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新選組トリップ奇譚  作者: 柊 唯
第十二章〜それぞれの道〜

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遠き日の約束

「本当に大丈夫ですかね……」


「大丈夫ですって! 土方さんは、かなたさんに似合ってるって言って欲しいはずですよ!」


 沖田に励まされながら土方の部屋の前へと着くと、かなたは深呼吸をして襖の前で正座をした。

 隣にいる沖田に目を合わせると、意を決して扉の向こうにいるであろう土方へと声をかける。


「……土方さん、いらっしゃいますか?」


 少し間があった後に、襖が開く。

 顔をあげると、そこにはいじけた顔をした土方が立っていた。


「……なんだ?」


 何を言おうか迷って思わず隣を見ると、そこには沖田の姿はなく、ただ静寂だけが残っている。


(やられた……)


 いや、どうせこんなことになるだろうとは薄々思っていたが、沖田の親切心にまんまと騙された。

 かなたがずっと黙っているので、土方は不思議に思ったのか、その場に座り込むと真剣な目で彼女の顔を見つめる。


「何かあったのか?」


 様子がおかしいからと心配をしてくれた彼に、申し訳なさを感じ、かなたはぐっと心を決めると頭を下げた。


「あの……さっきはすみませんでした!」


 身構えていた土方は、予想の斜め上をいく謝罪に毒気を抜かれたような顔になり、何度か瞬きを繰り返す。


「わざわざそれだけを言いに来たのか?」


「いや、その……土方さんの髪型が似合いすぎてて、思わず逃げてしまったというか……」


 そんな変な理由を聞いて、土方は思わずふっと息を吹き出して笑った。


「そんなことあるか?」


「そ、そんなこともあるんです! すごく似合ってたから……」


「……真面目に言われると小っ恥ずかしいな」


 そう言って頬を赤くして目を逸らす土方が新鮮で、思わずその姿をじっと見つめてしまう。


「あの、髪……触ってもいいですか?」


 かなたのその言葉に、土方は顔を赤くしながら目を見開いた。


「さ、触るって……」


 またこいつは訳のわからないことを、と考えるが、きっとかなたには悪気などないのだろう。


「……好きにしろよ」


 そう了承を得た瞬間、かなたの顔がぱぁっと明るくなった。


 手を伸ばして土方の髪に触れると、自分が広めた手入れ方法のせいか、思ったよりもさらさらとしている。

 かなたは彼の髪の触り心地が良く、ついつい無駄に手を動かしてしまっていた。


「お、おい……子供(ガキ)じゃねえんだからよ……」


「あっ、す、すみません!」


 咄嗟に手を引っ込めると、土方の顔は先程よりも一層赤くなっている。


(茹でダコみたいだ……)


 そんなことを思っていると、土方が顔を背けたままこちらへと視線を動かした。


「お前は切らねえのか?」


「え?」


「いや……女に髪を切れ、なんて酷だったな」


 男が切るのだから女も、なんて思ったが不躾だったか。

 土方が気まずそうに視線をそらすと、かなたは少し身を乗り出して顔を近づけた。


「あの! もう少し先の話ですが、女の人も髪が短いのが普通になる時代が来ると思うので、その時になったら土方さんに見せますね! あ、でもその頃にはお婆さんになってるかもしれないんですけど……」


 そう言ってから、今の言葉は求婚(プロポーズ)みたいではないかと少し焦る。

 恐る恐る顔をあげると、土方は無邪気に笑っていた。


「ああ、楽しみにしてるぜ」

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