第11話 人気者と日陰者の壁
次の日のことだった。 今日は特にクラスの連中が騒がしい。
福田環奈と松田葵が、興奮した様子で望美のことを話している。
その嫌でも耳に入ってくる話題に、俺の心はざわついた。
「ついに望美が大木に呼び出されたわね!」
「あの二人、いつも楽しそうに会話してたから、このまま付き合っちゃうかもね!」
「「ね!」」
ーー本当に騒がしい。 俺は別のことを考えることで、気持ちをごまかそうとしたがうまくいかない。
結局、学業に集中できなかった。
帰り道、俺は公園のベンチに座り考えていた。
望美に大木勝也がか。 そうだよな。
俺よりも大木勝也の方が、望美は幸せかもしれない。
アイツらが付き合って、同棲なんて始めたりしてーー
そしたら、あの屋敷から望美はいなくなるのか?
ずっと、一緒だったから、実感が湧かないなーー
俺は家に帰って望美にどんな顔をして、会えばいいのかわからなかった。
悩んでいる内に、気付けば日付がかわりそうになっていた。
当主の公務があるのに何やっているんだ俺?
深夜の公園に佇む俺。 しかし、いつまでもこうしてはいられない。
俺はベンチから立ち上がり、重い足を動かした。
もうこんな時間だろう、望美はきっと夢の中だろう。
これからのことは明日ーーいやもう今日だな。 で、考えようと思った。
嫌だな、認めるのが。 俺よりも、大木勝也がいいのかーー
当然だな。 アイツはクラスの人気者。 対して俺は、ただの養子であり、学校ではインキャメガネ。 比べるまでもないか。
頬に、一筋の涙がつたう。 悔しくて、たまらない。
しかし、屋敷のドアを開けた瞬間、俺は驚き固まってしまった。
なんと、望美は起きていた。 しかも、玄関前で俺を待っていたのだ。 しかも仁王立ちで、腕を組んで俺を睨みつけていた。
「おかえりなさい、灯磨」
「……」
「……無言ですか。 困りますね。 貴方はこの鵠沼家の主。 そんな貴方が……」
望美は冷徹な態度で説教を始めた。 しかし、俺はそんな気分じゃない。 望美に向かって、声を荒げた。
「お前には関係ないだろ! ……お前は、彼氏ができたんだろ? だったら、俺のことなんてほっとけよ!」
俺は、望美を睨み返す。 すると、彼女は意味がわからないというように、首を傾げた。
「……なんのことでしょう?」
「大木勝也だよ。 告白されたんだろ!」
「……ああ、それですか、断りました」
「な! なんだと?」
ーー断った? どうしてだ? なぜなんだ望美!
「……それだけですか?」
「ああ、そうだが……」
「私、ずっと待っていたのですが……深夜ですよ今は」
「……それは、すまない」
誤解だったんだ、心の中で安心した俺だった。




