まぁいっか
少し寝て目を覚ますとそれに気づいたクロードが机から顔を上げる。ずっと起きていたのだろうか。
「里香おはよう。体調は大丈夫?」
「うん、ありがとう。」
「寝てる間に連絡は済ませてあるから明日ガレオのところに行こう。」
いつも通りの様子にホッとする。あの調子で迫られていたら身体がもたない。
「うん、わかった。クロード寝てないの?ごめんね、全部やらせちゃって。」
「大丈夫、慣れてるから。でも、そうだな。今日は1日手を繋ごっか。そしたら元気になれそう。」
「……ダメ。」
「えーー」
気のせいだった。グイグイくるわ。
私は顔を洗うと下に降りていく。クロードも付いてきた。
下ではソフィ達が部屋の片付けをしていた。昨日帰ってきた時はあんまり気にしていなかったが大分酷いことになっていたみたいだ。
「里香、起きたのね!」
「うん。こんなにひどい事になってたんだ。手伝うよ。」
「いいの、気にしないで。それよりなにも食べてないでしょ?サンドイッチあるから食べて。」
そう言うと裏からバスケットに入ったサンドイッチを渡された。邪魔になってもあれなので外で食べる事にする。
公園のような広場があったのでそこで2人並んでサンドイッチを食べていると見知らぬ女の子二人組がこちらをこそこそ見ている事に気がついた。しかし私と目が合うと一目散に逃げていってしまった。
「?」
「あー、あれは俺の友達だった人間だね。言ったでしょ、人間のふりしてたって。」
クロードの言葉は過去形で、でも本人は特に気にした様子はない。
「なんで人間のフリしてたの?」
「魔族ってだけで偏見持つ奴がいない訳じゃないからね。情報収集するのにわざわざ魔族って事を言う利点がないよ。それに魔族のクロードは人間の間でも知ってる人は知ってるからね。」
「それって…」
昔操られていた頃、たくさんの魔族を殺したクロード。ガレオ曰く恨みは多いと言っていた。魔族と人間が共存するこの国なら確かにその出来事を聞いている人間がいても不思議ではない。
さっきの子達は知ってしまったのだろうか。だからあんな風に避けるの?今まで見てきたクロードを無視して聞いた話に引っ張られるのは仕方のないことかもしれないけど、とても悲しいことだと思った。
「大丈夫だからそんな顔しないで。俺は里香がいればいい。」
素直に嬉しいと思えない言葉に私は曖昧な笑顔しかできなくて帰ろうと声をかけ黙ってクロードの手をひいて帰った。
その夜、私のベッドに入ろうとするクロードを全力で拒否していた。
「なんでダメなの?」
「ダメなものはダメです。夜中に勝手に入ってくるのも禁止!」
「どうしても?」
「どうしても!」
「…わかったよ。」
前までは良かったが流石に自覚した後から同じベッドで寝るなんてそんなこと出来るはずがない。引き下がってくれてホッとした。
「ん?え、なに??」
しかしそんな甘く無かった。ベッドに横になろうとしたところをクロードに抱き抱えられたのだ。
そしてそのまま運ばれたのはクロードのベッドだった。
「考えたんだけど俺が里香のベッドに入るのはダメだけど俺のベッドに里香が入るのは問題ないよね。」
「いやいやいや、そういうの屁理屈って言うのよ!」
「大丈夫、なにもしないから。…お願い。」
「‥わかったよ。今日だけね。」
やっぱりお昼の出来事を気にしているのかも。そう思ったら
これ以上頑固に断る事は出来なかった。
クロードは言う通り触れるわけでもなく隣に大人しく寝転んだ。
流石に恥ずかしくてクロードに背を向ける。多分そういうのも全部筒抜けなのだ。なのでもう諦めて寝る事にする。
(大丈夫、今までも寝てたんだから。)
まぁ、気づいたら隣にいるのでいつもとは状況が違うけど。
少し寝たとはいえ疲れは取りきれていない。すぐうとうとと眠気がやってくる。眠りに落ちる直前後ろから抱きしめられた事に気が付いた。
(なにもしないって言ったのに…)
でももういいや、あったかいし。ちゃんとそばに居る。そんな気持ちを込めて回された腕にそっと手を添えた。そしてそのまま私は夢の国へと旅立った。




