第28話 嘘だろ? 望美?
翌日の放課後。 今日はテストの点数がわかる日だ。
一斉に返ってきた答案用紙を、眺める。 俺の目の前にはオール100点の文字。
ーー当然だ。 鵠沼の主たる者な?
「鵠沼さん! ありがとう、いい点数取れました!」
答案用紙を持って、中川が駆けつけてきた。 しかし、距離が近い。
ーーそんなに近づくな! 俺が並の男だったら、惚れられていると思って、勘違いするだろ! だが俺は主だからな! (以下略)
一方、教室の窓際に人だかりができていた。 正確には、三人が中心の人だかりが。 望美と、その友人の福田環奈と松田葵だ。
「の、望美ぃ……これは流石に……やばいって!」
黒髪の福田が、口元を押さえて震えている。 笑いを堪えている震え方だ。
ーーおい! 望美がどうかしたのか?
「てか。 望美、ヤバくね?」
金髪ポニーテールの松田も、目を細めて頬をかいていた。 二人とも、こめかみに汗が浮いている。
他のクラスメイトの連中も気まずい雰囲気になっている。
その中心で、望美が一枚の紙を掲げたまま固まっていた。
そこへ、大木勝也が話しかけてにやって来た。
「小川さん! ……この前は、ごめん! その詫びとして今度の休日さ……」
「大木駄目だって!」
「空気読めっての!」
大木に避難の声を浴びせる、取り巻き二人。
「なんだよ、あ! 小川さんは、数学のテスト何点だ……」
数学の答案。 赤字で、でかでかとーー『13』。
「えっと。 ちょっと腹痛な……じゃあな」
「……………………ははは」
望美の顔が青い。 青いというか、もはや藍色だ。
大木は、颯爽と逃げて行った。 アイツは教える才はないらしい。
それにしても、十三点。 あの、望美が! どうして?
中川が俺と同じ方向を見る。 そして呑気に声をかける。
「小川さん? 赤点ですか?」
すると、望美の肩が跳ねる。 錆びた機械のような動きで、首がこちらを向いた。
「くっ……ぬ! こ、声が大きいわよ!」
「私でよければ、これから勉強教えますよ? 一緒に勉強しましょう、小川さん!」
「……勉強ですって?」
望美は福田と松田の方を見る。 なに逃げようとしているんだ、お前?
「葵! カフェ行こうよ!」
「環奈! いいね! 行こう!」
「「じゃ、また明日。 望美!」」
「ちょっと! 待ってよ〜 薄情者〜」
綺麗にハモって、教室から出て行った。
ーーなんとはかない友情だなぁ?
「小川さん! 赤点なのは、数学だけですか?」
ーーおいおい。 中川、さすがに数学だけだろう?
「理科も赤点……です」
「な! 何をしているんだお前は!」
俺の声が教室に響いた。 残っていた生徒たちが一斉に俺の方を向いたが、そんなことを気にしている場合ではなかった。




