第68話 千早ちゃんと絵日記
七時になった。 望美はんは、旦那様と勉強するっちゅうて、二階に上がってしもうた。
ウチは、自由時間や。 その時、千早ちゃんが横を通り過ぎていったんや。
その格好は、昨日と違って、Tシャツにオーバーオールやったわ。
ウチも一緒に向かうと、お部屋の中でテーブルに向かって、クレヨンを握って描き始めたで!
背中を丸めて、めっちゃ真剣な顔で、なんか描いてはるわ。
「千早ちゃん、なにしてんの」
「絵日記です」
千早ちゃんは、顔を上げて淡々と答えた。
「絵日記! 夏休みの宿題やな!」
「はい」
「それなぁ。 ウチも小学生の頃、やらされたわ」
ーーちなみに、ウチの絵日記の天気は全部晴れや!
ウチは、千早ちゃんの隣に座った。 ーーすると。
「……読みます?」
「ええんか! 遠慮なく、見させてもらうで!」
ウチは、一番最初のページを開いた。
『4がつ1にち はれ
きょうは だんなさまのこうこうのにゅうがくのひです。
おくさまはおなじくらすになるために かくさくしたそうです。
とうま ずっといっしょだよ といってました』
絵は、ニコニコしている、望美はんやった。
『6がつ20にち くもり
おくさまが きょうはだんなさまのせわはいいといいました。
けれど だんなさまは ひずけがかわってもかえってきません。
おくさまは かんししつで もだえてました』
絵はモニターの前で悶絶している望美はんやった。
『7がつ12にち かみなり
だんなさまに どろぼうねこが ちかずいたそうです。
どろぼうねこは てんねんをよそおい だんなさまのふところにはいろうとするので かんしがひつようだと いってました』
絵は、藁人形と白装束姿の望美はんやった。
『7がつ18にち きつねのよめいり
おくさまが だんなさまあてのあるばむを もやしていました。
おくさまがいうには どろぼうきつねは ほっておくとなにをしでかすかわからないから こんど つぶす そうです』
絵は、猫と狐を書いた上から、大きなバッテンと、消す、潰すと書いてあった。
ーーウチは、絵日記を閉じた。 閉じて、深呼吸した。
「千早ちゃん?」
「はい」
「これ、学校に出すん?」
「はい」
「あかん」
「え」
「これ、絶対あかん」
「どうしてですか?」
千早ちゃんが、きょとん、とした顔でウチを見上げた。
「先生、びっくりしはるで」
「そうですか?」
「怜子はんに見せたんか?」
「いいえ? まだです」
ーーああ。 これを見たら、卒倒するで。




