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学校の人気者の小川望美は俺のモノ  作者: Masa(文章力あげたい)


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第57話 喫茶店でカフェタイム

 タイム

 神社からの帰り道。 俺は当然、屋敷へ戻るものと思っていた。 


 だが望美は元からドライバーと次の場所を決めていたらしくーー


「着きました……」

「……なんだここは?」


 石畳の細道。 蔦の絡んだ古い建屋。 その前に、手書きの立て看板があった。

 

 『ここが…貴方の居場所。  私だけを見て。  他の誰にも渡さない。  ずっと、ずっと、一生。  逃がさない。  ヤンデレカフェ『執愛の館』OPEN』


「入りましょう」

「い、嫌だ! 入りたくない!」

 

 望美の袖を俺は振り解いた。


「鵠沼の当主足る者、わがままを言ってはいけませんよ!」

「なんだ、その言い分は! 関係ないだろ!」

「予約済みですから、行きましょう……」

 

 結局、押し切られた。 扉を開けると、赤いランタンの明かりだけが揺れる、薄暗い店内だった。 不気味過ぎるーー


 壁には黒板。 『本日のおすすめ 冥府の氷 ーブラックベリー ーブラッドシロップ ー悪魔の契約 ¥1,600』

 

ーー冥府の氷? ってなんだ?


「いらっしゃいませ。 ……ようこそ、二度と帰さない館へ」

「予約していた鵠沼ですが……」

「ぐふふ。 ……お待ちしておりました。 どうぞ……」

 

 黒服の店員が、抑揚のない声で言った。 接客が悪いのではなく、これが芸風らしい。 


 席に着き、しばらくするとかき氷らしきものがやって来た。

 

 黒い氷の山に、真紅のシロップがどす黒く滴っている。 器の底には血溜まりのようなソース。 脇のグラスに注がれた飲み物も、同じく赤黒い。


「……食べ物か、これは」

「……じゃなかったら、なにでできていると思います? お客様?」

「……」


 望美は匙を取り、一口。 そして、目を細めた。


「……とても美味しゅうございます」

「お褒めの言葉ありがとうございます……」

 

 俺も口に運ぶ。 ーー確かに、味は普通に旨い。 

 

 ふと顔を上げると、望美がこちらをじっと見ていた。


「お口に合いましたか?」

「まあ、ぼちぼちだ……」


 そんな会話をしている内にーー


「お待たせしました。 当店自慢の『執愛のパンケーキ』でございます……結構な悪趣味ですこと」

「うふふ……ありがとうございます」

「なんだこれは……」

 

 黒服の店員が、大皿を運んできた。 厚く焼かれたパンケーキ。 周りにベリーと生クリーム。 


ーーそこまではいい。 問題は、表面にチョコレートで書かれた文字だった。

 

『逃げないで、ね?  あなたは私のもの。  ずっと一緒だよね?   どこにも行かせない。  私だけを見てて。  私のそばにいて、永遠に……♡』

 

 そして、その真ん中に。 ナイフが、突き立っていた。


「ごゆっくり、ご執着くださいませ……」


 店員は一礼して、静かに去っていった。


「望美。 これは、なんだ?」

「パンケーキです」

「真っ赤に塗られたナイフが刺さっているが」

「切り分ける用でしょう。 効率がいいですね」

「こんなもの。 マナー違反だ!」

「違います、演出です」

 

 望美は淡々と答えながら、パンケーキの文字を目で追っていた。


「……一言一句、頼んだ通りですね」

「は! お前がこんなものを用意させたのか!」


 すると、望美は懐から手帳を取り出し、何かを書き込み始めた。

 

 あれは、望美が愛用しているアイディア手帳!


ーーそうか、わかったぞ! 真実はいつも一つ!


「……望美。 お前、まさか今日は」

「? ……どうかされましたか、旦那様?」

「今日の外出は、全部取材だったんだな!」

 

ーー縁結び神社も、この店も。 小説の資料集めだったのか。

 

 こいつは作家だ。 締め切りに追われている。 夏休みは、こいつにとって執筆の時間でもある。 俺はただ、同行者として連れ出されただけだったのかーー


「……違いますが?」

 

 望美が、じっとこちらを見ていた。 それから、手帳をぱたんと閉じて、俺の皿にパンケーキを一切れ取り分けた。


「……どうぞ」

「……ああ」


 俺は、推理がハズレ。 なんだか気まずくなって、しょんぼりとしていた。

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