勘違い
クロードに視点が移ります
やっと寝た里香を見てホッと息をつく。
(俺、すごくカッコ悪いな)
勘違いだったのか。勘違いであんなに我を忘れてしまうなんて過去の自分が見たら笑うだろうな。
レストを退けて里香の元へ急いでいる時、里香の感情が伝わってくる事に気がついた。特に恐怖を感じているわけではなさそうで安心した。
でも、あと少しって所まできた時に感情に変化を感じた。
(恥ずかしい‥‥動揺‥‥なんだこれ)
20年前、この力を手に入れてから試行錯誤してなんとなくわかる様にはなった。でも未だにどう言う感情なのか掴みにくいものもある。なんとなく色や温度、伝わってくるものと経験を合わせて判断をつけているだけなんだ。だから曖昧にしかわからない事も多い。
里香の感情の起伏が激しくなったように感じた。そして城が見えてきた時最後に感じ取った感情。それは俺も知ってる感情。
(これは……好き…?)
愛しい、好き。それに近い感情。今まで里香から感じたことのないものだった。
そして扉を蹴破り見た光景は里香と王子が寄り添う姿。
冷静でなんていられなかった。
(なんで?)
そんな気持ちが強かった。どうしてそんな風にくっついてるの?
ずっと一緒にいたのは俺なのに。君はそっちの方がいいの?
離れて、俺の里香から離れて。
でも俺の気持ちとは裏腹に里香は余計アイツの側に近づいていってしまって自分を制御出来なくなった。
(俺のなのに。俺を選んでくれないならいっそ殺してしまおうか。)
他の男の手を取るなんて絶対許さない。相手もろとも殺してしまおう。
(それとも閉じ込めてしまおうか)
嫌われたって構わない。少しずつ調教して俺がいなきゃ生きていけない様にしてしまえばいい。
なんで俺じゃないの?
そんな考えに呑まれている時里香の声が聞こえる事に気がついた。
「ずっと一緒にいてくれるって、言ったじゃない。嘘だったの?」
そうだよ、ずっと一緒にいる。なのに君は俺を、選ばない。
俺を捨てるんでしょ?結局こうやって捨てるんだ。人の気持ちは変わりやすいから。
「捨てないっていってるでしょ、何回言わせるの」
ならどうして?君はアイツの方がいいんじゃないの?わからないよ。
「ちゃんと決めるから。その時が来るまではそばに居て。」
全然わからない。その時が来たらどうなるんだろう。でもそばに居たい、それが俺の望みだから縋り付くしかない。
気がつくと力強く抱きついている里香に気がついた。こんな近くにいたのか。傷だらけでそれでも必死に俺にしがみついている。
「クロード?正気に戻ったの?」
こちらを里香が見上げている。なんだか堪らなくていろんな感情がごちゃごちゃになって気づいたらキスしていた。
(俺の里香。俺に君を壊させないで。)
「わかった、まってる」
君が待てっていうのなら待つよ。今はまだこのままでいたいから。
気持ちの安定と共に力も落ち着いていった。
「里香、ごめん。痛かったよね。」
そう心配する俺から里香からはパッと離れた。さっきの暴走状態の時は力を使える様な状態じゃ無かったからさっきの言葉が嘘かなんてわからない。
でも今の里香から恐怖や嫌悪は感じず、ただ照れているだけの様なのでそれだけでホッとした。
帰ってから里香が寝るって言った時、俺は全然眠れる気がしなかった。だってさっき里香はあぁ言っていたけど王子といた時伝わってきた感情は明らかに好きっていう気持ちだったから。でも勘違いかもしれない。聞くのが怖い。
でも、視線を感じて見てみると里香がこっちを見ていて眠れないのは一緒かと思ったらなんとなく聞く勇気がでた。
「対等に隣に立てる人が良いって言われたの。その時私はクロードの隣に立てるようになりたいって思ったの。守られてばかりで何も出来ないのは嫌だなって」
俺のことを考えていたって里香は言った。なにそれって思った。つまり彼女が好きなのは俺なの?
今目の前にいる彼女から伝わってくるのはさっきよりも明らかにはっきりした恋心で思わず赤面してしまった。
その時さっきの待っての意味を理解した。俺を選ぶか、元の世界を選ぶか、迷ってるのか。
寝ている彼女は穏やかに寝息をたてている。
確かめたい事があって腰につけたお守りを手に取った。ぱっと見はわからないがうっすらとヒビが入っている。
「昔の俺なら楽しくて仕方のないところだけど。」
彼女の事があるから楽しいとは思えない。
里香の寝顔をもう一度見て俺は机に向かった。
寝ている間に手紙を書き終えてしまう為に。




