第65話 七瀬先輩と再会
怜子はんと千早ちゃんに、挟まれてウチは食堂へやって来たんやけど。
ウチらの食堂は、昼間に見せられた旦那様のお食事処やった。
そして、テーブルの上には。 ーーご馳走や!
ウチの腹が、ぐう、と鳴った。 朝から緊張して、何も食うてへんかったわ!
「遅かったですね……」
望美はんが立ってはった。 両手をお腹の前で組んだ姿勢。 メイド服姿や。
ーー旦那様はおらんのか? そうやろなぁ、この中で混ざって食べるのは、難儀やで。
その隣に、もう一人。 ーー七瀬先輩やった。
「マリモちゃん〜 元気?」
「せんぱぁい!」
ウチは気がついたら走ってた。 そんで、そのまま抱きついてた。
「うわ……」
「七瀬先輩!」
鼻の奥が、つんとした。 あかん。 これはあかん。 泣くとこちゃう。 ーーでも、無理や! ウチの救世主は、先輩だけやで!
「先輩、なんて場所紹介して来れてまんの!」
「面白いでしょ?」
「ヤバいですわ、ここ!」
「あれ〜」
先輩の手が、ウチの頭に置かれた。
「先輩……」
「土間さん。 食堂で走ってはいけませんよ?」
「ひぃ。 ……望美はん。 すんまへん」
「……まったく、ご飯に埃が入るし、それに転けたら危ないわ」
「おっしゃる通りですわ……」
望美はんの声がした。 本気なのか、口調が今までと全然違うやん。
正論すぎる発言に、ウチは項垂れたわ。
「それから……」
「は、はい。 なんでしゃろか!」
「食事の前に、手は洗いましたか?」
「あ、洗いました!」
「そうですか。 後……」
「はい!」
「食後に大切な、お話がありますので」
「はい! かしこまりました!」
ーーなんでやねん。 もう、休ませてな!
望美はんは、にこにこしてはったけど、目は笑うてへんかった。
席についた。 肉がうまかった。 ほんまにうまかった。 ウチは三回おかわりした。 パンも五個食うた。
先輩の料理やと思うと、余計にうまかった。
みんなで食うてる間、ウチはずっと考えてた。
この屋敷、なんかおかしいって。
でもな。 それよりも、飯がうまいねん。
七瀬先輩の愛さえあれば、LOVE is OKやで!
「マリモちゃん〜 さっきから、あ〜しの顔見過ぎ〜」
「すんません、七瀬先輩」
隣に座った七瀬先輩が、にやにやしてはるわ。
「……で、どう」
「はい?」
「面白いでしょ、ここ」
「ゲホゲホ……」
「喉に詰まるから、ゆっくり噛んで食べなさい?」
「へい、すんません」
口いっぱいに詰めたタイミングで、なに言ってますのや!
また、望美はんに叱られたわ。
ウチは、慌てて飲み込んで、そんで、言うたった。
「ここは、やばいですって!」
「……あら? なんのお話ですか?」
テーブルの向こうで。
望美はんが、ゆっくりこっちを向いた。
「……なんのお話ですか? と、聞いています」
「あ、明日の天気の話やで〜」
「そうですか」
ウチは誤魔化すので、背一杯やったわ。




