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決意


「すみません、わざわざ来ていただいて。」


「いいえ、そんなこと言わないでください。わたしのせいでけがをしたんですから。本当にごめんなさい。」


部屋を訪ねるとアレンさんはベッドの上で横になっていた。

シャツの間から見える包帯が痛々しい。私たちが来ると無理やり起きあがろうとするから背中にクッションを入れて体を起こしてあげる。

私はアレンさんに促されてベッド脇の椅子に腰掛けた。


「ありがとうございます。あはは、カッコ悪いところをお見せしてしまいましたね。これは私のせいです、どうか気にしないでください。派手に見えるだけでそこまでひどい怪我ではありませんよ。」


アレンさんはいつもの穏やかな笑顔でそう言ってくれる。そのせいで涙腺が緩む。


「でも、私がきっかけですから。ごめんなさい。」


「泣かないでください。それに謝る必要もありません。私は私の仕事をしようとしただけなんですから、ね?」


「‥ありがとうございます。守ってくれて。」


思わず涙がこぼれてしまう。アレンさんはそっと涙を拭ってくれる。その優しい仕草に涙腺は崩壊してしまった。


「ちょっと!里香泣かせないでよ!」


「あ、えと、どうしたらいいんですか、これ?!大丈夫、大丈夫ですから泣かないでください。」


泣き出してしまった私に2人はあわあわを慌て出す。ダメだな私。私は弱すぎる。


「ごめんなさい。ちょっと‥頭冷やしてきます。」


2人にどうにかそう伝えると部屋を出た。

流石に廊下の真ん中で泣くのは恥ずかしいので少し歩くとバルコニーの様なところを見つけた。ここなら誰も来ないだろう。


私は手すりに肘をつけ風に当たって頭を冷やす。


(私が弱いから周りが傷つく。)


ソフィも危険に晒したしアレンさんも怪我をした。結局クロードが来るまで私は何も出来なかった。

この世界は元の世界より何倍も物騒なのに何も変わらずにいられるはずないのに。


「強くなりたい」


守られるだけじゃ無い、守る力が。そうじゃなきゃいつか本当に大切なものを失ってしまう。


「志しは立派だな。」


聞き覚えのある声後ろから聞こえてきた。振り返るとサイガが立っていた。眉間に皺を寄せていかにも不機嫌そうだ。


「何か御用ですか。」


思わず無愛想な態度になる。人に見られただけでも最悪なのによりによってこいつかって気持ちが前面に出ていたと思う。


「…グズグズと鬱陶しい声がしたから見にきただけだ。お前は人間なんだから弱いのは当たり前だろ。」


「確かに貴方から見たらそうでしょうけど。人間とかそういうのは関係ないでしょ。」


魔族だから、人間だから。くだらない、どっちも感情を持って今を生きてるんだからそう違いなんてないだろうに。

そう言うがサイガはそれでもと首を横に振る。


「人間は小さな怪我や病気で簡単に死ぬ。寿命も短い。だから力の強いものが守るのは当然だろう。」


「それって誰かに言われたの?」


なんだかムカムカしてきた。元々してたけど。


「俺個人の考えだ。だから私は自警団の統括も担っている。」


「あっそ。大層ご立派な志ですね。」


なんなんだ、この人は。いい加減消えてほしい。そう思って無愛想な態度を取り続けているのに全然向こうに行ってくれない。


「何を怒っている。さっきもそうだ、お前は怒っていたな。守られるのがそんなに嫌か?市民はいつも我々に感謝してくれるぞ。」


「貴方の中で人間って一種類しかいないわけ?弱くて守られるだけの存在なの?馬鹿にしてる?」


さっきから弱い弱いとうるさいな。図星だからこそムカつくのかもしれないし八つ当たりに近いものかもしれない。それでも言わずにはいられない。


「もし貴方が力がない弱い人間だったなら黙って守られるわけね。大切な人が自分を守るために傷ついていくのをみていられるのね?」


「…………」


私の言葉にサイガは言葉を失っている様だ。少しでも響けばいいけど。


「もういいかな?出来ればどっか行ってほしいんだけど。」


相手を気遣う元気はもうない。1人にしてほしい。私は聖女でもなんでもないんだから。

しかし、サイガはその場から動かない。


「…私が移動した方が早そうね。」


そろそろ戻らないと心配するだろうし。そう思って隣を通り過ぎようとした時小さな声でサイガに呼び止められた。


「なに?」


「…悪かった。考えが浅はかだったようだ。俺には…耐えられん。」


なにか思う所があったのか、サイガは頭を下げて謝罪の言葉を口にした。


「もういいよ。私が弱いのは事実だもの。八つ当たりもあったわ、こちらこそごめんなさい。」


私も謝るとサイガは気にするなと謝罪を受け入れてくれた。話せばわかる人の様でよかった。でもこれは言っておかないと。


「でもさっきクロードに言ったことはまだ怒ってるからね。」


「それについては俺も謝らん。お前にどう見えているかは知らんが俺からすればあいつが俺の同僚たちを殺したことに変わりはないからな。」


「それは…」


しかし、それに続く言葉を私は言えなかった。たとえクロードの意思ではなかったとしても死んでしまった人達がいてそれを悲しむ人達もまた、いるのだ。

私の言葉は綺麗事でしかない。


「だが、言い方が悪かったのは謝る。悪かった。」


「ううん、私こそごめんなさい。」


私はどうしたってクロードの味方になってしまう。それはずっとそばにいるからなんだろう。


(あんまり、良くないかもしれない。)


クロードの私への依存も深くなっているのが最近はよくわかる。このままじゃ私にとってもクロードにとっても良くないんじゃないか。

そんな考えが浮かんだ。


「お前、強くなりたいといっていたな。それなら俺たちの訓練に参加するか?剣は難しいだろうが身を守る術くらいなら教えてやれるだろう。」


「え、いいの?」


意外な提案に思わずびっくりする。


「誰かを守るってのは俺の信念だからな。身を守る術を教えることもまた守る事になるだろう。」


それならいいか?そう聞くサイガに私は笑顔で頷いた。



部屋に戻った後、アレンさんの怪我を治そうとしたが理由がないとこいつ休まないからという理由でクロードに却下された。アレンさんも数日寝てれば治るからこの機会にゆっくりしますとのこと。痛みだけでもとってあげたかったがそんな器用な事はできないので泣く泣くその日は城を後にした。


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