバーを取り付けて朝を待った。



本当は物陰から様子を窺いつつ初音ちゃんに話させるつもりだったが、親方の計らいで焼き場の近くの小屋を利用させてもらえることになった。



兵馬俑は大きすぎて普通の窯では焼けないため地面を掘って作った窯に並べて焼くそうだが、今回は皇帝の命令で特別に目に見えるように露天焼きをするらしい。



そしてついに始皇帝と紅たちがやってきた。


小屋から様子を覗き見るのはアヤメの役。

俺たちではうっかり見つかりかねないからな。


「始皇帝の顔色が悪いてござる」


斎姫が毒を盛ったと聞いたけど、そのせいかな?


「では、火を掛けます」


藁は一瞬で火を広げ、木くずに引火し、薪を激しく燃やした。


『ああああっ!いやあああっ!助けてえええっ!』

「どうだ、斎姫よ!苦しかろう!だが、朕の味わった苦しみはそんなものではないぞっ!」


それからしばらく斎姫のフリをした初音ちゃんが声を出していたが、レシーバーが熱で壊れて声が出せなくなった。


「ふふっ、人の肉の焼ける臭いは久しぶりだな…むう、何だか腹が減ってきたぞ」


焼き豚の匂いだからね。


「陛下。この焼き方では温度が低くて良い強兵筒になりませんので、このまま地下の窯に移して焼きなおしてよろしいでしょうか?」

「さすがにこれだけ焼けば齋姫も死んでいるだろう。よし、その通りにせよ」


そして始皇帝は紅たちを伴って帰っていった。




「よし、うまくいったぞ!」

「オーパーツにならないように壊れたレシーバー回収してね」

「了解でござる、瑠璃殿。ニンニン」


発掘された時に電子機器とか入っていたらおかしいからね。




俺たちは親方に礼を言うと空き家に戻っていった。


しばらく待っていると紅たち5人もやってきた。


「あれ4人?」

「ここよ」

「えっ?!あ、ほんとだ!闇さん、居るのに全然わからないよ!」

「闇殿、いっそ拙者の弟子になるでござるか?きっと素晴らしい忍者になれるでござる」

「見つからないからって、そういう仕事をしたいわけじゃないんだけどなあ」


ともあれ俺たちは白虎神の力を借りて現代に戻って…あれ?


「どうして戻れないんだ?」

『すまぬ。思ったより我の力が弱まっていたようだ』

「ええっ?!」

『せめて泰山まで来てもらえればいいのだが』

「遠いの?」

「数日かかるが元々我らの里。立ち入りを禁じられていても入ることは易いぞ」

「えっ?立ち入り禁止なの?紅?」

「そもそも泰山は歴代の王が即位などの儀式を行う場所の一つぞ」

「でも賛族が住んでいたんだよね?」

「賛族が泰山を守り、儀式を行う王たちの案内をしていたのぞ。しかし始皇帝は皇帝であるから案内は要らぬと聖域にまで踏み込んだのぞ!」


それにより賛族は秦の大軍と戦うことになり滅んだのか。


『頼む、泰山の聖域に賛族の皆を連れてきてくれ。そうすれば我が力は取り戻され、未来に送ることが出来よう』


というわけでまさかの延長戦。


夜のうちに王都を抜け出し、泰山へと向かうこととなった。


「紅たちに追手はかからないのか?」

「今はそれどころではないぞ」

「どうして?」

「工房から帰ってからすぐ、陛下は倒れられたからな」

「何だって?!」

「もう数日も持つまいぞ。だから我らを探している暇などないはずぞ」

「紅たちが毒を盛ったって思われない?」

「たしかに白は毒見役もしていたから疑われる可能性はあるが、斎姫が自分の仕業と陛下に言っていたから我らは疑われないはずぞ」

「いや、その倒れた陛下が何も話せなくなっていたら?」

「あ…」


万が一にも追手がかかるかもしれない。


「その時はレイジだけでも未来に戻るのぞ!」

「それは駄目だ。俺は絶対に全員連れて帰るから…邪魔をする奴らはぶっ飛ばす」

「おお、我の夫はなんとも格好いいのぞ!もちろん我らも戦おうぞ!」

「「「「おお!」」」」


腕を振り上げる賛族の蒼、白、黒、闇。


「「「「おー!」」」」


真似して腕を振り上げる明日香先輩とアヤメと瑠璃と初音。


「おー」


何だかわかってないけど一緒に腕を振り上げている斎姫が可愛らしい。




しばらく問題ない旅は続いた。


そして泰山が目前となった時、後ろの方の遠くから砂煙が見えるようになった。


「あれは?」

「軍馬ぞ」

「まさか?」

「あれほどの数の軍馬を出せるのは陛下だけ。おそらくは…」

「俺たちを追ってきたのか!」


「騎馬の数およそ1000。あと半刻でここに来るでござる」

お読み下さりありがとうございます!

ブックマークや評価や感想をいただけると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ