第75話 証人尋問
「小川望美が赤点を取った。 それで、そのままか」
「いえ。 既に追試を受けて合格しております!」
「……そうか。 ……当然、お前の教えであろうな?」
「はい! そうです!」
「うむ」
養父はそれだけ言うと、安心した表情を見せた。
ーーよし! 乗り切ったぞ! そう思っていたのに。
その隣にいた望美が、目元を隠して、こう言った。
「ひっぐっ。 ……私、全然勉強が出来なくて、ついには友達にも見捨てられて……悲しくて」
「……もうよい。 みなまで言うな」
「……でも。 クラスメイトの中川さんだけが、教えてくれたんです! 中川さんだけが、私に親身に寄り添ってくれて……」
「……ほう?」
ーーおい、望美! その言い方だと、俺はなにもしてないみたいじゃないか!
「……どうやら、意見の食い違いがあるようだな。 ……灯磨。 この場合、どうすればいいのかわかるな?」
「……はい。 中川恵を連れて参ります……」
◇◇◇ 数時間後、応接室にてーー
私の目の前には、鵠沼さんのお父さんがいました。
夏なのにスーツ姿で、背筋もビシッとしてて、凄いカッコイイオジサマです! ーー物語みたいだよね!
「は、初めまして! 鵠沼さんのクラスメイトの中川恵です!」
「鵠沼玄一郎だ……」
「は、はい! 鵠沼さん!」
「……それでは、どちらが呼ばれているのかわからん」
「はい! 灯磨と呼ばせていただきます」
ーーあ、鵠沼さんのこと灯磨って呼び捨てで読んじゃった。
でも、本人がいないからノーカウントだよね!
だって、私。 名前呼びって告白の時にしたいもん!
「中川恵、と言ったな。 灯磨とは、同じ学年か」
「はい! クラスメイトです」
「ふむ」
玄一郎さんは、紅茶の持ち方が、すごく綺麗。 背筋も伸びてるよ。 凄いなぁ。
「同じクラスに小川望美……と名乗る生徒がいるはずだ」
「はい。 ふふ。 彼女はクラスの人気者なんですよ〜」
「ほう」
いつも、お食事中に二人で学校の話題で盛り上がっているのかなぁ?
ーー父と子の会話ってどこも変わらないんだなぁ。
「その小川望美に、勉強を教えたそうだな」
「はい! 一緒にお勉強しました。」
「ふむ。 その間、灯磨はなにをしていた?」
「はい! 私の説明が至らない場面を、助けていただきました!」
「怜子。 ……灯磨を呼べ」
「かしこまりました……」
玄一郎さんは、しばらく黙っていた。
ーーよくわからないけど、これでよかったのかな?




