鬼DM
俺は愛とのデートが終わり、家に帰り風呂やご飯の支度などを済ませ部屋のベッドに寝っ転がる。
そしてスマホを開き戦慄した。
「通知……137?」
何かの見間違いだろうか。
目を擦ってみるが数字は変わらない。
あすまるからDMの通知が137件もあったのだ。
確かに俺は基本学校のときのクセで通知オフにしているから溜まっているのはわかるが、いくらなんでも多すぎる。
恐る恐るあすまるとのトークルームを開く。
すると……
『やっと既読ついた』
『ねぇなんで無視してたの?』
手からスマホが落ちる。
一気に2件追加でメッセージが来た。
なんだこれは
一体何があったんだ?
……よく分からないが急いで文字を打ち込む。
『すみません、返信する暇がなかったんです。無視してたとかじゃないです』
送ったと同時に既読がつく。
『なにそれ意味分かんない、あすまると話すのは暇だからなの?』
『いや、え?』
『なんであすまると話すことより大事なことがあるの?』
なんだなんだ、話が通じないぞ。
それに昨日話していたときよりも口調が威圧的だ。
俺は困惑しながらもやりとりを続ける。
『そんな滅茶苦茶な』
『は?滅茶苦茶ってなに?あすまるのどこが滅茶苦茶なわけ?』
『それは』
『わかった、どうせあすまるのことなんかどうでもいいんでしょ』
『なんでそうなるんですか』
『あすまるのことは遊びだったってわけでしょ』
『どうしたんですか急に、なんでそんなに怒ってるんですか』
『翔気くんが悪いんじゃん』
『え』
『翔気くんがあすまるのことずっと無視してたのが悪いんじゃん』
ずっとって……
少しDMを返せなかっただけだぞ。しかも間が空いたのはせいぜい6時間ほど。
本当にそんなことで怒っているのか?
『あすまるはずっと翔気くんのこと考えてたのに……ひどいよ』
『買い物行ってただけですって』
『どうせその買い物も女と行ってたんでしょ』
指が止まる。
確かに愛とデートしてたのは本当だ、だがあすまると付き合うためにそれを言うわけにはいかない。
『は?なんですぐに否定しないの?本当に他の女と買い物してたってわけ?』
『違いますよ』
『嘘』
『嘘じゃないですって』
『最低、嘘つき、浮気者』
『もうどうすればいいんだよ……!』
『なんで逆ギレするの』
『逆ギレじゃなくて困ってるんですよ』
『困るってことはあすまるのこと重いって思ってるんだ』
『だからそういう意味じゃ』
『もういい、死ぬ』
『は?』
『翔気くんが浮気したって遺書書いて死ぬから』
『待って待って待って』
『止めないで』
『止めますよ普通!』
『浮気してるくせに』
クソ、話が全く通じない。
というか浮気って……俺たちはまだ付き合っていないはずだが。
なんだ、あすまるは本当はこういう人間だったのか?
いったいどうすれば……
何を言えばあすまるの機嫌は直る?
あすまるはいったいどういう言葉を欲しているんだ?
頭を素早く回転させる。
そこで俺は昨日のあすまるの言葉を思い出した。『あすまるはねあすまるを好きって言ってくれる人が好きなの』
俺は一瞬だけ逡巡し、だが勢いに任せてメッセージを打ち込んだ。
『好きです』
既読がついた。
だが返信はない。
『俺本当にあすまるさんのこと好きなんです。だから死ぬなんて言わないでください』
続けて送る。
即既読。
だがまた返信は無い。
そのまま少し待っていると
『本当?』
返信が来た。
『本当です』
『そうなんだ、ふうん好きなんだ』
……よかった、けっこう反応はよさげだ。
続けて送る。
『あすまるさんには生きて……笑っててほしいです』
『……うん、わかった』
『よかった』
『あすまるもごめんね、ちょっとキツく言い過ぎたかも。……怒ってる?』
さっきとは一変、急にしおらしい態度になった。
『怒ってないですよ』
『ごめん、仲直りしよ?』
『はい、じゃあとりあえず昨日みたいに今期のアニメとかの話しませんか?』
『うん』
それから1時間ほど雑談をして、昨日と同じくネタが切れたあたりで話は終わった。
ふう、とスマホを充電器に差し込みベッドに横になる。
すると俺は結構疲れていたのか自然と目は閉じ、深い眠りへ誘われていった……
◯
……と思ったのだがその眠りは突然鳴ったスマホの着信音で中断されてしまった。
ノンレム睡眠に移行しようとしていた身体が強制的に覚醒する。
「なんだ……?」
スマホを見るとあすまるからの電話だった。
……いきなりだな。
時計を見ると今は夜中の2時だ。
つい3時間前くらいにやりとりは終わったと思うのだが。
そう思うも、俺はこれを切るわけにはいかなかった。
「……もしもし」
『あ、翔気くん……ごめんねいきなり。でも翔気くんのこと考えてたら急に不安になっちゃって』
その声は配信で聞いていた声とまったく同じだった。
そういえばこうして通話で話すのは初めてだ。
一方通行でしか聞けなかった声とこうして対話できている感覚が少し不思議だった。
『ねぇ、さっきは本当ごめんね』
「いや、そのことはもういいですって」
出かけた欠伸を噛み殺しながら応対する。
『でもめんどくさいって思ったでしょ?キモいって思ったでしょ?死ねよって思ったでしょ?』
「死ねよって……いやそこまでは」
『ごめん、ごめんね……嫌いにならないで……ひぐっ、うう……』
画面の向こうからは涙声が聞こえてきた。
……どういうことだよ。
つい4時間前はこっちの話も聞かないくらい怒っていたのにいまは泣いている。
あすまるの情緒がまるで分からない。
「な、泣かないで下さいよ」
『うぐっ、ひぐっ、ごめんねぇ……怒らないでぇ』
「怒ってませんって」
どうしよう、また話が通じなくなってしまった。
確かに意外な一面ではあったけど、本当に嫌いにはなっていないのに……
「大丈夫ですよ、あすまるさん。俺、そんな簡単に人のこと嫌いになりませんから」
『……本当?』
「はい」
『本当の本当に嫌いにならない?』
「本当の本当です」
『一生嫌いにならない?一生あすまるから離れない?』
「い、一生?」
言葉の重さについ気圧される。
『……ダメなの?やっぱ翔気くんもあすまるのこと嫌いってこと?』
不安感が画面越しからも伝わってきた。
やばい、このままじゃまたあすまるが変な方向に思考の舵を切ってしまう。
「い、一生好きです!一生離れません!」
俺はもう半分勢い任せに言ってしまった。
『……』
「……あ、あすまるさん?」
すると急にあすまるが無言になってしまった。
しまった、流石にキモかったか?……引かれたか?
『……き』
息に溶けそうなほど小さな声だった。
「え?なんて?」
『好き』
……は?
俺は脳がフリーズした。
え、好き?
好きって言ったよな、聞き間違いか?
『翔気くん、好き……付き合って』
聞き間違いではなかった。
配信の時のようなとろけるような甘い声で囁かれる愛の言葉。
「え、付き合うって……そういうことですよね」
『うん』
「男女が交際するアレのこと……ですよね」
『そうだよ』
そして少し不安そうに、恥ずかしそうに。
『ダメ……かな』
「い、いえぜひ」
こうして俺は2人目の彼女ができた。
◯
えみある@裏アカ女子
無理
えみある@裏アカ女子
まじで無理
えみある@裏アカ女子
絶対嫌われた
えみある@裏アカ女子
怒りすぎた
えみある@裏アカ女子
なんでいつもそうなの私って
えみある@裏アカ女子
無理、許して
えみある@裏アカ女子
本当に死のうかな
えみある@裏アカ女子
私なんて無価値だよね
えみある@裏アカ女子
こんなメンヘラクソ女
えみある@裏アカ女子
……
えみある@裏アカ女子
でももっかいだけ話したい
えみある@裏アカ女子
話していいかな?
えみある@裏アカ女子
嫌われてんのに
えみある@裏アカ女子
……
えみある@裏アカ女子
話そ
えみある@裏アカ女子
話したい
えみある@裏アカ女子
てか繋がってたい
えみある@裏アカ女子
やった
えみある@裏アカ女子
付き合えた
えみある@裏アカ女子
信じられない、夢じゃないよね?
えみある@裏アカ女子
嬉しい、本当嬉しい
えみある@裏アカ女子
大好き
えみある@裏アカ女子
一生大好き!
えみある@裏アカ女子
……でもやっぱ返信ルーズなとこあるよね
えみある@裏アカ女子
まじで今日1日ずっとヘラってた、本格的に矯正しないとダメかな?
えみある@裏アカ女子
……まあいいや
えみある@裏アカ女子
いますっごい躁だし
えみある@裏アカ女子
今日は付き合った記念すべき日だもんね
えみある@裏アカ女子
私の彼氏
えみある@裏アカ女子
大好き
えみある@裏アカ女子
一生大好き
えみある@裏アカ女子
一生離さない




