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皇帝の側仕えの紅

お盆なので連続投稿してみます!

俺は斎姫の居場所を突き止めたのでさっそくみんなに連絡する。


カレンが作ってくれた『缶バッジ型通信機』で連絡をする。


「…というわけなんだ」

『すぐに助け出さないと!』

『瑠璃殿落ち着くでござる。急に居なくなっては工房の人が責任を取らされるでござるぞ』

『でも!』

『まずは情報集めが先決でござる。ニンニン』


ニンニンって何?!


『レイジ殿、拙者が王宮に忍び込んで情報を集めてくるでござる』

『私も行くわ』

『瑠璃殿は足手まといでござる』

『これならどう?!』

『おお、それならば大丈夫でござるな!』


えっと、通信機越しなので何のことだかわからないんだけど…。


「とにかく危険なことはしないでね!」

『大丈夫でござる!』


無理しないといいんだけどな。


とりあえず、こっちでも情報集めておくか。




「親方、終わりました」

「レイジが来てから力仕事があっという間に終わって助かるな」

「暇なので掃除とかしていましょうか?」

「おう、頼む」


せっせと掃除をしつつ、物置へ。


「あっ?!レイジ!そこは掃除しなくていいからな!」

「え?結構散らかってますけど?」

「そのままでいいから入るな!」


温厚な親方が怒っている。

やっぱり少女の入った兵馬俑のことは知っているんだな。


「わかりました」


とりあえず、ここは一旦引いておくか。





○アヤメ視点〇


ここが王宮でござるか。


やたら広い上に柱が多くて隠れやすいでござるな。


拙者は移動しながら情報を拾っているのでござるが…それらしいのがなかなかないでござるな。


「明後日は陛下が強兵筒を作るところを見に行かれる」


おっ、これでござるな。

話しているのは女官と衛士でござるか。


「それならば我ら衛士を100名ほど連れて行きますか」

「いや、お忍びらしい故、衛士長と我々陛下の傍仕そばづかえ数名だけだ」

「それは危険では?」

「10人も居ないような工房でどんな危険があると?それに我々傍仕えは女なれど衛士より屈強。心配は無用ぞ」

「しかし陛下がここを出られると知られれば、そこは暗殺者の巣窟となりましょう」

「心配はいらぬ。そのために我の手の者をそこで働かせておるのだ」

こう様!」

「どうした?」

「工房に行かせていましたこくから連絡が。見慣れぬ怪力男が工房で働き始めたと」


怪力男とはレイジ殿のことでござるな。


「まさか敵国の間者か?」

「妙な食べ物を持っておりましたので、この国の者ではないと思われるそうです」

「よし、ここへ連れてまいれ。我が直々に素性を問いただそう」

「そ、それがその者は千斤(約500kg)の粘土を軽々と持ち上げて運ぶほどの膂力だそうで、たやすくここへ来るかどうかは…」

「それほどの力を?!よし!我が直接見に行くぞ!」

「あっ、紅様!」


紅様と言われた傍仕えの者が外に走っていったな。


拙者も急いで戻るでござるか。


『じゃあ私は皇帝の部屋の屋根裏に潜んでいるわね』

「危なくなったら逃げるでござるよ」

『大丈夫大丈夫。まさか人形・・が怪しいなんて思わないでしょ?』


まあ人形の姿の瑠璃殿がまさか人間だとは思わないでござろうが。


「念のためこれ・・を置いていくでござる」

『ありがと。じゃあ、あとはお願いね』

「任せるでござる」


拙者は身をひるがえすとこうを追いかけたでござる。




…仲間の傍仕えや衛士を連れていくのかと思ったが、まさか自分一人で行くのでござるか?!


しかしあの紅という者、華奢な体つきに見えるが虎のようなしなやかさと強さを感じるでござる。


これはレイジ殿でも簡単にはあしらえないかもしれないでござるな。





○レイジ視点〇


「レイジとやらは居るかーっ?!」


ふいに戸口から声がしたので見ると、明らかに貴族っぽいいで立ちの女性が立っていた。


20歳くらいだろうか?

綺麗な人だけど目元の隈取くまどりっぽい化粧のせいでとても気が強そうに見える。


「レイジは私ですけど…」

「なんと?!もっと大男かと思ったが、普通ではないか」


ばしばしと俺の体を叩いてくるけど何してるんだ?


「ふむふむ。非常に良い筋肉をしている。これは鍛えたのではなく生まれつきの筋肉だな?」

「は、はい」

「やはりかっ!」


ニカッと笑うその女性に思わずドキッとしてしまう。


「我は泰山の賛族さんぞくの生き残り、こうぞ。お主はどこの国の者だ?その体つき、この国の者ではあるまい」

「え…」


触っただけでわかるの?!


「えっと、東の島国から来ました」

「東の島国?しょうの島か?の島か?」

「しょう?わ?…それなら多分『の島』だと思います」

「そうか!あちらはまだ大した国も出来ておらぬと聞いたが、お主のような者が居るならいずれ統一されるであろうな!」

「は、はあ…」


その勢いに俺は圧倒されるしかない。


「紅様!なぜ一人で行かれたのですか!」

「おお、せい。どうやらこやつは東の沖にある環の島から来たようだ」

「何ですと?そのような遠方から来た者など聞いたことがありませぬ!やはり陛下暗殺の…」

「お前の眼は節穴か?!この者の眼が人を殺せるように見えるのか?」

「あ…えっと…それは…私は紅様のようにはわかりませぬ」

「レイジとやら。ここに来た理由は何ぞ?」

「仕事を探しに来ました」

「それだけではあるまい?我は嘘を見破ることができるのだぞ」


え?それなら…とりあえずひとつ真実を言うか。


「嫁探しに来ました」


兵馬俑の中の子を救って嫁にするかもしれないから嘘じゃないよね。


「なるほど、真実のようだ」


じっと俺の眼を見て頷く彼女。


「よし、ならば我の婿となれ!我はずっと探しておったのだ!賛族のように生まれつき野獣の如き体躯を持つ強き男をな!」

「え?」

「そして滅ぼされた賛族を再興し…」

こう様!それ以上言ってはなりませぬ!もはや我ら賛族は族滅させられたのですぞ!男は全員殺され、幼かった我ら5人が陛下に忠誠を誓わされ、なんとか子種をいただこうと!」

「あのような豚などと子を成しても賛族の再興は図れぬ!だが賛族の男に匹敵、いやそれをも凌駕する肉体を持つこやつとならば必ず…」

「そのうち衛士たちも来ます!陛下を豚呼ばわりなどしていることを聞かれたらタダではすみませぬぞ!」

「くっ。まあ良い。このレイジとやらは我がもらっていく。代金はこれだ」


コウ様って女性は工房に金の粒をばらまくと、俺をひょいと肩に担いだ。


「ええっ?!」

「さあ、行こうぞ!」


そのまま彼女は軽快に走り出す。

女性に担がれる経験何てめったにないけど、それ以前に何このすごい力?


しなやかでいて強靭で、まったくブレがない。


サン族って言ってたけど、そんな野獣のような一族が居たんだな。





なんて感心している間に、どこかの家の中に連れていかれた。



「はあはあ」


さすがに息が切れるんだな。


「はあはあ。もう我慢できんぞ。早く我と子作りをするのだ!」


息が切れているんじゃなくて、興奮しているだけだった?!


確かに美人で野獣っぽい所も素敵だけど、俺はこの人のために過去に来たんじゃない!


「ごめん。俺には助けないといけない人が居るんだ」

「助けに?まさか環の島の者がどこぞに囚われているのか?」

「あなたは本気で俺と結婚したいんですか?」

「当然ぞ!そして賛族の再興をするのだ!」

「俺は100人の嫁を娶れる男ですけどいいんですか?」

「ほう?王でもないのに後宮を持つということか?」

「いえ、正室が100人ということです」

「な、なんだとっ?!そんなこと…皇帝でもありえぬ。正室100人など聞いたことなどないぞっ!」

「でも神に認められていますから」

「神にだと?はっ?!」


急に紅さんは目を大きく見開いたまま硬直した。




○紅視点〇


神が認めたとはどういうことだ?

100人の正室など普通にはありえぬ。

全て平等に愛することなどできぬのだから。


『だが、我ら神が確かに認めたのだ』


この声はいったい?!


『我は白虎』


賛族が崇めて来た白虎神様?!


『今から2200年後。環の島にレイジという者が現れ100人の嫁を娶ることとなった』


2200年後?!

そんな先の話をなぜ?


『我くらいの神になると過去や未来などという時間軸など関係ない。だがそんな事を説明しても分かるまいから簡潔に述べよう。そこに居るレイジこそは2200年後から少女を助けにやってきたのだ』


我を助けに?!


『おぬしはもう少女と言える歳ではあるまい』


何ですと?!

我はまだ20ぞ!

ちゃんと子供は作れますぞ!

20人だって産んで見せようぞ!

そ、それにまだお手つきされていないから心は少女なんだから…。


陛下に手を出されなかったのも我に魅力が無いのではなく、『賛族の女は野獣で、男の一物を絞め殺す』なんてことを陛下に言った後宮の女どものせいぞ!


『む、むう、わかった。それでだな、賛族の再興をしたいのであればレイジの嫁となるが良い』


言われるまでもない!


…では助けに来た少女とはいったい?


『それはレイジに聞け。では賛族の再興の暁には以前のように我を崇めるのだぞ』


白虎神様を崇めても賛族の滅びは防げなかったのはどうしてぞ?


『これでもかなり手助けをしたのだが…多勢に無勢という奴だ』


確かに我ら賛族は一騎当千の力で秦の兵を蹂躙した。


しかし絶え間なく襲い来る膨大な兵力に力尽き、大人は全員殺され、男子も殺され、幼かった我ら童女のみが奴隷・・として傍仕えにされた。


奴隷である証の『隷紋』がある限り我らは陛下に逆らうことはできない。


だがっ、産まれてくる子なら別っ!


いつか賛族を再興し、一族の仇を討ってくれるっ!


「…さん」

「今こそ一族の仇をっ!…えっ?」

「コウさんでしたよね?大丈夫ですか?」

「あ…いや、何でもないぞ。我はちょっと白昼夢を見ておっただけぞ」


まさか口に出していたのか?

全部聞かれていたのではあるまいな?


「聞こえていたのか?」

「少し…」

「ど、どこからだ?」

「『我はまだ20ぞ』のあたりから…」

「ほとんど全部ではないかっ!」


我は仕方なく事情を話し、レイジを味方に付けることにした。

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