表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新選組トリップ奇譚  作者: 柊 唯
第二章〜初めの改革と決意〜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/76

不器用なりの優しさ

 屯所の廊下に差し込む西陽が、長く影を引いていた。


 土方は廊下の向こうから、忙しなく働くかなたの姿を見つける。

 だが、その動きはどこかぎこちなく、顔色も冴えない。しばらく様子を見ていた土方は、ふと立ち止まり声をかける。


「おい、かなた。お前、顔色悪ぃぞ。働きすぎて倒れられてもめんどくせぇ。休める時は休め」


 かなたは手を止め、ゆっくりと土方の方を見る。


「土方さん....」


 一瞬ためらったのち、かなたは少し俯きながら答えた。


「.....実は、あれから毎晩芹沢さんの夢を見るんです」


 土方は黙って耳を傾ける。かなたは芹沢の夢のことを静かに語り始めた。


「....でも、一番怖いのは人を殺したことじゃないんです。人を殺したのに、こんなにも冷静でいる自分が怖いんです」


 かなたの声がわずかに震える。


「こんなに、普通に仕事をして、普通に話をして、笑って...私、本当に人を殺したんでしょうか......それすら、信じられない時があるんです」


 土方はかなたの傍まで歩み寄り、壁にもたれた。しばし沈黙が流れたあと、低い声で言う。


「.......あの時、お前が動かなきゃ、俺か総司がやられてた」


 土方は一息つくと、かなたの方へ体を向けた。


「だが......本当は、あの役目は俺がやるはずだった。お前が"先に動いた"ってだけだ.......それでも、悪かったとは思ってる。お前の手を、汚させちまったな」


 かなたは黙って土方の言葉を聞きながら、彼の目をじっと見つめ返す。


「冷静でいられるのは、お前がここで生きていこうとしているからだ」


「...っ!」


「夢の中の芹沢が何度出てこようと、お前が逃げずに向き合ってるなら、それでいい。怖ぇのに、ちゃんと向き合ってる。....それだけで、たいしたもんだよ」


「....はい」


 その言葉に、かなたの目が少しだけ潤む。

 土方の言葉のあたたかさが、静かに心の奥に染みていくようだった。

土方が段々とかなたのことを認めようとしている。そんな気がします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
歴史 / タイムスリップ / 新選組 / 幕末 / 恋愛 / 土方歳三 / 女主人公 / コメディ / シリアス / すれ違い / 幕府 / 和風 / 江戸時代
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ