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「完成してしまった。」
私は目の前の機械を見てそう言った。
「ついに完成してしまったのですね」
「あぁ、これで…俺たちは…神になったのか」
この日、人間は時間を超越する生物、つまり、神となった。
「本当に良かったのですか?散々こんな物を作りたくないとおっしゃっていましたが」
「作りたくなかったよ、今でも、こんな物を今すぐに壊してしまいたいと思っているよ」
「では何故作ったのですか」
「作るしかなかったのだ」
私は再びその機械の方を見る。カプセル型で近未来とは程遠いシンプルな筒型の機械。
「私が…私がこんな物を二度と作らない為にこれを作った。許してくれ」
苦虫を噛み潰した様な顔をして助手の方を見る。
「貴方が望むなら私はなんだって手伝います、それが例えこの身が滅びようとも」
「すまない、すまない」
一滴の涙が頬を伝う。私はこの素晴らしい世界で世界一の助手を従えてきたようだ。
「私は、本当にこんな物を作って良かったのだろうか」
「貴方の選択は間違っていないと思います」
「君だけだよ…そう言うのは」
そっと上を向いて何かを思い出す様に語り始めた
「私がこの研究を始めて20年、最初は研究を手伝ってくれる者が多くいた。しかし、研究を進めるたびに、生物としての尊厳を失った、自然の理に反するだとか言って人が離れていった。」
私は拳を握った。その拳は爪が食い込んで血がダラダラと垂れている。
「そして、気づいた時には私と君しかいなかった訳だ。こんな哀れな話はないだろう。自分自身を滅ぼす為にこんな研究をして、誰にも見られず滅びていく」
私は機械のボタンを押して扉を開ける。
「私は最後まで貴方を見届けます。最後の助手として、全てを全うします」
「これは…輪廻ではない。完全に無くなる訳ではない。この世界の記憶は無くなってしまうかも知れないが体は覚えている。心は覚えている。私たちはまた研究者として生き、また君と出会えるだろう」
「でも!」
助手の顔は涙を浮かべていた。まるで恋人との別れの様に。
「今まで、ありがとう」
「うわあああああああああああああ!!!!!」
この場から消える私に助手は泣き叫ぶ事しかできなかった。消える瞬間、私はそんな助手の顔も、叫び声も、何もかも感じとる事は出来ずに歪んでいった。まるで、世界が再構築される様に。
「おぎゃあ!おぎゃぁ!おぎゃあ!」
「無事、生まれました。元気な男の子です」
俺は子供を授かった。研究者である俺と、優秀な助手。正直こんな俺のどこにそんな魅力があるのかわからないが彼女からのアプローチがそのまま上手くいって今に至る。
「名前…何にするんだっけ?」
「貴方が前に言ってた名前でいいじゃない」
「…瑛太か」
「そうそう!それそれ!」
瑛太
水晶の様に純粋な心のまま育って欲しいと願いを込めた名前だった。直感でこの名前が良いと感じたのだ。
「君が気にいるなら子供も喜ぶだろう」
彼女が子供を持ち上げた。子供は天使の様な笑顔でにんまりと笑った。
「赤ちゃんも瑛太がいいって!」
「なら決定だな」
「ええ、そうね!」
水晶の様に純粋な心のまま育って欲しい。俺は研究をしていて人間の闇に触れる事が多かった。だからこそ、そうなって欲しくないと願ったのかも知れない。
「大きくなれよ!」
瑛太のほっぺをプニっと触った。マシュマロな様な柔らかさでずっと触っていたい。
「さてと、俺はもう少し研究をしてくるよ」
瑛太をベットに戻して、彼女にそう言う。
「今日は休んだら?瑛太も生まれた事だし」
「…そうだな」
「タイムリープについての研究。私はそんな研究必要ないと思うけどね」
「タイムリープしたらこんな幸せをもう二度と味わえなくなるかも知れないからな」
瑛太の方を見て俺はニコッと笑った
「もしも、俺がタイムリープしてたらさ。前の世界の俺はこんな生活を望んでいたのかもな」
「人間は一度きりの人生だから尊いと思うの、タイムリープしてもう一度その人生をやり直すのは本当の幸せじゃない」
「その通りだと思うよ」
「おぎゃあ!おぎゃあ!おぎゃあ!」
「あちゃー!泣いちゃったかー!」
「よちよち、ママですよー」
俺がタイムリープしてたら、この世界を望んでいたのかも知れない、そして、彼女の言ってる事も一理あると思う。だからこそ瑛太には名前の通りに育って欲しい。
「一度きりの人生…か」
タイムリープの研究をしているからこそ彼女の言葉は響いた。
「もしタイムリープしたらこの日常は二度と訪れないのか」
タイムリープをしない幸せ。一度きりの人生。
俺はそんな人生に賭けよう。
俺はこの世界で満点を取る。




