別れ際
ショッピングモールを出る頃には、夕日が街をオレンジ色に染め始めていた。
買ったばかりの紙袋をぶら下げ、コンビニで買ったアイスを食べながら二人並んで歩く。
「今日も楽しかったよ愛ちゃん、服とかいままで頓着してなかったけどいざ買ってみたら興味湧いてきたなー」
「そ、よかった」
「昼飯も美味しかったね、しかも結構あそこ安かったし」
「たしかに」
「次はグルメスポットの食べ歩きとかしてもいいかもね」
「そう」
なんだ、会話がそっけない気がする。まだあのファミレスでの一件を引きずっているのだろうか。それとも服屋で胸見た件だろうか。
「どうしたの、なんか機嫌悪い?」
「いや、別にそういうわけじゃない。ただ」
「ただ?」
愛はジッと俺の顔を見つめる。その整った顔立ちに少しドギマギしてしまう。
「翔気ってさ、学校じゃあんまりこうやって話しかけてくれないよね?」
「ど、どうしたの突然」
「学校じゃ昼休みくらいしか話しかけてくれないじゃん……恋人なのに」
愛が少し不満気に口を尖らせた。
まずいな、彼女と付き合ってることは周りにバレたくないから今まで誰も見てない昼休みに話しかけていたのだが、恋人というのはそれじゃ足りないのか?
「ごめん、休み時間は友一と話してて、放課後は放課後で文実忙しくてさ。」
「ふーん」
俺は慌てて言い訳を述べるが、まだ不服そうだ。
「愛ちゃんだって友達とか多いし俺にだけ構ってる暇なんてないでしょ?」
「別に、アタシいまボッチだし」
「……え?ボッチ?」
卜返愛という人間から最も遠くに位置するワードが飛び出た気がする。
彼女はそんな俺の様子を見て呆れたような顔をした。
「なんで同じクラスで気づかないのよ」
「えいやだって……愛ちゃんって田辺たちのグループに」
「とっくに解散したわよ。アタシと田辺が喧嘩しちゃったから」
衝撃だった。
最近あすまるのこととかで頭を悩ませすぎてあまりクラスの現状とか見ていなかったのかもしれない。
だが言われれば確かにいつもクラスの中心で騒いでいた声が最近はあまり聞こえなくなった気もする。
そう気づいた途端申し訳なさが込み上げてきた。
「……ごめん」
「ちょ、なんで謝るわけ?」
愛は眉根を寄せ、こちらを見る。
田辺は確かに許せないやつだったが、俺が自分勝手な理由で彼女の居場所を無くしてしまったということは明らかだった。
俺が彼女に近づかなきゃ、グループの他の友達を失わなかったかもしれないのだ。
「田辺とケンカしたのだって俺のためじゃん、それでグループなくなっちゃってさ……」
愛は目をぱちぱちして、はあとため息を吐いた。
「なに言ってんの……アタシもあんなグループ抜けようと思ってたんだし、別にいい。噂流れてからは孤立気味だったしね。」
「そうなの?」
「あれは元々アタシ目的の男子とその男子が好きな女子のグループだったの……だから男子はキモいし、女子はアタシのこと嫌いだしで嫌気が差してたの」
意外だった。
クラスの中心の陽キャグループだったし、全然そんなイメージもなかった……いやまあ俺が友達少ないからそう言う情報が回ってきてないだけかもしれないが。
「なにアンタそんなことで謝ったの?」
「……ああ」
愛はふふ、と口を押さえて微笑んだ。
「いいよ、そんなこと気にしなくて。それに……もう代わりの居場所はあるんだし」
「え」
心臓がドキリと跳ねる。
「そんじゃ、アタシこっちだから、バイバイ!」
愛は少し恥ずかしそうに手を振って俺の帰路とは別方向へと駆けていった。
俺はその姿を見て高鳴ってしまう心臓を感じ、改めて思った。
ああ、やっぱり俺この子のこと好きなんだな。って




