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その後、ルシム編


「この度はお時間を頂きありがとうございます。」


「気にすんな。俺もゆっくり話してみたいと思ってたからな。」


ここはとある宿の一室。里香が話を通してくれたおかげでシュクルドの王との対談がようやく叶った。

シュクルドの王、ガレオは何回か会ったことはあるがやはりその大きな身体に圧倒的な威圧感。流石複数の種族を治める王に相応しい風格だ。


「まず、この度は数々の御無礼申し訳ございませんでした。王に代わって謝罪申し上げます。」


「気にするなって言ってやりたいとこだが、そうだな。王を諌めるのもお前の役目だろう?」


「全くもってその通りでございます。返す言葉もございません。」


今回の聖女騒動に限らず、通行税の値上げやら輸出品の制限やらロールロイゾンは出来うる限りの嫌がらせを繰り返してきたのだ、この対談が成立したのだって奇跡に近い。


(里香にも今度礼をしなくちゃな。)


ひとえに彼女のおかげだ。ガレオも彼女には何かしら思う所があるらしい。そうじゃなきゃこんな所まで来てはくれなかっただろう。


「謝罪はいい。これからどうしていくのがいいのか、それが1番大事だからな。実のある話を聞かせてくれるんだろう?」


遠回しな言い方に思わず身が縮こまる。これが王か。

つまらない話なら即刻去ると暗に告げるガレオから感じるプレッシャー。それは自分の父親にも、自分にも無いもの。


(落ち着け‥期間は短いとはいえ今俺は一国の皇太子だ。)


ここで負けるようなら王になんてなれない。

俺はガレオの瞳を真っ直ぐ見つめ返すとハッキリとした口調で返した。


「勿論でございます。ロールロイゾンを生まれ変わらせたいのでございます。‥全ての種族と共に生きられるように。」


「‥‥聞かせてくれ。」


俺は王を裏で操っているのはグリテンバーグである事。それに対抗する為に聖女を利用しようとした事。理由はわからないがシュクルドを信用してはならないと思い込んでいた事。

全て包み隠さず話した。

正直こう言った話を馬鹿正直に話すなんておかしな話で普通ならもっと綺麗な作り話を作るべきなんだろう。だがそんな小細工をしたところで目の前のこの男が納得するとは到底思えなかったし多分調べはついている。嘘を言うことへのリスクの方が圧倒的に高い。


「私は王を引き摺り下ろしたいのです。これ以上好き勝手させれば民は余計疲弊し結果グリテンバーグの思う壺でしょう。私1人では太刀打ちできず、だからといってこれ以上聖女達を利用する真似もしたくないのです。このようなお願いは虫がいいのはわかっております。ですがどうかお力を貸してはいただけないでしょうか。」


俺は下げられる限り頭を下げてガレオに懇願した。

そんな俺の様子をただ黙ってガレオは見つめている。

私はその体制のまま、言葉をつなげる。


「通行税はこの先一生頂きません。輸出品の制限もかけません。」


「それはつまり、実質的な隷属国家になるってことか?」


ガレオの言葉に俺はその通りだと返事をした。


「対等な同盟を組んでいだだけると思うほど自惚れてはおりません。ただ民がこれ以上苦しまない国にしたいのです。その為に私が傀儡となるのならそれは構いません。」


例えお飾りだろうとも構わない。それで民を守れるのなら安いものだ。これは一生かけて償っていかなくてはならないことなのだから。


「俺がお前の国に無理をしいらないとは限らないだろ。そのリスクは分かっているのか?俺がグリテンバーグと違うと何故思う?」


「‥この目で見てきたからでございます。」


この会談の前に俺は何度かシュクルドに来てこの目で見た。


「この国の人々は皆ガレオ様を慕っているのですね。」


俺の国とは大違いで活気に溢れ所かしこにガレオを象徴した赤色の溢れる国。強制されているかどうかなんてひと目見ればわかる事だ。


一度頭を上げガレオの眼を見つめる。


「正直ここまでの申し出をして大丈夫かどうか不安はありました。ですがこの目で見てそして今日話して、大丈夫だと確信いたしました。」


もう一度頭を下げる。


「どうかお願いいたします。」


「…………」


少しの沈黙の後、ガレオは口を開く。


「…お前さんの気持ちはわかった。だがな一国の主人になる男がそう簡単に自分の国の明暗を他人に任せちゃいけねぇ。」


その言葉に俺はバッと顔を上げる。


「それは‥」


目線の先のガレオは先ほどとは打って変わって険のとれた笑顔を浮かべていた。


「だが心意気は気に入った。自分の事より民を思いやれるお前さんならいい王になれるだろう」


「っ!! ありがとうございます!!」


「そうと決まれば話を詰めるぞ。」


そういうとガレオは一枚の紙を取り出した。

それを私に渡すと話を続ける。


「これは…」


「大筋の流れだ。俺は小難しいことは苦手だからな、先にまとめておいた。」


紙にはロールロイゾンとシュクルドの表向きの架空の話が箇条書きで書いてあった。内容に素早く眼を通す。まさかここまで準備してあるとは。やはり最初からこちらの事など全てお見通しという訳か。


「これならお前の望みも叶うだろう。ただ、犠牲もあるがな。」


「構いません。元より覚悟していた事です。」


その後俺とガレオは流れの細かい所を話し合い詰めていった。結果出来たストーリーがこうだ。



まず、ロールロイゾンの王が聖女を利用して無益な戦争を起こそうとした事を俺が内部告発。国連会議へと上げ、責任追及する。


当然俺の責任も問われそうになるだろうがそこは俺とシュクルドは内密に繋がっており未然に防ぐため協力していたという事にして庇ってもらう。戦争をふっかけられそうになったシュクルドがそう言っているのだから他の国からそれ以上の追求はないだろう。


今後、聖女たちを無事に返す事の出来る方法を探すという形で責務を負う形にし、固めておくとトラブルを招きかねないので意思を尊重しロールロイゾンに残るなり、神殿に行くなり、その他色々帰る方法が見つかる保証もないので個々の意見を尊重しバラバラに保護をという形に持っていく予定だ。


「里香の希望で聖女の枠に入れない予定だ。そこで元からシュクルドの住人としていたという書類を用意するつもりだ、構わないか?」


「はい、それがいいでしょう。」


どこかの国に里香を利用される事態は避けたい。グリテンバーグと対立するシュクルドにいるのが1番牽制になるだろう。


「それじゃこれで進めるが、いいんだな?」


ガレオの顔は少し複雑そうでその表情に思わず苦笑いになる。


(この人は優しいな。周りに恵まれている)

こういう人に俺の気持ちはわからないだろう。でも嫌な気持ちもしない。


「えぇ、所詮血が繋がっただけの他人ですから。」


あんな父親、切り捨てることに未練はない。




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