ウチの掃除術見せたるで〜
そんなこんなで、ウチは、ついに掃除を始めた。 これは腕なるで〜
千早ちゃんは行ってしもうたわ。 一緒にやって、すごいって言ってもらおうとしたのに、残念や。
ウチ、掃除は得意やねん。 実家が古い家でな。 母ちゃんが掃除にうるさい人でな。 お陰で、学校の掃除当番でよう褒められたんやで!
うちは腕まくりして、マリモの鉢巻を締め直した。
四時間もかかったけど、ウチは、やりきったで。
「よっしゃ! 完璧や!」
「……騒がしいですね。 何事ですか、マリモちゃん?」
望美はんやった。 やから、胸を張って言ったったわ。
「見てください望美はん! ウチ、やりましたで!」
「え? なにを?」
「掃除ですわ。 桟まで綿棒でいきましたからね! 完璧です」
「え? ええっ」
望美はんは、ドン引きしてはった。 なんでやねん!
窓を見る、床を見る。 しゃがんで、幅木を指でなぞってはるわ。
望美はんは、しばらく黙ってた。 ほんで小さく、ため息をついた。
「まあ、今どきの若い方は、こういうものなのでしょうね」
「はい?」
「体力にモノを言わせて、時間を無駄に使う……」
ーーん? なんや? なにが言いたいんや!
「……まだ汚れてました?」
「いいえ。 完璧ですね」
「ほな。 なんでそない不満気なんや!」
「別に、貴方を責めているわけではありませんよ。 ただ、私が入った頃は、ここまで丁寧に仕事をする考えはありませんでした」
そう言うと、望美はんは、廊下の途中で立ち止まったんや。
「……いいですか、土間さん。 明日以降も掃除をするつもりですか?」
「え? だって、ウチ掃除婦として雇われて……」
「……この屋敷全部を? 一人で? 毎日?」
「それは……」
ーーいやウチ、ここだけでえらい時間がかかっとんのに、どうするんや!
「怜子と千早が旅行に行くんですよ? その場合、貴方には屋敷全体を掃除してもらわないといけませんよ?」
「それは、無理やて! ウチ、七瀬先輩と文化祭の準備が……」
「そうでしょう。 知ってます」
ーーウチがそう言うと、望美はんは考えだしおったで。
「……私は小説を書くのに忙しいし……身近な存在で、掃除が綺麗で優しくていい子で、それで騙されやすい駒は……やはり、あの泥棒猫かしら?」
「望美はん?」
「……う、うん。 ……いいですか、土間真里!」
望美はんは、背中を張って、堂々とこう言いおった。
「貴方には、手抜き作業と妥協を覚えてもらいます!」
ーーなんや、それ? そんなん聞いたことないで!




