求婚
視点が戻ります
ルシムの提案を聞いて私は意味がわからずもう一度聞き返していた。
「えっと、つまり?」
「私と結婚してください。」
ルシムはキラキラ王子様モードで私に求婚していた。普通の女子なら即ノックアウトするところだ、危ない危ない。
「嫌だよ。なんでそうなるの。」
「聖女と結婚するより神の使いと結婚した方がいいに決まってるだろ。神殿もシュクルドもグリテンバーグも、全てがこの国を無下にすることができなくなる。」
「簡単な事ならって言ったじゃない!どこが簡単なのよ。」
「別に俺の横でニコニコしてるだけで豪華三昧、働く必要なし、周りの世話はメイドがやってくれる。良いことしかないじゃないか。」
そう言われると確かに‥…いやいやいや。騙されるとこだった。
「それじゃ私元の世界に帰れないじゃない!」
「そんなに帰りたいのか?こっちの世界にいればみんながお前を崇めて敬ってくれるのに?」
(そりゃ、帰っても良いことなんてないかもしれないけど‥)
それでも今まで生きてきた世界だ、簡単には決められない。
「大丈夫だ、帰る方法が見つかる前にお前が俺に惚れれば良いだけだろう。そうしたら帰りたくなくなる。」
「その自信どこから来るの?悪いけど好みじゃない。」
凄いこと言い出したな。カッコいいとは思うけど趣味じゃないんだって。
「本当に?やってみなきゃわかんないだろ。」
ルシムは私の手を握ってジーッと見つめてくる。青い瞳がキラキラと輝いていて、思わず見つめ返してしまう。するとふわりと微笑んだ。
「うっ‥」
思わず目を逸らす。頬が赤くなっているのが自分でもわかる。いや、しょうがないじゃん。イケメンに見つめられたらみんな恥ずかしくなるでしょ?
気づけばルシムはベットに腰掛け私の頬に手を当てて覗き込む様にこちらを見ていた。その顔は思いの外真剣だ。
「勿論打算だけじゃ無い。里香ならいいって思ったんだ。盲目的に俺を好きな女じゃ意味が無い、対等に隣に立てる存在じゃないと。」
どちらかが傾倒していては意味がないとルシムは言う。
(隣に立つ…)
対等に隣に…そう思った時に思い浮かんだのはクロードだった。それだけじゃない。何をするにもクロードが一緒がいいって思っている事に気がついた。思った以上に私の中はクロードでいっぱいで驚愕する。
(そうか、もうとっくに…)
なんでこんなに守られるだけが嫌なのかやっとわかった。私はちゃんとクロードの隣で、一方的じゃなくて対等に向き合いたかったのか。
(会いたいな、早く。)
無性に顔が見たくなった。一緒にいないのは落ち着かない。こんな風に思う私にルシムを受け入れる資格なんてない。
「ありがとう。でもごめん…私は…」
その時テラスの扉が吹き飛んだ。そこには居たのは…
「何してんだよ、クソ王子!」
「クロード!」
クロードと後ろからユーリちゃんも中に入ってくる。
「あら、なんだかいい感じだったみたいよ?帰る?」
「うるせぇ。黙ってろ。」
軽いジョークの様なノリだった。なのにクロードは本気で怒っていてユーリちゃんはビクッと身をすくめる。
なんでそんなに怖い顔をしてるの?
「思った以上に早かったな。」
「いいから里香から離れろ。」
「クロード、落ち着いて?」
私が離れたらすぐにでもルシムに襲いかかりそうだ。私は思わずルシムの服を掴む。折角丸く収まりそうなのに(結婚するつもりはないけど)ここで殺されてしまうのは不味い。
しかし私の行動は火に油を注いでしまったらしい。
「里香、そいつを庇うの?」
「庇うとかそういう事じゃなくてとりあえず話を聞いて。」
「俺じゃなくて…そいつを選ぶの?」
「…クロード?どうしたの?」
なんだか様子がおかしい。入ってきた時からだけどなんだか冷静さが欠けている気がする。思わず駆け寄ろうとしたその時。
「クロード!?だめ、落ち着いて!」
不意にユーリちゃんが叫んだ。
クロードの周りを黒い霧が台風の様にぐるぐると渦巻き取り巻いていく。何が起きているの?
ユーリちゃんはクロードを止めようとするが霧に阻まれ触れることができない。
「里香!危ないよ!魔素が暴走してるの!」
「ウルリ!どう言うこと?!」
「どうやら感情に呑まれて魔力の制御ができなくなってるみたいだな。それに影響されて魔素が暴走している。このままじゃ何が起こるかわからないぞ。」
ルシムの説明に私は呆然とする。どうしてそんな事に?
「クロード!落ち着いて!」
クロードに向かって叫ぶが私の声が聞こえてないのか反応がない。私はクロードの方に向かって走り出した。
「里香!やめろ!」
後ろでルシムが叫んでいる。
(私が止めないと!)
クロードに近寄ろうとするが黒い霧が刃の様に襲いかかってくる。
「っ!痛っ!!」
私は片腕を目の前に持ってきて目を守りながら一歩ずつクロードに近づいていく。霧は容赦なく身体を傷つけていくが歩みは止めない。
(後‥少し‥‥)
「ク…ロード…」
前が見えないが伸ばした片手がクロードに触れた。
そのまま一気にクロードの元までたどり着くとクロードにぎゅっとしがみつく様に抱きしめた。




