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第39話

カツロウは、泥に塗れた膝をつき、目の前の「それ」を凝視していた。


「……ケン坊。見ろこれ」


震える指先でジャガイモの葉を裏返す。そこには、赤褐色の不気味な斑点が浮かんでいた。茎を割り、土を掘り返すと、数日前まで丸々と太っていた芋が、鼻を突く悪臭と共にドロドロの黒い粘土のように溶け落ちていた。


「イモの疫病… ですね」


二人の顔は青ざめた。 ナギアにジャガイモはない。だが、サツマイモや、サトイモにも似たような伝染病があるのだ。


「おい! 早く予備の畑の奴らを引き離せ! 感染した株を全部焼け! 道具は石炭酸で洗え、風下には持っていくな!」


カツロウが周囲の農民たちに怒鳴り散らす。だが、作業に当たっていた農民は、不思議そうに首を傾げただけだった。


「じいさん。引き離すって……どこへだ?」


「決まってるだろ、別の品種を植えてる別の区画だ! ここから一番近い別の畑はどこだ!」


農民は鼻で笑い、果てしなく続く緑の地平線を指差した。


「目に見える範囲の畑はすべてこれに植え替えられた。どこへ行こうが、同じ景色だ」


視界を埋め尽くす、見事なまでに統一された緑の絨毯。 だが、疫病にとってそれは、一切の障害物がない広大な「餌場」に過ぎない。


「馬鹿野郎が!単一作物にすると完全病が広がるってあれほど注意しただろう!話を聞いてなかったのか?」


農民が震えながら言い訳をする。


「……将軍様から植えろっていうお達しが出たんだ。他の作物なんか栽培できるわけないだろ!」


カツロウは力なくその場に座り込んだ。 一つの斑点が出たということは、すでに胞子は風に乗り、この平原のすべてに行き渡っているということだ。 「救いの芋」は、瞬く間に「腐敗の苗床」へと成り果てた。


「……悪いな。クソガキ… しぐじっちまった…」


再び降り始めた雨は、泥と腐敗を混ぜ合わせ、地獄の輪郭を形作っていった。

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