古代中国にやってきた!
連休連続更新です!
いつものようにパンとブドウジュースを俺の血肉に見立ててみんなに食べてもらい、女神ロリーナの力で過去へ飛ぶ。
「ここが古代の中国か」
「前もそうだったが、過去へは一瞬なのだな」
「明日香先輩、何を期待していたんです?」
「いや、薄っぺらな時計が浮いている中をドラ〇もんのタイムマッシーンで行くみたいな風情が無いのかと」
「風情なんていらないと思うんだけど」
「拙者はデ□リアンに乗りたかったでござる」
「現代に来たばかりでどうしてそれを知ってるの?!というかそれ伏せ字になって無いから!」
「現代の勉強をしようと、ジャンヌ殿と一緒に毎晩ハリウッド映画を見ているでござる」
「まず日本の常識から覚えるべきじゃないの?!」
何て会話をしていても誰も俺たちを気にも留めない。
ここが宮殿の近くで人が多いからだけではない。
俺たちの着ている服が当時のものを再現した服だからだ。
「アヤメとジャンヌを助けたことでロリーナの女神としての格が上がって、俺たちの服を現地に合わせたものに変えたり、言語理解ができるようになったからな。言葉が通じるのはありがたいよ」
今は庶民の服装だが、王宮に忍び込めばたちまち貴族らしい服装になるらしい。
何て便利な。
「で、今は齋姫が殺される3日くらい前というわけか」
「ロリーナの話ではそうでござる」
今までは死ぬ直前にしか送ってもらえなかったが、少し余裕をもった過去に行けるようになったみたいだな。
「便利だけど、3日前に齋姫がどこにいるかわからないとどうしようも無いんじゃないか?」
「ねえあなた。兵馬俑を作っている工房を探したらどう?」
「瑠璃の言う通りだな。よし、聞き込みをしてみるか」
「へいばよう?なんだいそれは?」
「え?…あっ、そうか。この時代ではそんな名前じゃないのか。えっと、皇帝陛下のお墓に入れる作り物の兵隊なんだけど」
「ああ、強兵筒か」
「こんぺいとう?」
「初音ちゃん、無理に聞き間違えなくていいから」
「もしかしてそれを作る職人の募集でも聞いて来たのか?」
「まあそんな所です」
「それならうちの店の近くだ。教えてやる代わりにうちまでそこにある荷物を運んでくれ。実は車輪が壊れて困っていたのだ」
男は壊れた台車の上にある荷物を指し示す。
「穀物だが袋が敗れるから落っことしたりするなよ」
「わかった。こうすれば落っことさないよな」
俺はひょいと台車ごと持ち上げる。
「おお、すごい怪力だな!お前、職人より兵士になったほうがいいんじゃないか?」
「まだ戦争ってあるんです?」
「国境ではいつも小競り合いをしているらしいぞ」
「ところで兵馬…強兵筒ってどのくらい作るんでしょうね?」
「1万とか聞いたぞ」
「そんなに作るなら工房もたくさんあるんでしょうね?」
「そうだな。だが俺の家の近くのは陛下が直々に見に来るほど良い強兵筒を作れるみたいだぞ」
「え?そうなんですか?」
「ああ。強兵筒はその名の通り強い兵士の形をしているのだからな。下手くそなものは陛下に見せるだけで首が飛ぶ」
「うわあ」
結構気の短い皇帝なんだな。
「あそこが俺の家だ。そしてあれが強兵筒の工房だ」
「ありがとうございました」
「いいってことよ。俺も助かったよ」
「じゃあ失礼します」
「ちょっと待てよ。まさか連れの女の子たちもそこで働く気かい?」
「そうですけど?」
「ちっちゃい子まで居るのに無理だろ?何ならうちで働かないか?俺んちは穀物で商いをしているけど、最近働いていた者たちが辞めてしまったから手伝いがほしいんだ」
「どうして辞めたんです?」
「数字ばかり計算していたら頭がおかしくなるって言ってやめちまったんだよ」
そう言って男は自分の家に入ると棒と丸い石をいくつか持ち出してきた。
「これで計算するんだけどさ、8と3を足すときはこうやって8個の石を右に置いて、3個を加えて10個分を取り除いて上の位に1個置くと13ってなるだろ?わかるか?」
「そろばんの元祖でござるな」
「算盤術って言うんだよ。これをやるようになってから仕入れて売る数を間違えなくなったんだけどさ、あんまりできる人が居ないんだよな」
「そんなもの、暗算で楽勝でござるな」
「暗算?」
「拙者なら道具無しでもできるでござる」
「何?じゃあ52足す18は?」
「70でござるな」
「……で、…が…合ってるだと?!」
二桁程度ならここにいるみんなで暗算できるので男の人は目を丸くして驚いていた。
「これは助かるっ!おい!風!この子たちが仕事手伝ってくれるだと!」
「なんだってえ?あんた?」
家の中から出て来たのはひょろっとした女性。
雰囲気からしてこの男の嫁さんだろう。
ちなみにこの男性の名前は徹というらしい
「じゃあみんなはお隣の穀物商を手伝ってもらって、俺は工房に行ってみるね」
住み込みで手伝いができるのはありがたい限りだ。
俺も工房に入れてもらえるように頑張らないと。
「強兵筒を作る手伝いをしたいだと?」
「はい」
「言っておくが、新人ができるのは土や水を運んだり薪をくべたりする仕事だけだぞ。強兵筒を作るのは俺のような長年やってきた職人じゃないと無理だからな」
「それでもいいです」
「よし、とりあえずそこにある粘土を全部こっちに移してくれ」
どこかからか運んできたであろう大量の粘土がうずたかく積まれていたので、俺はそれをひと固まりに丸めると工房の奥に持っていく。
「お、おい?!無茶するなよ!」
「いえ、このくらいの大きさなら自重で壊れたりしませんから」
「その巨大な粘土の心配じゃない!お前のことだよ!」
「軽いですけど?」
どっすん
俺は言われたところに粘土を下ろし、ぺたぺたと収まりの良い形にならしてから次の粘土を取りに行く。
どっすん、ぺたぺた
どっすん、ぺたぺた
どっすん、ぺたぺた
「終わりました」
「お、あ、すげえなお前。ここにたまに衛士たちが来るんだが、その前で力のある所を見せるなよ。兵士にするって連れて行ってしまうからな」
「それで工房の中の人が少ないんですか」
「そうなんだよ!たくさん強兵筒作れって言いながら力のあるやつを連れて行くから最近はなかなか仕事が進まないんだよ!」
そう愚痴っているのはこの工房で一番偉い人、工房長の厳さんだ。
背は低いがまるでドワーフのようながっしりとした体つきなのが職人らしいと思える。
「じゃあ、どんどん頼むぞ」
「はい、任せてください親方!」
こうして俺は工房の力仕事担当となった。
「…時期的にすでに兵馬俑に塗りこめられているはずだけど、見つからないな」
俺は兵馬俑には触れさせてもらえないが、工房内をくまなく回ることはできた。
それで見た限りでは、齋姫の入っていそうな背の低い兵馬俑は見つからない。
「おう、1日ご苦労さんだったな。それでうちに泊まっていくのかい?」
「もしよければ」
「おう、それなら寝床はあっちだ」
「その前に夕飯ですわよ」
そう言って2人の女性が食事を運んできてくれた。
「今夜のご飯は自分で持ってきたんですけど」
「何を持ってきたんだ?」
「これです」
俺は袋からマリア姉さんお手製のおにぎりを取り出す。
この工房に居るのは俺を合わせて9人で5個しかないから半分ずつだな。
「みんなで半分ずつ食べませんか?」
「飯にしては妙に白いな。む?中に何か入っているのか?」
ぱく
「な、なんだこの飯は?!うますぎる?!それにこの中に入っているとろりとした味わいのものは…」
「それはツナマヨですね」
「綱迷?珍妙な名前だな。しかしうまい」
「親方!おれっちのは粒々で辛いっす!」
「それは明太子ですね」
「面太鼓?なるほど、口の中でプチプチ弾けて音を立てているっすね!」
「俺のはすっぱいぞ?」
「梅干しですね。疲れが取れますよ」
「梅を干してこのようなものになるのか。ふむ…」
梅干しは通じるのか。
そもそも翻訳機能の仕組みがどういうふうになってるのかわからないけど会話にはなっているからいいのかな。
「ねえ、あんた。それ半分余っているなら、あっちに持って行っていいかい?」
「なっ?…好きにしろ」
「ありがとうよ」
親方の奥さんらしい人が残りの半分のおにぎりをもって奥の方へ入っていった。
「どこに持っていくんです?」
「あ、ああ。猫にやるんだよ。ははははは」
あっちは物置だと思ったけど…まさか?
翌日。
俺は粘土や水や薪などを運びつつ、こっそり物置に入る。
そこには物陰に隠すように小さな兵馬俑が置いてあったので声を掛けてみる。
「もしかして斎姫ちゃん?」
「…誰?私の事を知ってるの?」
兵馬俑の中から聞こえた返事は弱りきったか細いものだった。
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