第39話 罪悪感に駆られる当主様
次の登校日。 朝の教室に、中川の姿はなかった。 どうやら風邪で休みらしい。
ーーなるほど。 あれだけ元気の塊のようなやつでも、熱は出るのか。
まさか、屋敷に来たのが原因じゃないよな? 罪悪感に駆られる俺。
後ろ髪を引かれつつも、昼休み読書をしているとーー
「ね〜 鵠沼君ってさ〜」
「放課後、暇?」
机の前に、黒髪の福田環奈と、金髪ポニーテールの松田葵がやって来た。
福田は両手を組んでにこにこと、松田は腕を組んで気だるげに、こちらを見下ろしていた。
「ちょっとさ、帰りに寄り道して欲しいんだけど?」
「鵠沼ってさ、中川さんと仲いいよね?」
「……普通だが」
「普通ね〜」
「普通、だってさ」
二人が顔を見合わせ、にやにやと笑う。 ーーなんだ? この圧は。
「図書室で一緒に勉強してたの、見た子がいるんだよね〜」
「仲良くお勉強ねぇ?」
「……別に勉強を教えただけだ。 それで、用件は」
俺が話を切ると、福田がすっと一冊のノートと プリントの束を差し出した。
「お願いなんだけど、この宿題、彼女に渡してくれない?」
「ホラ、これがないと中川さん困るよ〜」
「……なぜ俺が」
「その方が、中川さん喜ぶと思うんだよね〜」
「そうそう、私たちはキューピットって奴よ」
ーー意味がわからない。 が、中川の風邪の原因が俺だとする可能性もある。
「……家、知らないが」
「お! 受けてくれるんだ?」
「住所ここに書いといた! 準備いいでしょ」
福田が付箋をぺたりとプリントに貼る。 ーー用意周到すぎる。
「お大事に、って言っといて」
「じゃ、よろしく〜」
言うだけ言って、二人はさっさと自分の席へ戻っていった。 ーー嵐か、あいつらは。
机の上には、ノートとプリントの束。 付箋の住所。
ーー仕方ない。 世話になった相手だ。 見舞いくらいは、道理だろう。
◇◇◇
「……ねぇ〜 二人とも、なにやってたの?」
今日の学校は安全日だ。 あの泥棒猫ーー中川恵がいないから。
だから、ついついトイレに篭って楽しんでしまった。 それが油断だった。
帰ってきたら、彼女達から灯磨スメルを感じるーー ぬかったわね。
「あ、望美! 今日帰りにカフェ行かない?」
「いいね、行こうよ、用事もなくなったし!」
ーー用事。 つまり、灯磨に用事を押し付けたのね?
まあ、だったらいいわ。 たまには、放課後に出歩くのも悪くないわね。




