第74話 絶望の幕開け
昼食 長いテーブルの、端と端。 その距離は遠いーー まるで、俺と養父との心の距離のようだ。
怜子が音もなく給仕をし、望美は俺の様子が見える位置ーーつまり、養父の後ろで控えている。
「前菜でございます」
怜子が皿を置いた。 鮮やかな夏野菜のテリーヌ。
ふん。 さすがは莉央だと言っておこう。 養父は、無言でナイフを取った。 俺も続く。
「……ふむ。 悪くない」
「……はい」
ーーよかった。 後で莉央に礼を言うか。
昼食を食べ終えた後。 養父は口を開いた。
「……学業は」
「はい。 一学期の総合、学年一位です」
「それで」
「はい?」
ーーなんだ? 続きを促すだと?
「ふむ。 ……わからぬのか」
「申し訳ございません!」
ーーしまった。 俺としたことが! 失望させてしまった!
「学年総合一位……それは、お前の成績だ。 それで、小川望美はどうだったんだ、と聞いたのだが……」
「! ……そ、それは」
ーーマズイ。 最悪な状況だ! 落ち着け俺。
「え、ええ。 小川望美はですね……国語と英語の成績は素晴らしくてですね……」
「それで……どうだったんだ?」
やはり、ごまかせないか。 俺は事実を伝えた。
「数学と理科で、赤点を取りました……」
「なんと! ……実に嘆かわしい!」
養父は、そう言うと俺を睨みつけた。
ーー恐れていたことが起きてしまった!
養父の頭の中では、俺の管理不足の不甲斐なさを憂いているのだろう。
後ろでは、望美が目を瞑って、顔を覆っている。
「玄一郎様……」
「もういい……なんということだ」
やらかした。 最悪な幕開けになったぞーー




