今後のこと
私達は朝からガレオのところに顔を出していた。ロールロイゾンに追われる事は無くなったので普通に来る事ができてよかった。あの石ほんとに嫌い。
「なんだか大変だったみたいだな。お疲れさん」
本当に思ってるのかよく分からないにこやかな笑顔で言われたねぎらいの言葉にあははと苦笑いを浮かべる。
「にしてもあそこの王子がね。里香を信じてないわけじゃ無いが俺は自分で見たものしか信じられないんだよ。だから今度ちょっくら会ってくるわ。」
何があったのか概要を話すとガレオはあとは任せろと言ってくれた。とりあえず一安心する。
「どうするか決まったら教えてやるからとりあえず任せてくれ。それでどうするんだ?聖女の件は解決しそうだが。」
もともとはその為に力をつけようとしていたが必要なくなってしまった。でも私の気持ちは変わらない。
「当初の予定通り冒険者組合に行ってみようと思ってるの。ここで生きていく事になるのか帰ることになるのかわからないけど今いるのはこの世界だから。少しずつ受け入れていきたい。」
「そうか、いいと思うぜ。生きてくのに力は必要だ。クロードも納得してんだろ?」
「俺は里香がいればどこでもいいよ。」
「お前の居場所は里香そのものか。あっはっはっ、変わるもんだなぁ。あぁ、そうだ。里香が召喚されたって事は内緒にしたほうがいいな。」
聖女の召喚の件はどうしても公になってしまう。そうすると里香も矢面に立たされて身動きが取りにくくなる。最悪聖女じゃ無い事がバレればもっと面倒な事になるだろう。
そう言うガレオに私は心配になってきいた。
「でもそれって可能なの?」
「こっちだってタダで協力してやる義理はないからな、そのくらいの条件は飲んでもらうさ。それに聞いた感じだとルシムが里香を売る様な真似はしないだろ。」
なぁ、クロード。とにやにやと話をふるガレオにクロードは舌打ちする。
「まぁね。敵意はなかったよ、残念だけど。」
少しでも何かしら感じてたら殺しに行ってたな、これ。
不機嫌そうなクロードに思わず苦笑いしてしまう。これを苦笑いで流してしまう私も相当だけど。
「それでアレンさんの具合はどうですか?」
ここにくる途中、アレンさんが怪我をしたことを聞いた。今はここで療養しているそうだ。
私のせいで怪我をさせてしまったので申し訳なくて出来れば顔を見て謝りたい。
「そんなにひどい怪我じゃねぇよ。アイツも引きこもってばかりだから腕が落ちるんだ、里香のせいじゃねぇ。でも、顔出してやりな、喜ぶぜ。」
私達はガレオに別れを告げアレンさんの元に向かう事にした。
アレンさんは自室にいるらしい。クロードがわかると言うのでついて行っていると中庭の様なところで訓練している兵士達を見つけた。
剣を構え素振りを繰り返している。
「わぁ!かっこいいね!」
映画でしか見た事ない光景を目の当たりにして思わず感嘆の声をあげる。
あんな重そうな鎧を着て剣を振るなんて大変だろうなぁ。
「ガチガチに装備固めてあれじゃ動けないでしょ。」
「クロードは軽装すぎると思うけど。」
そんな会話をしていると1人の兵士が近づいてきた。その顔を見てクロードは一歩私の前に出る。
「?」
「こんな所で何をしている、クロード・ルシフェル。ここはお前のくるところじゃない。」
声を掛けてきたのは大柄で赤い髪の男の人だった。よく見ると他の兵士と違って赤いラインの入った立派な鎧を着ている。
(この人、前見た人だ。)
前にお城から帰る時こちらを見ていた男の人だと気がついた。赤い髪が特徴的だったので覚えている。
「君から話しかけてくるとは思わなかったよ、サイガ」
「ふん。どのツラ下げてこの城に出入りしているのか。さっさとうせろ。」
「用が済んだらさっさと消えるから安心してよ。行くよ、里香。」
「え?あっ、うん。」
クロードが私の肩を抱いて促すので歩き出そうとすると右腕を掴まれた。
「まて。」
「え、何ですか?」
「離せよ、サイガ。」
私の腕を掴んでいるサイガさんに対してクロードは不機嫌そうに眉を顰める。何だこの状態。
「どういうつもりだ、人間を連れ回すなんて。彼女はこちらで保護するから置いていけ。」
「冗談でも笑えないんだけど。」
「お前のそばに居たら死んでしまう、人間は脆いからな。」
「俺が守るから問題ないよ。」
「お前こそ冗談は止めろ。お前に誰かが守れるはずないだろう。この同族殺しが。」
「ちょっと!」
流石に最後の言葉に我慢できずに声を荒げてしまう。そんな言い方しなくてもいいじゃない!
「心配してくれるのはありがたいけど私は全部知った上で一緒にいるの!クロードの意思じゃないのによくそんな酷いこと言えるわね!」
私は勢いよく掴まれた腕を振り払うとサイガさんを睨みつける。
睨まれたサイガさんは驚いた顔をして固まっていた。
「行くよ、クロード。」
「あ、うん。」
ズンズンと前に進む私の後をクロードが早足で追いかけてくる。
「もうっ、何あの人!」
「あれはガレオの息子だよ。」
「息子?!」
言われてみれば見た目は似ているかもしれない。でも中身が全然違う。ガレオはあんな酷いこと言わない。
「昔俺がロールロイゾンを焼け野原にした時アイツもいたんだよ。邪魔だから死なない程度にボコボコにしたけど。そのあとガレオが来て正気に戻ったんだ。」
「殺さなかったんだ?」
こんな言い方あれだけど正気じゃなかった時のクロードに慈悲なんて皆無のはずだ。なのに死なない程度にと言う表現に引っ掛かりを覚えた。
「あいつ、ハーフなんだよ。人間と魔族の。だから殺していいか分からなくて半殺しにした。」
「それじゃ奥さんが人間だって事なのね!子供もいるなんて、ガレオ独身かと思ってた。」
「まぁ、だいぶ前に死んでしまってるけどね。人間と魔族の時間は違うから。」
クロードの言葉に何も言えなくなる。たとえ私がここに残ったとしてもクロードを置いていってしまうことに変わりはないんだな。
思わず申し訳ない気持ちになる。結局クロードを苦しめることしかできないんだ。
「大丈夫だよ。」
「何が大丈夫なの。」
「死んでも離れるつもりないし。」
クロードの言葉に思わず固まる。何を言ってるのかよくわからない。
クロードは気にした様子もなくスタスタと歩いていってしまうので急いで追いかけた。




