その後、里香編
「それで、どういう事?」
スピカに戻ってきてから私はベッドに腰掛けさっきの話を聞いていた。クロードは壁にもたれかかって腕を組みながらうーんと悩んでいる。もうロールロイゾンの問題は解決したしそこまで危なくはないと思っていたんだけどさっきのニュアンス的にまだ問題があるみたいだ。
「対外的にはもう問題は無くなったよ。でも元々なんでロールロイゾンがこんな事をしたかっていうのは覚えてる?」
考えがまとまったのか、クロードの問いに記憶を巡らせる。
「確か‥‥グリテンバーグと貿易をする為だっけ?」
「そうだよ。でもこれ元々は裏からグリテンバーグが介入してうまく唆してやらせた事なんだよ。ロールロイゾンの前王の周りに人を潜り込ませてね。だから元凶はグリテンバーグなんだよね。」
「えっ、そうなの?‥そういえばルシムも周りに乗せられてみたいな事を言ってたね‥。」
元凶はグリテンバーグだから勿論今回の顛末はグリテンバーグも知っているとみて間違いないらしい。しかし、その事をルシムが知らないとは思えない。そこまで愚かじゃないからそれなりの牽制はするだろうとの事だった。
「グリテンバーグが里香の存在まで確認しているかは分からないけど用心に越したことはないからね。‥まさかここまで拗れるとは思ってなかったから説明する必要はないと思ってたんだ、ごめんね。」
「別にいいよ、最初にそこまで説明されても頭に入らなかっただろうし。」
正直最初の時点で背後関係まで話されてもわからない。いいタイミングだと思う。
「それと、これ。」
そう言ってクロードが私に見せたのは前に私があげたお守りだった。
「これ、私があげたやつだよね?ん、ヒビが入ってる?」
「うん、ごめんね。レストと戦ってる時にヒビが入っちゃったんだ。調べてみたらこれ、魔法石だったみたい。」
「魔法石?」
「魔法石っていうのはそのまま魔法の効果を持った石って意味だよ。大概は一回使うと壊れて使えなくなる。もともとはただの石だったんだけど里香の手を介した事によって何かしらの効果がついていたみたい。これがレストの攻撃を弾いたから俺は生きてる。ありがとう。」
そういうと私の手のひらを自分の頬に寄せてニコッと笑った。
あれ、いつの間に私の横に座ったの?
まぁ、偶然とはいえそれがクロードを守る結果になったのは良かった。
「これって私が持つだけでいいならクロードにもらったお守りも魔法石になってるのかな?」
「鑑定スキルで見てみるといいよ。」
成る程。早速私はクロードにもらったお守りを首から外す。落とすといけないので長い紐に付け替えて首から頭下げているのだ。
手のひらに乗せて鑑定を行うが表示は『綺麗な石』としかでない。持っているだけでは意味がないみたい。
「んー、何が違うんだろう?」
「やっぱり愛の力とか?」
「あいって!?えぇっ?!」
冗談でもなんてこと言うのか。思わず顔に熱が集中する。
確かにクロード黒を身に付けてるから黒色好きなのかなーとか喜んでくれるといいなぁとか思っていたのは事実だけど。
思わずまじまじとお守りを見つめてしまう。
(確かに違いなんてそれくらいしかないけど)
そんなことあるんだろうか?
私はお守りを握りしめてクロードの事を考えてみる。この際内容はなんでもいいよね。
(クロードって実はトマト嫌いよね、さりげなくアレンさんの皿に入れてるのみたことある。でも認めないのよね、まぁそこも可愛いとは思うけど。でも好き嫌いは良くないわ。)
なんだか恥ずかしくてものすごくくだらない事を考えてみた。
私は握りしめていた手を開いてもう一度お守りを鑑定してみる。
「嘘‥」
鑑定結果は『魔法石:ミレイの加護を宿した石。※クロード専用』
‥なんだこれ。ミレイの加護っていうのがついてたから身代わりになってくれたって事?それは良いんだけどなぜにクロード専用‥
(クロードのこと考えてたからって事?)
それならばとクロードに何か他にいい感じに媒体になりそうなものはないか聞く。クロードは、んーと唸りながらポーチを弄ると大きなビー玉みたいなものを私にくれた。
「アレンの店からパクったやつだけどこれでいい?」
「よくはない。よくはないけどこの際しょうがないわ」
私はビー玉を握りしめて今度はアレンさんのことを思い浮かべてみる。ごめん、アレンさん。今度これ返すからね。
そして鑑定してみると‥
「うーん。」
「どうかした、里香?」
「よくわかんないけどお守りの方は上手くいったの。でもこっちはダメみたい。これ、クロード専用らしいからクロードもってて。」
私はクロードに黄色いお守りを渡した。
何故だかクロード用しか作れないらしい。みんなの分作れればよかったんだけどなぁ。
「でもこれ俺があげたやつだしなぁ。また買いに行こうか、2人で。」
「うん。」
クロードの言葉に思わず笑顔になる。
結構気に入ってた物だったからそう言ってくれて嬉しかったのだ。私が持っていても意味無いみたいだし、前みたいなことが起きないとも言い切れないからね。わかってはいるけど悲しいものは悲しい。
「それでこれはどんな効果があるの?」
「ミレイの加護を宿した石って説明に出てたよ。」
「成る程ね。それならレストの攻撃を弾けるもの頷けるかな。」
クロード曰く、レストが使う攻撃の中で異質なものがあるらしくそれはどうも防御がうまくできないらしい。
「多分、元神っていうのに関係するんだろうけどだからこそミレイの力なら防御できるんだろうね。」
「そっか。渡しておいてよかった……」
偶然だけど過去の自分に感謝した。もし渡してなかったら本当に危なかったみたいだから。
「でもね、そのせいでアイツは里香に余計興味を示したみたいだから油断しないで。アイツの目的はわからないけど多分里香も関係してるんだと思うから。」
そういうとクロードはぎゅっと私を抱きしめる。その仕草は縋り付くようで恥ずかしさより先にどうしたんだろうという気持ちの方が先に来た。
「クロード?」
「俺でも守り切れるかわからない…アイツは強いから。」
クロードにしては弱気な発言だった。いつだって自信満々で飄々としているのにたまにクロードは子供のようになる。
「その為に冒険者組合にはいったんじゃない。それにミレイの加護がレストに有効なら上手く使えるようになればきっと役に立つわ。もしかしたら私には攻撃は通用しないかもしれないし。」
だってレストは私を誘拐する時魔法とかじゃなく直接殴って気絶させたからね。今思えば少し変だ。痛かったし、ちくしょう。
「今はできる事をしよう。大丈夫」
そういうとクロードの背中にそっと腕を回した。
「ありがとう…。守るからそばにいて。」
当たり前のことを繰り返すクロードの背中を私はぽんぽんと叩いてあやしていた。




